2022-0316-man4299
万葉短歌4299 年月は3976
年月は 新た新たに 相見れど
我が思ふ君は 飽き足らぬかも 大伴村上
3976 万葉短歌4299 ShuJ392 2022-0316-man4299
□としつきは あらたあらたに あひみれど
あがもふきみは あきだらぬかも
○大伴村上(おほともの むらかみ)=08-1436歌注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第7首。「六年正月四日・・・歌三首」の第2首。脚注に、「古今未詳」、左注に、「右一首民部少丞(みんぶの せうじょう)大伴宿祢村上」。
【訓注】飽き足らぬ(あきだらぬ=安伎太良奴)[「<飽き足る>は満足する。アキダルと濁るのが当時の慣例」。ほかに、02-0204(長歌)飽不足香裳(あきだらぬかも)、05-0836阿岐太良奴比波(あきだらぬひは)、13-3326(長歌)飽不足可聞(あきだらぬかも)の3か所]。
【原文】19-4299 年月波 安良多々々々尓 安比美礼騰 安我毛布伎美波 安伎太良奴可母 大伴村上
2022-0315-man4298
万葉短歌4298 霜の上に3975
霜の上に 霰た走り いや増しに
我れは参ゐ来む 年の緒長く 大伴千室
3975 万葉短歌4298 ShuJ391 2022-0315-man4298
□しものうへに あられたばしり いやましに
あれはまゐこむ としのをながく
○大伴千室(おほともの ちむろ)=04-0693歌注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第6首。題詞に、「〔(天平勝宝)〕六年〔(754)〕正月四日氏族人等(うぢうがらの ひとたち)賀集(ほきつどひて)于少納言大伴宿祢家持之宅(いへに)宴飲(えんいんする)歌三首」、その第1首。脚注に、「古今未詳(古歌か新歌か明らかでない)」、左注に、「右一首左兵衛督(さひゃうゑのかみ)大伴宿祢千室」。
【訓注】霜(しも)。霰(あられ=安良礼)。我れは参ゐ来む(あれはまゐこむ=安礼波麻為許牟)[「<参う>はワ行上二段動詞。貴人の許に行く意」。<まゐこむ> は、ほかに 04-0779持将参来(もちえまゐこむ)の一例だけ]。
2022-0314-man4297
万葉短歌4297 をみなへし3974
をみなへし 秋萩しのぎ さを鹿の
露別け鳴かむ 高円の野ぞ 大伴家持
3974 万葉短歌4297 ShuJ385 2022-0314-man4297
□をみなへし あきはぎしのぎ さをしかの
つゆわけなかむ たかまとののぞ
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第5首。「天平勝宝五年・・・歌三首」の第3首。左注に、「右一首少納言大伴宿祢家持」。
【訓注】をみなへし(乎美奈敝之)[集中での出現は13回]。秋萩(あきはぎ=安伎波疑)[同78回]。さを鹿(さをしか=左乎之可)。高円(たかまと=多加麻刀)。
2022-0313-man4296
万葉短歌4296 天雲に3973
天雲に 雁ぞ鳴くなる 高円の
萩の下葉は もみちあへむかも 中臣清麻呂
3973 万葉短歌4296 ShuJ385 2022-0313-man4296
□あまくもに かりぞなくなる たかまとの
はぎのしたばは もみちあへむかも
○中臣清麻呂(なかとみの きよまろ)=「この時五十二歳で家持より十六歳の年長」「・・・天平十九年〔(747)〕五月から天平勝宝六年〔(754)〕四月まで尾張守。・・・六年七月左中弁。延暦七年(788)七月二十八日、正二位で没。年八十七」。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第4首。「天平勝宝五年・・・歌三首」の第2首。左注に、「右一首左中弁中臣清麻呂朝臣」[尾張守でないのは集録時の事情、また・・・朝臣との敬称書法は家持の清麻呂への敬意]。
【訓注】天雲(あまくも=安麻久母)。雁(かり=可里)。高円(たかまと=多加麻刀)。萩(はぎ=波疑)。あへむ(安倍牟)[「<あふ>は・・・。やっとのことで~しおおせる」]。
2022-0312-man4295
万葉短歌4295 高円の3972
高円の 尾花吹き越す 秋風に
紐解き開けな 直ならずとも 大伴池主
3972 万葉短歌4295 ShuJ385 2022-0312-man4295
□たかまとの をばなふきこす あきかぜに
ひもときあけな ただならずとも
