ミラノ・コルティナ パラリンピックまで1年 競技は 注目選手は NHK 2025年3月6日 3時19分
イタリア北部で行われるミラノ・コルティナダンペッツォパラリンピックの開幕まで3月6日で1年となります。選手たちの活躍で冬のパラスポーツの普及や認知度向上を図れるかが課題となります。
ミラノ・コルティナ大会 6競技79種目で開催
◆開催日程:2025年3月6日~15日(10日間)
◆実施競技:6競技 79種目
▽アルペンスキー▽バイアスロン▽クロスカントリースキー▽アイスホッケー▽スノーボード▽車いすカーリング。
※唯一の新種目は車いすカーリングの混合ダブルス
過去最多となる564人の選手が参加した2018年のピョンチャン大会を上回る最大で665人の選手が出場する予定です。
オリンピックと同じ「広域開催」が特徴で、競技が行われるエリアはミラノとコルティナダンペッツォ、バルディフィエメの大きく3つに分かれ、開会式はベローナで行われます。
アルペンスキー 村岡桃佳選手
日本は前回の北京大会で7つのメダルを獲得しましたが、メダリストは金メダル3つと銀メダル1つを獲得したアルペンスキー女子の村岡桃佳選手とクロスカントリースキー男子で金メダルを獲得した川除大輝選手、それに、アルペンスキー男子で銅メダル2つを獲得した森井大輝選手の3人だけでした。
クロスカントリースキー 川除大輝選手
また、北京大会では、アイスホッケーと車いすカーリングの団体競技が出場を逃しました。
3月6日時点でミラノ・コルティナ大会の代表に内定している選手はいませんが、幅広い競技の選手たちの出場や活躍で冬のパラスポーツの普及や認知度向上を図ることができるかが課題となります。
【詳しくはこちら】ミラノ・コルティナ五輪の実施競技は?
《注目の日本選手は》
村岡桃佳 3大会連続の金メダル獲得に自信
アルペンスキー女子で4つの金メダルを獲得している28歳の村岡桃佳選手は「コンディションがよい状態で滑りきれたら絶対に取れる」と冬のパラリンピックでは日本選手初となる3大会連続の金メダル獲得に自信を示しています。
北京パラリンピック(2022年)
アルペンスキー、座って滑るクラスの村岡選手はパラリンピックに3大会連続で出場し、2018年のピョンチャン大会と2022年の北京大会で4つの金メダルを含む9つのメダルを獲得している“冬の女王”です。
“二刀流” 陸上に挑戦
北京大会のあとは“二刀流”として挑戦していた陸上に専念していましたが、去年10月、3シーズンぶりにアルペンスキーに復帰しました。
当初のことを「滑るのが怖かった」と振り返りますが、陸上のトレーニングによって体幹が鍛えられたことでターンが安定し、ことし2月の世界選手権では、パラリンピックで2連覇中の大回転で金メダルを獲得。ブランクを感じさせない滑りで貫禄を示しました。
世界選手権で金メダル(2025年2月)
村岡選手はミラノ・コルティナ大会が1年後に迫ったことについて「雪上に復帰してから『もうそんなにたつ?』という感覚で、改めて時間がないというか、これからも早いんだろうなというのはすごく感じている」と心境を話しました。
そして「私がいちばん好きで得意な大回転という種目では特に誰にも負けたくない気持ちが強い。ミラノ・コルティナ大会でも大回転での3大会連続の金メダル獲得をいちばんの目標にしている。傲慢に聞こえるかもしれないが、コンディションのよい状態で滑りきれたら絶対に取れると確信している」と自信を示しました。
そのうえで「雪上に復帰してからまだ数か月で、レース感覚を取り戻すのに少し時間がかかっていると感じているので、これから課題をクリアしていかなければならない」と1年後の大会に向けて気を引き締めていました。
川除大輝 フリー種目での初メダルを
クロスカントリースキー男子の24歳、川除大輝選手はクラシカル種目で2大会連続の金メダル、フリー種目で初のメダル獲得を目指します。
