万葉短歌-悠山人編

万葉短歌…万葉集全4516歌(長短)のうち、短歌をすべてJPG&TXTで紹介する。→日本初!

万葉短歌1616 朝ごとに1476

2015年01月16日 | 万葉短歌

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万葉短歌1616 朝ごとに1476

朝ごとに 我が見るやどの なでしこの
花にも君は ありこせぬかも  笠女郎

1476     万葉短歌1616 ShuD702 2015-0116-man1616

あさごとに わがみるやどの なでしこの
  はなにもきみは ありこせぬかも

笠女郎(かさの いらつめ)=03-0395歌参照。
【編者注】題詞は「笠女郎贈大伴宿祢家持歌一首」。「秋相聞」三十首(08-1606~1635)の第11首。
【訓注】朝ごとに(あさごとに=毎朝)。我が見るやど(わがみるやど=吾見屋戸)。なでしこ(瞿麦)[下記注]。
【編者注-なでしこ】「なでしこ」訓の漢字表記は、ほぼ、集前半は「石竹」、半ばは「瞿麦」(この歌が2例目)、後半は「奈弖之故」である。なおここでは、女性作者が男性を花に譬えている。


万葉短歌1617 秋萩に1477

2015年01月15日 | 万葉短歌

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万葉短歌1617 秋萩に1477

秋萩に 置きたる露の 風吹きて
落つる涙は 留めかねつも  山口女王

1477     万葉短歌1617 ShuD705 2015-0117-man1617

あきはぎに おきたるつゆの かぜふきて
  おつるなみだは とどめかねつも

山口女王(やまぐちの おほきみ)=未詳。04-0613~0617歌と、この六首だけ、いずれも家持へ贈られている。
【編者注】題詞は「山口女王贈大伴宿祢家持歌一首」。「秋相聞」三十首(08-1606~1635)の第12首。
【原文】秋芽子尓 置有露乃 風吹而 落涙者 留不勝都毛


万葉短歌1615 大の浦の1475

2015年01月15日 | 万葉短歌

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万葉短歌1615 大の浦の1475

大の浦の その長浜に 寄する波
ゆたけく君を 思ふこのころ  聖武天皇

1475     万葉短歌1615 ShuD700 2015-0115-man1615

おほのうらの そのながはまに よするなみ
  ゆたけくきみを おもふこのころ

聖武天皇(しゃうむ てんわう)=08-1539歌参照。
【編者注】題詞は「天皇賜報和(こたへ)御歌一首」。「秋相聞」三十首(08-1606~1635)の第10首。脚注読下しに「大の浦は遠江の国の海浜の名なり」。
【訓注】大の浦(おほのうら=大浦)[静岡県磐田市]。寄する波(よするなみ=縁流浪)。ゆたけく君を(ゆたけくきみを=寛公乎)。思ふこのころ(おもふこのころ=念比日)。


万葉短歌1614 九月の1474

2015年01月14日 | 万葉短歌

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万葉短歌1614 九月の1474

九月の その初雁の 使にも
思ふ心は 聞こえ来ぬかも  桜井王

1474     万葉短歌1614 ShuD700 2015-0114-man1614

ながつきの そのはつかりの つかひにも
  おもふこころは きこえこぬかも

桜井王(さくらゐの おほきみ)=「長皇子の孫。高安王(04-0625)の弟。聖武天皇のまたいとこ。史書には遠江守任官の記事は見えない。天平三年(731)正月従四位下。のちに大原真人の姓を賜る。奈良朝風流侍従の一人。歌は20-4478ともども短歌二首。」
【編者注】題詞は「遠江守桜井王奉 天皇歌一首」。「秋相聞」三十首(08-1606~1635)の第9首。「天皇」は聖武(08-1539歌)。
【訓注】九月(ながつき)。初雁(はつかり=始鴈)。思ふ心(おもふこころ=念心)。


万葉短歌1613 秋の野を1473

2015年01月13日 | 万葉短歌

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万葉短歌1613 秋の野を1473

秋の野を 朝行く鹿の 跡もなく
思ひし君に 逢へる今夜か  賀茂女王

1473     万葉短歌1613 ShuD698 2015-0113-man1613

あきののを あさゆくしかの あともなく
  おもひしきみに あへるこよひか

賀茂女王(かもの おほきみ)=04-0556歌参照。脚注以外未詳。
【編者注】題詞は「賀茂女王歌一首」。「秋相聞」三十首(08-1606~1635)の第8首。脚注読下しに、「長屋王が女(むすめ)。母を阿倍朝臣(あへの あそみ)といふ」。左注読下しに、「右の歌は、或いは<倉橋部女王が作>といふ。或いは<傘縫女王が作>といふ。」
【訓注】朝行く(あさゆく=旦徃)。思ひし君(おもひしきみ=念之君)。逢へる今夜か(あへるこよひか=相有今夜香)。


