風俗営業法の改正案 ポイントは? NHK 2025年3月7日 16時15分
悪質ホストクラブ問題を受けて、7日に閣議決定された風俗営業法の改正案。盛り込まれた新たな規制や罰則強化についてまとめました。
Q.悪質ホストクラブ問題ってなに?
ホストクラブの女性客が高額な料金を請求されて「売掛金」などと呼ばれる未払いの飲食代の借金を背負わされたり、その返済のために売春などを強要されるケースが相次いでいる問題です。
警察庁によりますと、去年1年間に全国の警察に寄せられたホストクラブに関する相談は2776件に上っています。
警察はホストなどの摘発を強化していますが、現在の法律では根本的に解決できないとして、政府は法律の改正を目指すことになりました。
Q.今回の改正案ではどんな行為が禁止される?
今回の改正案では、ホストクラブを含む接待飲食業を営む人がしてはいけないこととして、次の行為が追加されます。
<料金の虚偽説明>
1つ目は、料金について虚偽、もしくは誤認させるような説明をすることです。「初回3000円です」などと説明しておきながら、実際には高額な請求をする行為があてはまります。
<恋愛感情につけ込んだ飲食の要求>
2つ目は、客の恋愛感情につけ込んで飲食をさせる、いわゆる「色恋営業」です。具体的には「シャンパンタワーを入れてくれないと、もう会えなくなる」などと、店でお金を使ってくれないと関係が破綻してしまうと告げたり「売り上げトップにならないと降格になってしまうので、ボトルを入れてほしい」などとホストの不利益を回避するには必要不可欠だと告げたりして、客を困惑させ、飲食などをさせる行為が禁止されます。
<注文していない飲食物の提供>
3つ目は、客が注文する前に勝手に飲食物などを提供し、料金を請求することです。例えば「君のためにシャンパンタワーを作った」などと注文していないものを勝手に提供し、「頼んでいない」と断ろうとしても「もう作っちゃった」と困惑させ、飲食などをさせることが禁止されます。
Q.違反するとどうなるの?
3つの行為に違反した場合は「指示処分」や「営業停止処分」などの行政処分の対象となります。
例えば、ホストどうしの苛烈な売り上げ争いが色恋営業の原因になっていると判断された場合には、売り上げ争いをやめるよう、都道府県の公安委員会が是正を指示することなども想定されるということです。
これに従わない場合には、営業許可の取り消しや6か月以内の営業停止処分となります。
営業許可が取り消されたあとや営業停止処分の期間中に営業した場合、個人には5年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金が科されます。
Q.「色恋営業の禁止」って線引きが難しくない?
今回の改正案では、客がホストに対して恋愛感情や好意を持っていて、ホスト側も客に同じ感情を持っていると誤って信じ込ませたうえで、その感情につけ込んだ場合を想定しています。
そのため「真剣に交際している」などと主張されるケースが出てくることも予想されます。
これについて警察庁の担当者は「店のマニュアルのほか、別の女性客にも同じようなことを言っていることが確認できれば、営業トークかどうか判断できる」としています。
Q.ホストクラブだけが対象?
規制の対象は接待を伴う飲食営業を行う人で、ホストクラブだけでなく、キャバクラやスナックなども含まれます。
例えば、キャバクラで“ツケ払い”をした男性客に対して「特殊詐欺でお金をつくってきて」などと違法行為を持ちかけるのも対象となります。
Q.「売掛金」の問題はどのように規制される?
「売掛金」や「ツケ払い」など、借金をして飲食すること自体は規制されません。
一方で、こうした未払いの飲食代を支払わせる目的で、次の2つの行為をすることが禁止されます。
1つは、「支払わないなら親に伝えて返済させる」などと客を脅して困惑させる行為。
もう1つは、怖がらせたり、誘惑したりして、国内外での売春、性風俗店で働くこと、アダルトビデオに出演すること、法令に違反することを要求する行為です。
これらの行為に違反した場合、6か月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金が科されます。
Q.ホストクラブでの借金を背負った女性を性風俗店に紹介するスカウトグループが摘発されるケースが相次いでいるのはなぜ?