クロスカントリースキー、立って滑るクラスの川除選手は生まれたときから両手足の一部の指がなく、ストックを持たずに滑ります。左右のスキー板を平行に動かして滑るクラシカル種目を得意とし、前回の北京大会では、20キロクラシカルで金メダル、ことし2月の世界選手権では来年のミラノ・コルティナ大会で実施される10キロクラシカルで金メダルを獲得しました。
来年の大会ではクラシカル種目で2大会連続の金メダル、走法に制限のないフリー種目で初のメダル獲得を目標にしていて、課題とする上りの滑りを強化しています。
また、パラリンピックに7大会連続で出場し、3つの金メダルを獲得している44歳のレジェンド、新田佳浩選手と一緒にトレーニングを重ね、経験や技術を吸収しようとしています。
川除選手は「世界選手権は接戦で勝ちきれたので自信につなげてもいいと思うが、来年の大会に向けて、ほかの選手も記録を伸ばしてくる。この結果に満足していたら置いていかれてしまうので、技術などいろいろと見直して実力を伸ばしていきたい」と1年後の大会に向けて、さらなる成長を誓っています。
新種目 車いすカーリング混合ダブルスは
ミラノ・コルティナ大会の新種目、車いすカーリングの混合ダブルスでは、60歳の中島洋治選手と49歳の小川亜希選手のペアが出場を目指します。
2人は日本が唯一、パラリンピックの車いすカーリングに出場した2010年のバンクーバー大会の男女混合4人制の日本代表です。
2人ともフルタイムで働いているため、一緒に練習できる時間は限られていますが、持ち味の正確なショットに磨きをかけてきました。
日本車いすカーリング協会は3月11日からイギリスで開かれる世界選手権の結果などで日本が出場権を獲得した場合、中島選手と小川選手がパラリンピックの代表に内定するとしています。
中島選手は「バンクーバー大会に出場したことで競技人口が増えた。今回も結果を残して競技人口を一気に増やしたいし、夢の舞台でもう一度プレーしたい」と意気込みを話しました。
小川選手は「世界選手権は厳しい戦いになると思うが、1試合ずつ強い気持ちで頑張りたい。パラリンピックは観客などの熱がすごかったので、あのような舞台にまた行きたい」と2回目の出場へ決意を語りました。
《実施6競技を詳しく》
◇アルペンスキー
アルペンスキーは、「滑降」と「スーパー大回転」の「高速系」と呼ばれる2種目と、「大回転」と「回転」の「技術系」と呼ばれる2種目、それに、高速系と技術系の種目を1回ずつ滑る「スーパー複合」の5種目が行われます。
障害の種類によって
▽腕や足に障害があり、選手によってはストックを使わなかったり、義足をつけて滑ったりする「立って滑るクラス」
▽足に障害があり、専用のいすに1本のスキー板を装着したチェアスキーを使用する「座って滑るクラス」
▽ガイドを伴って滑る「視覚障害のクラス」に分かれています。
障害の程度に関わらず、公平に競えるように、実際のタイムに障害の程度に応じて選手ごとに設定された係数をかけたタイムで競います。
◆バイアスロン
バイアスロンは、クロスカントリースキーと射撃を組み合わせた競技です。
射撃を1回外すごとに、種目によってタイムが加算されたり、「ペナルティーループ」と呼ばれる別のコースを周回したりする必要があります。
障害の種類によって
▽腕や足に障害があり、選手によってはストックを使わなかったり、義足をつけて滑ったりする「立って滑るクラス」
▽足に障害があり、座席に2本のスキー板がついたシットスキーを使用する「座って滑るクラス」
▽ガイドを伴って滑る「視覚障害のクラス」に分かれています。
障害の程度に関わらず、公平に競えるように、実際のタイムに障害の程度に応じて選手ごとに設定された係数をかけたタイムで競います。
射撃で使用する銃は
▼立って滑るクラスと座って滑るクラスは実際に弾を撃つエアライフル
▼視覚障害のクラスは実際に弾は撃たず、音で的の位置が分かるビームライフルとクラスによって違います。
◇クロスカントリースキー
クロスカントリースキーは、「雪上のマラソン」とも言われます。
