なぜか、
アメリカの歌なのに、
「Old Black Joe(オールド。ブラック、ジョー)」を知っている日本人は多い。
あのフォスターが作った有名な歌だ。
そして、日本人は知らないが、
この歌は、
予想外に
とても深い意味を持つ。
内容は、
「ジョーという黒人の爺さんが、まさに死んでいくときの歌」
であり、
「もう自分の命は、長くはない。
でも自分は、神様に敬虔に、そして謙遜の気持ちで生きたから、
きっと天国に、行くであろう・・・ああ、天国から、声が聞こえる。
自分を呼ぶ声が聞こえる」
というものだ。
俺は、「なるほどな」と思う。
そう。
この歌は、奴隷だった黒人にとっても、主人だった白人にとっても、
絶対に必要な歌なんだ!
白人にとっては、
奴隷の黒人に恨まれるのが怖い。
あの世に行っても、
恨まれるなんて、すごく嫌だ。
また黒人だって、
奴隷として、いろいろ、つらい人生だったが、
最後は、天国に行きたいと思う。
・・・そんな両者の気持ちが合致した曲・・・
それが「Old Black Joe(オールド。ブラック、ジョー)」なんだ!
まさに、魂が求めていた曲・・・・と同時に、
かつて奴隷制度のあったアメリカ社会が求めていた曲・・・だったのだ。
フォスターの曲には、
こういうのが多い。
「主人は冷たき土の中に」も、同じだ。
「なんやかや言っても、白人の主人も、死ねば、
冷たい土の中に埋められるんだよ」・・・
そういう冷厳な真実を、黒人の目から歌ったものだ。
心のどこかでは、「ざまあみやがれ」という気持ちはあるんだろうが、
でも、表面上は「いとしの主人は、もう死んじゃったんだなあ・・・」
という哀切の内容になっている。
二つの感情が、
ひとつの曲の中に、
こめられている。
愛の歌は、
よく調べると、
別れを歌ったものが、異常に多い。
熱烈に愛し合っているときでも、
女も男も、心のどこかで、
「ああ、めんどくさい」
と思っているのかもしれない。