○大伴池主(おほともの いけぬし)=08-1590歌注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第3首。題詞に「天平勝宝五年(753)八月十二日二三(ふたりみたりの)大夫等(まへつきみら)各(おのもおのも)提壷酒(こしゅをとりて)登高円野聊(いささかに)述所心(おもひを のべて)作歌三首」、その第1首。左注に、「右一首左京少進(さきゃうの せうしん)大伴宿祢池主」。
【訓注】高円(たかまと=多可麻刀)[「奈良市の東南にある高円(たかまど)山山麓の野」]。秋風(あきかぜ)。
2022-0311-man4294
万葉短歌4294 あしひきの3971
あしひきの 山に行きけむ 山人の
心も知らず 山人や誰れ 舎人親王
3971 万葉短歌4294 ShuJ374 2022-0311-man4294
□あしひきの やまにゆきけむ やまびとの
こころもしらず やまびとやたれ
○舎人親王(とねりの みこ)=「天武天皇の子で、家持十八歳の天平七年十一月十四日に他界・・・。時に年六十歳、先太上天皇より四歳年長・・・。」「草壁皇子の子である元正天皇とは叔父-姪の関係・・・。<親王>の称号は大宝令の継嗣令によってはじめて用いられた」。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第2首。題詞に「舎人親王応(こたへて) 詔奉和(こたへまつる)歌一首」、左注(大意)に、天平勝宝五年五月、藤原仲麻呂の家で家持が聴き取った歌、と。
【訓注】あしひきの(安之比奇能)。山人(やまびと=夜麻妣等〔(3)句〕、山人〔(5句)〕)。
***** 万葉集 巻20(4293~4516、二百二十四首) 始 *****
[この巻は、天平勝宝五年(753)五月から天平宝字三年(759)一月一日まで五年八か月、大伴家持三十六歳より四十二歳に至る歌を収める。]
2022-0310-man4293
万葉短歌4293 あしひきの3970
あしひきの 山行きしかば 山人の
我れに得しめし 山づとぞこれ 元正太上天皇
3970 万葉短歌4293 ShuJ374 2022-0310-man4293
□あしひきの やまゆきしかば やまびとの
われにえしめし やまづとぞこれ
○元正太上天皇(げんしゃう だいじゃうてんわう)=原文では、〔神亀元年(724)に聖武天皇に譲位しているから〕「先太上天皇」。依拠本は、この「詠作は、譲位後太上天皇時代のものと見るべきか」とする。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第1首。題詞に、「幸行(いでます)於山村之時歌二首」、その第1首。続く前文に、「先太上天皇(さきの おほきすめらみこと〔元正天皇〕)詔陪従王臣(べいじゅの わうしんに)曰夫(それ)諸王卿等(しょわうきゃうら)宜(よろしく)賦和歌而(こたふるうたを ふして)奏(まをすべしと のたまひて)即(すなはち)御口号(くちすさびて)曰(のりたまはく)」。
【訓注】あしひきの(安之比奇能)。山人(やまびと)[「表面は山村の人の意であるが、内実はそこに住む山の神人、すなわち仙人をいうのであろう」]。山づと(やまづと=夜麻都刀)[「山からの土産」]。
2022-0309-man4292
万葉短歌4292 うらうらに3969
うらうらに 照れる春日に ひばり上り
心悲しも ひとりし思へば 大伴家持
3969 万葉短歌4292 ShuJ355 2022-0309-man4292
□うらうらに てれるはるひに ひばりあがり
こころかなしも ひとりしおもへば
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第154首。題詞に、「廿五日作歌一首」。左注に、「春日遅々(しゅんじつ ちちにして)鶬鶊正啼(さうかう「〔=うぐひす、ひばり〕ただになく)悽惆之意(せいちうのい)非歌(うたにあらずしては)難撥耳(はらひかたきのみ)仍(よりて)作此歌式展締緒(もちて ていしょをのぶ)但此巻中不称作者名字(さくしゃのなを いはずして)徒(ただ)録年月所処縁起者(ねんげつしょしょのみを しるせるは)皆大伴宿祢家持裁作(つくる)歌詞也」。
【原文】19-4292 宇良々々尓 照流春日尓 比婆理安我里 情悲毛 比登里志於母倍婆 大伴家持
***** 万葉集 巻19(4139~4292、百五十四首) 終 *****
2022-0308-man4291
万葉短歌4291 我がやどの3968
我がやどの いささ群竹 吹く風の
音のかそけき この夕かも 大伴家持
3968 万葉短歌4291 ShuJ354 2022-0308-man4291
□わがやどの いささむらたけ ふくかぜの
おとのかそけき このゆふへかも