個人種目は障害の種類によって
▽腕や足に障害があり、選手によってはストックを使わなかったり、義足をつけて滑ったりする「立って滑るクラス」
▽足に障害があり、座席に2本のスキー板がついたシットスキーを使用する「座って滑るクラス」
▽ガイドを伴って滑る「視覚障害のクラス」に分かれています。
障害の程度に関わらず、公平に競えるように、実際のタイムに障害の程度に応じて選手ごとに設定された係数をかけたタイムで競います。
「立って滑るクラス」と「視覚障害のクラス」には
▼左右のスキー板を平行に動かして滑る「クラシカル」と
▼走法に制限のない「フリー」があります。
リレーは性別の制限がないリレーと男女混合リレーの2種目が行われます。
◆スノーボード
スノーボードでは
▽旗が設置されたコースを滑る「バンクドスラローム」と
▽こぶやカーブ、ジャンプ台など障害物が設置されたコースを滑る「スノーボードクロス」が行われます。
<男子>
▼ひざより上の切断や両足に重いまひがあるなどの「足に重い障害があるクラス」
▼ひざより下の切断やまひがあるなどの「足に障害があるクラス」
▼「腕に障害があるクラス」の3つに分かれる。
<女子>
「足に障害のあるクラス」のみ。
◎スキー スノーボードなどの代表選考の基準は?
ミラノ・コルティナパラリンピックのアルペンスキー、バイアスロン、クロスカントリースキー、スノーボードのそれぞれの国や地域の出場枠は、国際大会の成績によって算出されるポイントの基準をことし5月時点で満たしている選手の人数などで決まります。
日本障害者スキー連盟によりますと、日本が出場枠を獲得した場合の代表選手の選考基準は現時点で未定だということです。
◇アイスホッケー
アイスホッケーは、足に障害のある選手が「スレッジ」と呼ばれるスケートの刃を2枚つけた専用のそりに乗り、ゴールキーパー以外は両手にスティックを1本ずつ持ってプレーします。
氷上でプレーするのはゴールキーパーを含めた6人で、性別の区別はなく、1ピリオド15分の3ピリオド制です。
ミラノ・コルティナ大会に出場できるのは開催国のイタリアを含めて8チームで、ことし5月に行われる世界ランキング上位8チームが出場するAプールの世界選手権の上位5チームが出場権を獲得します。
世界10位の日本は、ことし行われるBプールの世界選手権で3位以上に入ったうえで、Aプールの世界選手権の下位3チームとあわせた6チームで争う大会で2位以上となれば、ピョンチャン大会以来となる2大会ぶりの出場権を獲得できます。
◆車いすカーリング
車いすカーリングは
▽男女混合の4人でプレーする種目と
▽ミラノ・コルティナ大会の新種目で男女2人がペアを組む混合ダブルスが行われます。
選手たちは専用のスティックをストーンのハンドルにはめて投げます。オリンピックで行われるカーリングと違ってストーンを投げたあとに氷の表面をブラシで掃く「スイープ」を行わないため、投げる選手の技術が勝敗に直結します。
ミラノ・コルティナ大会に出場できるのは、開催国のイタリアを含めて
▽4人制が10チーム
▽混合ダブルスが8ペアです。
ことしと去年、おととしの3年間の世界選手権の結果で出場チームやペアが決まります。
【解説】冬のパラスポーツは競技の普及が大きな課題
ミラノ・コルティナ大会で日本選手の活躍が期待される一方、出場を目指す選手たちの顔ぶれは前回の北京大会とほとんど変わらず、冬のパラスポーツは競技の普及が大きな課題となっています。障害のある人がスキー場を訪れたり、雪の上を移動したりするのが難しいことなどが背景にあります。
こうした中、日本障害者スキー連盟が力を入れているのが体験機を使った普及活動です。アルペンスキーで足に障害のある選手が使用し、専用のいすに1本のスキー板が装着されている「チェアスキー」と、ノルディックスキーで使う「シットスキー」をスキー場に行かなくても気軽に体験してもらおうと考えました。