全国でスカウトグループが台頭している背景として指摘されているのが、性風俗店が女性を紹介してもらった見返りにスカウトやホストに対して報酬を支払う「スカウトバック」です。
警視庁によりますと、スカウトグループ「アクセス」は全国およそ350の性風俗店と契約し、去年までの5年間におよそ70億円を受け取っていたとみられています。
捜査関係者は「地方の性風俗店の多くは自力で女性を集めることができないため、スカウトに頼らざるをえない構造になっている」としています。
今回の改正案では、性風俗店側が報酬を支払う「スカウトバック」を禁止し、違反した場合は6か月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金が科されます。
Q.ホストクラブを経営する法人への規制はどうなる?
摘発されたホストクラブが看板を掛け替えて新たな店舗で営業できないよう、違反した場合の罰則や風俗営業の許可基準についても、規制が強化されます。
警察庁によりますと、ホストクラブは全国におよそ1000店舗あるとされ、系列店なども多く存在します。
現在の風俗営業法では、ホストクラブが営業許可の取り消し処分を受けた場合、5年間は営業を認められませんが、行政処分が出る前の一定期間に自主的に許可証を返納した場合はこの規定にあてはまらず、新たに別の店の営業許可を申請することができます。
同じノウハウやマニュアルが共有されている系列店も処分の対象とならず、いたちごっこの状態が続いていました。
このため、こうした「処分逃れ」をした場合には新規出店を認めないほか、店が営業許可の取り消し処分を受けた場合、系列店など密接に関係する店も営業を認められなくなります。
また、現在、罰金の最高額は200万円ですが、ホストクラブの売り上げに対し金額が低すぎて抑止効果がないと指摘されたことを踏まえ、大幅に引き上げることになりました。
無許可営業をした場合に法人に科される罰金は「3億円以下」に引き上げられ、抑止効果を高めるねらいがあります。
Q.新たな規制や罰則強化はいつから?
政府はいまの通常国会での成立を目指しています。
成立した場合、
▽「色恋営業の禁止」など、してはいけない行為の追加やスカウトバックの規制、無許可営業に対する罰則の強化については、公布から1か月後に、
▽系列店などへの営業許可取り消しについては、公布から6か月後に施行となる見込みです。
悪質ホストクラブ問題を受けて、7日に閣議決定された風俗営業法の改正案。盛り込まれた新たな規制や罰則強化についてまとめました。
Q.悪質ホストクラブ問題ってなに?
ホストクラブの女性客が高額な料金を請求されて「売掛金」などと呼ばれる未払いの飲食代の借金を背負わされたり、その返済のために売春などを強要されるケースが相次いでいる問題です。
警察庁によりますと、去年1年間に全国の警察に寄せられたホストクラブに関する相談は2776件に上っています。
警察はホストなどの摘発を強化していますが、現在の法律では根本的に解決できないとして、政府は法律の改正を目指すことになりました。
Q.今回の改正案ではどんな行為が禁止される?
今回の改正案では、ホストクラブを含む接待飲食業を営む人がしてはいけないこととして、次の行為が追加されます。
<料金の虚偽説明>
1つ目は、料金について虚偽、もしくは誤認させるような説明をすることです。「初回3000円です」などと説明しておきながら、実際には高額な請求をする行為があてはまります。
<恋愛感情につけ込んだ飲食の要求>
2つ目は、客の恋愛感情につけ込んで飲食をさせる、いわゆる「色恋営業」です。具体的には「シャンパンタワーを入れてくれないと、もう会えなくなる」などと、店でお金を使ってくれないと関係が破綻してしまうと告げたり「売り上げトップにならないと降格になってしまうので、ボトルを入れてほしい」などとホストの不利益を回避するには必要不可欠だと告げたりして、客を困惑させ、飲食などをさせる行為が禁止されます。
<注文していない飲食物の提供>
3つ目は、客が注文する前に勝手に飲食物などを提供し、料金を請求することです。例えば「君のためにシャンパンタワーを作った」などと注文していないものを勝手に提供し、「頼んでいない」と断ろうとしても「もう作っちゃった」と困惑させ、飲食などをさせることが禁止されます。
Q.違反するとどうなるの?