万葉短歌1612 神さぶと1472

2015年01月12日 | 万葉短歌

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万葉短歌1612 神さぶと1472

神さぶと いなにはあらず 秋草の
結びし紐を 解くは悲しも  石川賀係女郎

1472     万葉短歌1612 ShuD697 2015-0112-man1612

かむさぶと いなにはあらず あきくさの
  むすびしひもを とくはかなしも

石川賀係女郎(いしかはの かけのいらつめ)=未詳。この一首。
【編者注】題詞は「石川賀係女郎歌一首」。「秋相聞」三十首(08-1606~1635)の第7首。
【訓注】神さぶ(かむさぶ=神佐夫)。


万葉短歌1611 あしひきの1471

2015年01月11日 | 万葉短歌

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万葉短歌1611 あしひきの1471

あしひきの 山下響め 鳴く鹿の
言ともしかも 我が心夫  笠縫女王

1471     万葉短歌1611 ShuD696 2015-0111-man1611

あしひきの やましたとよめ なくしかの
  ことともしかも わがこころづま

笠縫女王(かさぬひの おほきみ)=題詞脚注以外は未詳。
【編者注】題詞は「笠縫女王歌一首」。「秋相聞」三十首(08-1606~1635)の第6首。題詞脚注読下しに、「六人部王(むとべの おほきみ)が女(むすめ)。母を田形皇女(たがたの ひめみこ)といふ」。前歌(08-1610)は旋頭歌。
【訓注】あしひきの(足日木乃)。響め(とよめ=響)。言ともし(ことともし=事乏)。我が心夫(わがこころづま=吾情都末)[心夫表記はこの1か所。「ツマは男女にかかわらず用いる。」]。


万葉短歌1609 宇陀の野の1470

2015年01月10日 | 万葉短歌

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万葉短歌1609 宇陀の野の1470

宇陀の野の 秋萩しのぎ 鳴く鹿も
妻に恋ふらく 我には増さじ  丹比真人

1470     万葉短歌1609 ShuD693 2015-0110-man1609

うだののの あきはぎしのぎ なくしかも
  つまにこふらく われにはまさじ

丹比真人(たぢひの まひと)=02-0226歌参照。「[02-0226、09-1726と]同一人らしい。<真人>は姓。」
【編者注】題詞は「丹比真人歌一首」。「秋相聞」三十首(08-1606~1635)の第4首。題詞脚注に「名闕(名は欠けたり)」。
【訓注】宇陀の野(うだのの=宇陁乃野)[奈良県宇陀市大宇陀地区(安騎野)辺]。秋萩(あきはぎ=秋芽子)。


万葉短歌1608 秋萩の1469

2015年01月09日 | 万葉短歌

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万葉短歌1608 秋萩の1469

秋萩の 上に置きたる 白露の
消かもしなまし 恋ひつつあらずは  弓削皇子

1469     万葉短歌1608 ShuD691 2015-0109-man1608

あきはぎの うへにおきたる しらつゆの
  けかもしなまし こひつつあらずは

弓削皇子(ゆげの みこ)=02-0111歌参照。
【編者注】題詞は「弓削皇子御歌一首」。「秋相聞」三十首(08-1606~1635)の第3首。「重出歌と見てはならない」。
【訓注】秋萩(あきはぎ=秋芽子)。白露(しらつゆ)。消(け)[けかも しなまし]。恋ひつつあらずは(こひつつあらずは=恋管不有者)。


万葉短歌1607 風をだに1468

2015年01月08日 | 万葉短歌

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万葉短歌1607 風をだに1468

風をだに 恋ふるは羨し 風をだに
来むとし待たば 何か嘆かむ  鏡王女

1468     万葉短歌1607 ShuD688 2015-0108-man1607

かぜをだに こふるはともし かぜをだに
  こむとしまたば なにをかなげかむ

鏡王女(かがみの おほきみ)=01-0062歌参照。重出歌。
【編者注】題詞は「鏡王女作歌一首」。「秋相聞」三十首(08-1606~1635)の第2首。
【原文】風乎谷 恋者乏 風乎谷 将来常思待者 何如将嘆


万葉短歌1606 君待つと1467

2015年01月07日 | 万葉短歌

-- 秋相聞(08-1606~1635 三十首) --

万葉短歌1606 君待つと1467
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万葉短歌1606 君待つと1467