チェアスキーでは、テレビゲームと連動させることで、画面を通して実際に雪の上を滑っているような感覚を味わうことができます。また、シットスキーでは、ストックで機械を動かすと、こぐ強さによって模型のコース上に置かれた人形が滑る仕組みになっています。
連盟は全国各地の障害者スポーツのイベントで体験会を行っていて、体験会をきっかけにスキーを始める人もいるということです。
ことし2月に名古屋市で行われた体験会に参加した足に障害のある20代の男性は「楽しかった。何かしらスポーツを始めたいと思っていたので、機会があればスキーをやってみたい」と話していました。
日本障害者スキー連盟の辻村和見普及本部長は「楽しくゲレンデに行きたくなるような形で体験できることを心がけている。雪がないところでもこういった活動を通して、多くの人に競技を知ってもらいたい」と話していました。
一方、選手を支える側の人材を増やそうという取り組みも始まっています。視覚に障害がある選手にとって欠かせない存在が一緒に滑ってコースなどを伝えるガイドですが、現在、パラノルディックスキーの日本代表チームには3人しかいません。
北京パラリンピック代表の有安諒平選手は「競技に挑戦したい人はいるが、ガイドが足りない」と現状を話します。
このため、ガイドを増やして障害のある人の練習環境を整えようと、有安選手のガイドを務める藤田佑平さんが中心となって、ことし1月に長野県で講習会を開きました。都内の大学のスキー部に参加を呼びかけ、13人の部員が参加しました。
参加者は2人1組で、1人が視界を遮るサングラスをかけ、もう1人がガイド役に挑戦し、藤田さんや有安選手などから選手が気付きにくいカーブの起点や坂道などのコースの変化について声をかけることを学んでいました。
部員たちは「かなり楽しかったので、興味がわいた」とか「選手の見え方によって声かけの頻度や内容も違ってきて、おもしろい思った」などと話していました。
ガイドの藤田さんは「参加した人たちが『楽しい楽しい』と言ってくれたので、今後、ガイドになってくれればうれしい。障害のある人がウインタースポーツを楽しめる環境を作っていきたい」と話していました。
有安選手は「ガイドをやりたい人と選手をやりたい人がうまくマッチして選手の数も増え、日本のスキーのレベルがもっと上がればいいなと思う」と期待を寄せていました。
イタリア北部で行われるミラノ・コルティナダンペッツォパラリンピックの開幕まで3月6日で1年となります。選手たちの活躍で冬のパラスポーツの普及や認知度向上を図れるかが課題となります。
ミラノ・コルティナ大会 6競技79種目で開催
◆開催日程:2025年3月6日~15日(10日間)
◆実施競技:6競技 79種目
▽アルペンスキー▽バイアスロン▽クロスカントリースキー▽アイスホッケー▽スノーボード▽車いすカーリング。
※唯一の新種目は車いすカーリングの混合ダブルス
過去最多となる564人の選手が参加した2018年のピョンチャン大会を上回る最大で665人の選手が出場する予定です。
オリンピックと同じ「広域開催」が特徴で、競技が行われるエリアはミラノとコルティナダンペッツォ、バルディフィエメの大きく3つに分かれ、開会式はベローナで行われます。
アルペンスキー 村岡桃佳選手
日本は前回の北京大会で7つのメダルを獲得しましたが、メダリストは金メダル3つと銀メダル1つを獲得したアルペンスキー女子の村岡桃佳選手とクロスカントリースキー男子で金メダルを獲得した川除大輝選手、それに、アルペンスキー男子で銅メダル2つを獲得した森井大輝選手の3人だけでした。
クロスカントリースキー 川除大輝選手
また、北京大会では、アイスホッケーと車いすカーリングの団体競技が出場を逃しました。
3月6日時点でミラノ・コルティナ大会の代表に内定している選手はいませんが、幅広い競技の選手たちの出場や活躍で冬のパラスポーツの普及や認知度向上を図ることができるかが課題となります。
【詳しくはこちら】ミラノ・コルティナ五輪の実施競技は?