3つの行為に違反した場合は「指示処分」や「営業停止処分」などの行政処分の対象となります。
例えば、ホストどうしの苛烈な売り上げ争いが色恋営業の原因になっていると判断された場合には、売り上げ争いをやめるよう、都道府県の公安委員会が是正を指示することなども想定されるということです。
これに従わない場合には、営業許可の取り消しや6か月以内の営業停止処分となります。
営業許可が取り消されたあとや営業停止処分の期間中に営業した場合、個人には5年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金が科されます。
Q.「色恋営業の禁止」って線引きが難しくない?
今回の改正案では、客がホストに対して恋愛感情や好意を持っていて、ホスト側も客に同じ感情を持っていると誤って信じ込ませたうえで、その感情につけ込んだ場合を想定しています。
そのため「真剣に交際している」などと主張されるケースが出てくることも予想されます。
これについて警察庁の担当者は「店のマニュアルのほか、別の女性客にも同じようなことを言っていることが確認できれば、営業トークかどうか判断できる」としています。
Q.ホストクラブだけが対象?
規制の対象は接待を伴う飲食営業を行う人で、ホストクラブだけでなく、キャバクラやスナックなども含まれます。
例えば、キャバクラで“ツケ払い”をした男性客に対して「特殊詐欺でお金をつくってきて」などと違法行為を持ちかけるのも対象となります。
Q.「売掛金」の問題はどのように規制される?
「売掛金」や「ツケ払い」など、借金をして飲食すること自体は規制されません。
一方で、こうした未払いの飲食代を支払わせる目的で、次の2つの行為をすることが禁止されます。
1つは、「支払わないなら親に伝えて返済させる」などと客を脅して困惑させる行為。
もう1つは、怖がらせたり、誘惑したりして、国内外での売春、性風俗店で働くこと、アダルトビデオに出演すること、法令に違反することを要求する行為です。
これらの行為に違反した場合、6か月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金が科されます。
Q.ホストクラブでの借金を背負った女性を性風俗店に紹介するスカウトグループが摘発されるケースが相次いでいるのはなぜ?
全国でスカウトグループが台頭している背景として指摘されているのが、性風俗店が女性を紹介してもらった見返りにスカウトやホストに対して報酬を支払う「スカウトバック」です。
警視庁によりますと、スカウトグループ「アクセス」は全国およそ350の性風俗店と契約し、去年までの5年間におよそ70億円を受け取っていたとみられています。
捜査関係者は「地方の性風俗店の多くは自力で女性を集めることができないため、スカウトに頼らざるをえない構造になっている」としています。
今回の改正案では、性風俗店側が報酬を支払う「スカウトバック」を禁止し、違反した場合は6か月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金が科されます。
Q.ホストクラブを経営する法人への規制はどうなる?
摘発されたホストクラブが看板を掛け替えて新たな店舗で営業できないよう、違反した場合の罰則や風俗営業の許可基準についても、規制が強化されます。
警察庁によりますと、ホストクラブは全国におよそ1000店舗あるとされ、系列店なども多く存在します。
現在の風俗営業法では、ホストクラブが営業許可の取り消し処分を受けた場合、5年間は営業を認められませんが、行政処分が出る前の一定期間に自主的に許可証を返納した場合はこの規定にあてはまらず、新たに別の店の営業許可を申請することができます。
同じノウハウやマニュアルが共有されている系列店も処分の対象とならず、いたちごっこの状態が続いていました。
このため、こうした「処分逃れ」をした場合には新規出店を認めないほか、店が営業許可の取り消し処分を受けた場合、系列店など密接に関係する店も営業を認められなくなります。
また、現在、罰金の最高額は200万円ですが、ホストクラブの売り上げに対し金額が低すぎて抑止効果がないと指摘されたことを踏まえ、大幅に引き上げることになりました。
無許可営業をした場合に法人に科される罰金は「3億円以下」に引き上げられ、抑止効果を高めるねらいがあります。
Q.新たな規制や罰則強化はいつから?
政府はいまの通常国会での成立を目指しています。
成立した場合、
▽「色恋営業の禁止」など、してはいけない行為の追加やスカウトバックの規制、無許可営業に対する罰則の強化については、公布から1か月後に、
▽系列店などへの営業許可取り消しについては、公布から6か月後に施行となる見込みです。