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第153首。「廿三日依興作歌二首」の第2首。
【原文】19-4291 和我屋度能 伊佐左村竹 布久風能 於等能可蘇氣伎 許能由布敝可母 大伴家持
2022-0307-man4290
万葉短歌4290 春の野に3967
春の野に 霞たなびき うら悲し
この夕影に うぐひす鳴くも 大伴家持
3967 万葉短歌4290 ShuJ354 2022-0307-man4290
□はるののに かすみたなびき うらがなし
このゆふかげに うぐひすなくも
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第152首。題詞に、「〔天平勝宝五年(753)二月〕廿三日依興作歌二首」、その第1首。
【原文】19-4290 春野尓 霞多奈毘妓 宇良悲 許能暮影尓 鸎奈久母 大伴家持
2022-0306-man4289
万葉短歌4289 青柳の3966
青柳の ほつ枝攀ぢ取り かづらくは
君がやどにし 千年寿くとぞ 大伴家持
3966 万葉短歌4289 ShuJ342 2022-0306-man4289
□あをやぎの ほつえよぢとり かづらくは
きみがやどにし ちとせほくとぞ
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第151首。題詞に、「〔天平勝宝五年(753)〕二月十九日於左大臣橘家宴見攀折柳条(よぢをれる やなぎのえだを)歌一首」。
【訓注】ほつ枝(ほつえ=保都枝)[「最上方に抜き出た枝。秀つ枝」]。
2022-0305-man4288
万葉短歌4288 川洲にも3965
川洲にも 雪は降れれし 宮の内に
千鳥鳴くらし 居む所なみ 大伴家持
3965 万葉短歌4288 ShuJ336 2022-0305-man4288
□かはすにも ゆきはふれれし みやのうちに
ちどりなくらし ゐむところなみ
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第150首。題詞に、「十二日侍於内裏(うちに さもらひて)聞千鳥喧作歌一首」。
【訓注】川洲(かはす=河渚)。雪は降れれし(ゆきはふれれし=雪波布礼々之)[「雪は降り積もっているよ、だからこそ、の意か。<降れれし>はほかにない形」]。
2022-0304-man4287
万葉短歌4287 うぐひすの3964
うぐひすの 鳴きし垣内に にほへりし
梅この雪に うつろふらむか 大伴家持
3964 万葉短歌4287 ShuJ336 2022-0304-man4287
□うぐひすの なきしかきつに にほへりし
うめこのゆきに うつろふらむか
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第149首。「十一日大雪・・・歌三首」の第3首。
【訓注】うぐひす(鸎)。垣内(かきつ=可伎都)。にほへりし(尓保敝理之)。うつろふ(宇都呂布)。
2022-0303-man4286
万葉短歌4286 御園生の3963
御園生の 竹の林に うぐひすは
しば鳴きにしを 雪は降りつつ 大伴家持
3963 万葉短歌4286 ShuJ336 2022-0303-man4286
□みそのふの たけのはやしに うぐひすは
しばなきにしを ゆきはふりつつ
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第148首。「十一日大雪・・・歌三首」の第2首。
【訓注】御園生(みそのふ=御苑布)[<みそのふ> の出現は集中5回。「ここは平城宮内の御苑」]。竹の林(たけのはやし=竹林)。うぐひす(鸎)。
2022-0302-man4285
万葉短歌4285 大宮の3962
大宮の 内にも外にも めづらしく
降れる大雪 な踏みそね惜し 大伴家持
3962 万葉短歌4285 ShuJ336 2022-0302-man4285
□おほみやの うちにもとにも めづらしく
ふれるおほゆき なふみそねをし
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。以下4288歌まで、作者名なし。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第147首。題詞に、「〔天平勝宝五年(753)正月〕十一日大雪落積(ふりつみて)尺有二寸因(よりて)述拙懐(せっくゎいを のぶる)歌三首」、その第1首。
【訓注】めづらしく(米都良之久)。降れる大雪(ふれるおほゆき=布礼留大雪)。