《注目の日本選手は》
村岡桃佳 3大会連続の金メダル獲得に自信
アルペンスキー女子で4つの金メダルを獲得している28歳の村岡桃佳選手は「コンディションがよい状態で滑りきれたら絶対に取れる」と冬のパラリンピックでは日本選手初となる3大会連続の金メダル獲得に自信を示しています。
北京パラリンピック(2022年)
アルペンスキー、座って滑るクラスの村岡選手はパラリンピックに3大会連続で出場し、2018年のピョンチャン大会と2022年の北京大会で4つの金メダルを含む9つのメダルを獲得している“冬の女王”です。
“二刀流” 陸上に挑戦
北京大会のあとは“二刀流”として挑戦していた陸上に専念していましたが、去年10月、3シーズンぶりにアルペンスキーに復帰しました。
当初のことを「滑るのが怖かった」と振り返りますが、陸上のトレーニングによって体幹が鍛えられたことでターンが安定し、ことし2月の世界選手権では、パラリンピックで2連覇中の大回転で金メダルを獲得。ブランクを感じさせない滑りで貫禄を示しました。
世界選手権で金メダル(2025年2月)
村岡選手はミラノ・コルティナ大会が1年後に迫ったことについて「雪上に復帰してから『もうそんなにたつ?』という感覚で、改めて時間がないというか、これからも早いんだろうなというのはすごく感じている」と心境を話しました。
そして「私がいちばん好きで得意な大回転という種目では特に誰にも負けたくない気持ちが強い。ミラノ・コルティナ大会でも大回転での3大会連続の金メダル獲得をいちばんの目標にしている。傲慢に聞こえるかもしれないが、コンディションのよい状態で滑りきれたら絶対に取れると確信している」と自信を示しました。
そのうえで「雪上に復帰してからまだ数か月で、レース感覚を取り戻すのに少し時間がかかっていると感じているので、これから課題をクリアしていかなければならない」と1年後の大会に向けて気を引き締めていました。
川除大輝 フリー種目での初メダルを
クロスカントリースキー男子の24歳、川除大輝選手はクラシカル種目で2大会連続の金メダル、フリー種目で初のメダル獲得を目指します。
クロスカントリースキー、立って滑るクラスの川除選手は生まれたときから両手足の一部の指がなく、ストックを持たずに滑ります。左右のスキー板を平行に動かして滑るクラシカル種目を得意とし、前回の北京大会では、20キロクラシカルで金メダル、ことし2月の世界選手権では来年のミラノ・コルティナ大会で実施される10キロクラシカルで金メダルを獲得しました。
来年の大会ではクラシカル種目で2大会連続の金メダル、走法に制限のないフリー種目で初のメダル獲得を目標にしていて、課題とする上りの滑りを強化しています。
また、パラリンピックに7大会連続で出場し、3つの金メダルを獲得している44歳のレジェンド、新田佳浩選手と一緒にトレーニングを重ね、経験や技術を吸収しようとしています。
川除選手は「世界選手権は接戦で勝ちきれたので自信につなげてもいいと思うが、来年の大会に向けて、ほかの選手も記録を伸ばしてくる。この結果に満足していたら置いていかれてしまうので、技術などいろいろと見直して実力を伸ばしていきたい」と1年後の大会に向けて、さらなる成長を誓っています。
新種目 車いすカーリング混合ダブルスは
ミラノ・コルティナ大会の新種目、車いすカーリングの混合ダブルスでは、60歳の中島洋治選手と49歳の小川亜希選手のペアが出場を目指します。
2人は日本が唯一、パラリンピックの車いすカーリングに出場した2010年のバンクーバー大会の男女混合4人制の日本代表です。
2人ともフルタイムで働いているため、一緒に練習できる時間は限られていますが、持ち味の正確なショットに磨きをかけてきました。
