夏休みの宿題では、
読書感想文は、定番だ。
でも、生徒の8割は、
「めんどう」「つらい」
というのが感想だろう。
その理由は、
「しょせん、きれい事しか書けない」
と思っているからだ。
たとえば作家の中野重治は、
文豪・志賀直哉の文章を読んで、
「この人は、一生、親の財産で暮らした人。
いい身分だ」
と書いている。
太宰治も、志賀直哉の文章を、
ケチョンケチョンに、けなしている。
でも学生は、
そうは書けまい。
褒めなきゃいけない。
感動もしてないのに、
感動した・・・と書かないといけない。
ウソを書かないいけない。
「最初から、褒めるだけの文章」
は、書きにくいものなんだよな。
だろ?
もうひとつある。
それは、そもそも子供に、
大人の小説の理解は無理・・・
ということだ。
たとえば、夏目漱石の「坊ちゃん」。
子供のころは、
「痛快なユーモア小説」
と思った。
しかし、大人になってから読むと、
いろいろ考えることがある。
1. 主人公は、両親をキライまたは、縁がない・・と書いてあるが、
そういう人間が、「まっすぐな心」を持って、育つんだろうか?
2. 「父親は大嫌いだ」・・・と言いながら、「自分は、親譲りの無鉄砲」と書いてある。
これは矛盾している。
3. もし「心のまっすぐな息子」なら、父親は、
そういう息子を愛するのが普通だと思う。
「坊ちゃん」は、「まっすぐな心」じゃなくて、
「ひねくれた子供」じゃなかったんじゃないだろうか?
4. 役者のマネができ、華奢だというだけで、なぜ兄を、あれほど嫌うのか?
5. 四国・松山の人々を、田舎者という理由で、
あれほど、バカにしていいんだろうか?
(確かに、学生も、いろいろ、悪戯をしているが)
6. 坊ちゃんは、手紙も碌に書けない人間だが、
じゃあ、この一人称の小説は誰が書いたのか?
(明治の新垣隆?(笑))
7. 「うらなりくん」への義憤で、着任したばかりの学校を、
あっさり辞めるものだろうか?
8. 学校は、数学を教える「坊ちゃん」がすぐに辞めて、大変困るが、
「坊ちゃん」には、生徒のためにも、
もう少しがんばる気持ちがないものだろうか?
すごく無責任だ。
9. 「のだいこ」は、赤シャツのイエスマンというだけで、
あれほど嫌われていいものだろうか?
イエスマンがいないと、組織は成り立たないぞ。
10. せっかく、「坊ちゃん」と「きよ」が一緒に生活できるというときに、
なぜ、きよは肺炎で急死するのか?・・・なんか、不条理すぎる。
ざっと、書いてみたが、
・・・以上の感想は、
中学生や高校生の子供からは、
なかなか見えてこないものだ。
つまり、
ある程度、社会経験を積まないと、
「坊ちゃん」も読みこなせない。
そういうことが無意識的にわかっているから、
学生は、読書感想文が嫌いなんだと思う。
ちゃうかな?