君待つと 我が恋ひ居れば 我がやどの
簾動かし 秋の風吹く  額田王

1467     万葉短歌1606 ShuD688 2015-0107-man1606

きみまつと あがこひをれば わがやどの
  すだれうごかし あきのかぜふく

額田王(ぬかたの おほきみ)=01-0007歌参照。重出歌(下記注)。
【編者注】題詞は「額田王思近江天皇作歌一首」。「秋相聞」三十首(08-1606~1635)の第1首。
【原文】君待跡 吾恋居者 我屋戸乃 簾令動 秋之風吹
【編者注-重出歌】これと次の二歌は、僅かな用字の違いを除けば、04-0488~0489 と全く同一である。集編者の誤りとする説がある中で、依拠本は周到に企てられた処置である、とする。


万葉短歌1605 高円の1466

2015年01月06日 | 万葉短歌

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万葉短歌1605 高円の1466

高円の 野辺の秋萩 このころの
暁露に 咲きにけむかも  大伴家持

1466     万葉短歌1605 ShuD685 2015-0106-man1605

たかまとの のへのあきはぎ このころの
  あかときつゆに さきにけむかも

大伴家持(おほともの やかもち)=原文は「大伴宿祢家持」。03-0403歌参照。
【編者注】題詞は「大伴宿祢家持歌一首」。「秋雑歌」九十五首(1511~1605)の第95首。
【訓注】高円(たかまと)。野辺の秋萩(のへのあきはぎ=野辺乃秋芽子)。このころ(此日)。暁露(あかときつゆ)。咲きにけむ(さきにけむ=開兼)。

--秋雑歌(08-1511~1605 九十五首) 終--


万葉短歌1604 秋されば1465

2015年01月05日 | 万葉短歌

万葉短歌1604 秋されば1465
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万葉短歌1604 秋されば1465

秋されば 春日の山の 黄葉見る
奈良の都の 荒るらく惜しも  大原真人今城

1465     万葉短歌1604 ShuD685 2015-0105-man1604

あきされば かすがのやまの もみちみる
  ならのみやこの あるらくをしも

大原真人今城(おほはらのまひと いまき)=「もと今城王。天平十一年(739)頃、大原真人の姓を賜る。天平勝宝九年(757)五月、正六位上より従五位下。治部少輔、左少弁、上野守、兵部少輔、駿河守などを歴任。04-0519題詞参照。
【編者注】題詞は「大原真人今城傷惜(いたむ)寧楽(ならの)故郷(ふるさとを)歌一首」。「秋雑歌」九十五首(1511~1605)の第94首。
【訓注】秋されば(あきされば=秋去者)。黄葉見る(もみちみる=黄葉見流)。奈良の都(ならのみやこ=寧楽乃京師)。


万葉短歌1603 このころの1464

2015年01月04日 | 万葉短歌

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万葉短歌1603 このころの1464

このころの 朝明に聞けば あしひきの
山呼び響め さを鹿鳴くも  大伴家持

1464     万葉短歌1603 ShuD683 2015-0104-man1603

このころの あさけにきけば あしひきの
  やまよびとよめ さをしかなくも

大伴家持(おほともの やかもち)。原文では「大伴宿祢(すくね)家持」。03-0403歌参照。
【編者注】「大伴宿祢家持鹿鳴(ろくめいの)歌二首」の第2首。「秋雑歌」九十五首(1511~1605)の第93首。左注に「右二首天平十五年癸未(みづのとひつじ)八月十六日作」。
【訓注】このころの(頃者之)。朝明(あさけ=朝開)。あしひきの(足日木箟)。響め(とよめ=令響)。さを鹿(さをしか=狭尾壮鹿)。


万葉短歌1602 山彦の1463

2015年01月03日 | 万葉短歌

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万葉短歌1602 山彦の1463

山彦の 相響むまで 妻恋ひに
鹿鳴く山辺に ひとりのみして  大伴家持

1463     万葉短歌1602 ShuD683 2015-0103-man1602

やまびこの あひとよむまで つまごひに
  かなくやまへに ひとりのみして

大伴家持(おほともの やかもち)。原文では「大伴宿祢(すくね)家持」。03-0403歌参照。
【編者注】題詞は「大伴宿祢家持鹿鳴(ろくめいの)歌二首」、その第1首。「秋雑歌」九十五首(1511~1605)の第92首。
【訓注】山彦(やまびこ=山妣姑)。相響むまで(あひとよむまで=相響左右)。妻恋ひ(つまごひ=妻恋)。