日本車いすカーリング協会は3月11日からイギリスで開かれる世界選手権の結果などで日本が出場権を獲得した場合、中島選手と小川選手がパラリンピックの代表に内定するとしています。
中島選手は「バンクーバー大会に出場したことで競技人口が増えた。今回も結果を残して競技人口を一気に増やしたいし、夢の舞台でもう一度プレーしたい」と意気込みを話しました。
小川選手は「世界選手権は厳しい戦いになると思うが、1試合ずつ強い気持ちで頑張りたい。パラリンピックは観客などの熱がすごかったので、あのような舞台にまた行きたい」と2回目の出場へ決意を語りました。
《実施6競技を詳しく》
◇アルペンスキー
アルペンスキーは、「滑降」と「スーパー大回転」の「高速系」と呼ばれる2種目と、「大回転」と「回転」の「技術系」と呼ばれる2種目、それに、高速系と技術系の種目を1回ずつ滑る「スーパー複合」の5種目が行われます。
障害の種類によって
▽腕や足に障害があり、選手によってはストックを使わなかったり、義足をつけて滑ったりする「立って滑るクラス」
▽足に障害があり、専用のいすに1本のスキー板を装着したチェアスキーを使用する「座って滑るクラス」
▽ガイドを伴って滑る「視覚障害のクラス」に分かれています。
障害の程度に関わらず、公平に競えるように、実際のタイムに障害の程度に応じて選手ごとに設定された係数をかけたタイムで競います。
◆バイアスロン
バイアスロンは、クロスカントリースキーと射撃を組み合わせた競技です。
射撃を1回外すごとに、種目によってタイムが加算されたり、「ペナルティーループ」と呼ばれる別のコースを周回したりする必要があります。
障害の種類によって
▽腕や足に障害があり、選手によってはストックを使わなかったり、義足をつけて滑ったりする「立って滑るクラス」
▽足に障害があり、座席に2本のスキー板がついたシットスキーを使用する「座って滑るクラス」
▽ガイドを伴って滑る「視覚障害のクラス」に分かれています。
障害の程度に関わらず、公平に競えるように、実際のタイムに障害の程度に応じて選手ごとに設定された係数をかけたタイムで競います。
射撃で使用する銃は
▼立って滑るクラスと座って滑るクラスは実際に弾を撃つエアライフル
▼視覚障害のクラスは実際に弾は撃たず、音で的の位置が分かるビームライフルとクラスによって違います。
◇クロスカントリースキー
クロスカントリースキーは、「雪上のマラソン」とも言われます。
個人種目は障害の種類によって
▽腕や足に障害があり、選手によってはストックを使わなかったり、義足をつけて滑ったりする「立って滑るクラス」
▽足に障害があり、座席に2本のスキー板がついたシットスキーを使用する「座って滑るクラス」
▽ガイドを伴って滑る「視覚障害のクラス」に分かれています。
障害の程度に関わらず、公平に競えるように、実際のタイムに障害の程度に応じて選手ごとに設定された係数をかけたタイムで競います。
「立って滑るクラス」と「視覚障害のクラス」には
▼左右のスキー板を平行に動かして滑る「クラシカル」と
▼走法に制限のない「フリー」があります。
リレーは性別の制限がないリレーと男女混合リレーの2種目が行われます。
◆スノーボード
スノーボードでは
▽旗が設置されたコースを滑る「バンクドスラローム」と
▽こぶやカーブ、ジャンプ台など障害物が設置されたコースを滑る「スノーボードクロス」が行われます。
<男子>
▼ひざより上の切断や両足に重いまひがあるなどの「足に重い障害があるクラス」
▼ひざより下の切断やまひがあるなどの「足に障害があるクラス」
▼「腕に障害があるクラス」の3つに分かれる。
<女子>
「足に障害のあるクラス」のみ。
◎スキー スノーボードなどの代表選考の基準は?
ミラノ・コルティナパラリンピックのアルペンスキー、バイアスロン、クロスカントリースキー、スノーボードのそれぞれの国や地域の出場枠は、国際大会の成績によって算出されるポイントの基準をことし5月時点で満たしている選手の人数などで決まります。
日本障害者スキー連盟によりますと、日本が出場枠を獲得した場合の代表選手の選考基準は現時点で未定だということです。
◇アイスホッケー
アイスホッケーは、足に障害のある選手が「スレッジ」と呼ばれるスケートの刃を2枚つけた専用のそりに乗り、ゴールキーパー以外は両手にスティックを1本ずつ持ってプレーします。
氷上でプレーするのはゴールキーパーを含めた6人で、性別の区別はなく、1ピリオド15分の3ピリオド制です。
ミラノ・コルティナ大会に出場できるのは開催国のイタリアを含めて8チームで、ことし5月に行われる世界ランキング上位8チームが出場するAプールの世界選手権の上位5チームが出場権を獲得します。
世界10位の日本は、ことし行われるBプールの世界選手権で3位以上に入ったうえで、Aプールの世界選手権の下位3チームとあわせた6チームで争う大会で2位以上となれば、ピョンチャン大会以来となる2大会ぶりの出場権を獲得できます。
◆車いすカーリング
車いすカーリングは
▽男女混合の4人でプレーする種目と
▽ミラノ・コルティナ大会の新種目で男女2人がペアを組む混合ダブルスが行われます。
選手たちは専用のスティックをストーンのハンドルにはめて投げます。オリンピックで行われるカーリングと違ってストーンを投げたあとに氷の表面をブラシで掃く「スイープ」を行わないため、投げる選手の技術が勝敗に直結します。
ミラノ・コルティナ大会に出場できるのは、開催国のイタリアを含めて
▽4人制が10チーム
▽混合ダブルスが8ペアです。
ことしと去年、おととしの3年間の世界選手権の結果で出場チームやペアが決まります。
【解説】冬のパラスポーツは競技の普及が大きな課題
ミラノ・コルティナ大会で日本選手の活躍が期待される一方、出場を目指す選手たちの顔ぶれは前回の北京大会とほとんど変わらず、冬のパラスポーツは競技の普及が大きな課題となっています。障害のある人がスキー場を訪れたり、雪の上を移動したりするのが難しいことなどが背景にあります。
こうした中、日本障害者スキー連盟が力を入れているのが体験機を使った普及活動です。アルペンスキーで足に障害のある選手が使用し、専用のいすに1本のスキー板が装着されている「チェアスキー」と、ノルディックスキーで使う「シットスキー」をスキー場に行かなくても気軽に体験してもらおうと考えました。
チェアスキーでは、テレビゲームと連動させることで、画面を通して実際に雪の上を滑っているような感覚を味わうことができます。また、シットスキーでは、ストックで機械を動かすと、こぐ強さによって模型のコース上に置かれた人形が滑る仕組みになっています。
連盟は全国各地の障害者スポーツのイベントで体験会を行っていて、体験会をきっかけにスキーを始める人もいるということです。
ことし2月に名古屋市で行われた体験会に参加した足に障害のある20代の男性は「楽しかった。何かしらスポーツを始めたいと思っていたので、機会があればスキーをやってみたい」と話していました。
日本障害者スキー連盟の辻村和見普及本部長は「楽しくゲレンデに行きたくなるような形で体験できることを心がけている。雪がないところでもこういった活動を通して、多くの人に競技を知ってもらいたい」と話していました。
一方、選手を支える側の人材を増やそうという取り組みも始まっています。視覚に障害がある選手にとって欠かせない存在が一緒に滑ってコースなどを伝えるガイドですが、現在、パラノルディックスキーの日本代表チームには3人しかいません。
北京パラリンピック代表の有安諒平選手は「競技に挑戦したい人はいるが、ガイドが足りない」と現状を話します。
このため、ガイドを増やして障害のある人の練習環境を整えようと、有安選手のガイドを務める藤田佑平さんが中心となって、ことし1月に長野県で講習会を開きました。都内の大学のスキー部に参加を呼びかけ、13人の部員が参加しました。
参加者は2人1組で、1人が視界を遮るサングラスをかけ、もう1人がガイド役に挑戦し、藤田さんや有安選手などから選手が気付きにくいカーブの起点や坂道などのコースの変化について声をかけることを学んでいました。
部員たちは「かなり楽しかったので、興味がわいた」とか「選手の見え方によって声かけの頻度や内容も違ってきて、おもしろい思った」などと話していました。
ガイドの藤田さんは「参加した人たちが『楽しい楽しい』と言ってくれたので、今後、ガイドになってくれればうれしい。障害のある人がウインタースポーツを楽しめる環境を作っていきたい」と話していました。
有安選手は「ガイドをやりたい人と選手をやりたい人がうまくマッチして選手の数も増え、日本のスキーのレベルがもっと上がればいいなと思う」と期待を寄せていました。