未成年者の選挙運動禁止は違憲 高校生4人が東京地裁に提訴 NHK 2025年2月28日 18時43分
18歳未満の未成年者が選挙の時に特定の候補を応援するなどの選挙運動が禁止されているのは、表現の自由を保障する憲法に違反するとして、高校生4人が未成年者の選挙運動を認めるよう求める訴えを東京地方裁判所に起こしました。
訴えを起こしたのは高校生4人で、このうち3人と弁護団が28日、都内で会見を開きました。
4人はいずれも過去の選挙で、SNSで特定の候補を応援しようとしたり、陣営のボランティアに参加しようとしたりしたものの、法律の規定で断念した経験があるということです。
公職選挙法で18歳未満の未成年者は選挙運動が禁止され、違反した場合は刑事罰が科されるなどとする規定があり、4人はこの規定が表現の自由などを保障する憲法に違反するとして、未成年者の選挙運動を認めるよう求めています。
原告の1人で、愛知県の高校3年生の宮田香乃さんは「選挙で選ばれるのは私たちの代表で、選挙の結果の影響は私たちも受ける。法律が18歳未満の人の声を排除するものであってはいけない」と話していました。
弁護団の戸田善恭弁護士は「表現の自由は未成年者にも当然、保障されている。権利を与えられているのではなく、権利を持っている主体だと訴えていきたい」と話していました。
一方、公職選挙法を所管する総務省は「訴状が届いていないのでコメントは差し控える」としています。
高校2年生 竹島一心さん「若者の意見 聞けるような社会に」
裁判を起こした関西地方に住む高校2年生の竹島一心さん(17)は去年、地元で行われた選挙で、特定の候補を応援するブログを書き投稿しようとしましたが、周りの大人に選挙運動が禁止されていると伝えられて発信をやめたということです。
竹島さんは、中学生の時に校則の見直しに取り組み、生徒や保護者にアンケートを取ったり、行政や教育委員会に報告したりした経験があります。
竹島さんは「政治には全く興味がありませんでしたが、この活動で意外と若い世代の声を聞いてくれる人もいることに気づけたことは大きかったです」と話しています。
このときの経験もあり、去年、ある選挙で若者の政治参加を公約に掲げた候補がいたため応援したいと考えましたが、ネットへの投稿もできませんでした。
竹島さんは「応援すらできないというのはまるで『この町を作る一員ではない』と言われているような感覚がありました。街頭演説を見に行きましたが、自分はSNSでも町に出ても声を上げることができず悔しかった」と、理不尽さを感じたと言います。
ラッパーとしても活動している竹島さんは、自分は何もできないのに有権者が投票にすら行かないことにも怒りを感じ、法律や制度の理不尽さをラップの歌詞に込め発信しています。
竹島さんは「未成年者も1人の人間であって、成人と比べても考える力はあると思っています。『未熟だから』という言葉で片付けず、若者の意見を聞けるような社会になってほしい」と話しています。
なぜ未成年者の選挙運動が禁止なのか
若者の政治参加を促そうと、2015年に公職選挙法が改正された際に選挙権の年齢が引き下げられ、18歳以上が投票できるようになりました。
一方で、なぜ、18歳未満の未成年者について、選挙運動を禁止しているのでしょうか。
公職選挙法の規定
公職選挙法の選挙運動に関する規定では18歳未満の人について「選挙運動をすることができない」と定め、また、大人が18歳未満の人に選挙運動をさせることも禁止しています。
公職選挙法の解説書では、この規定について「心身が未成熟な人を保護するために設けられた」としています。
さらに禁止されている行為として、具体的に候補者の名前の連呼、街頭演説、個人演説会での演説などを挙げています。
この規定に違反して選挙運動を行った場合「1年以下の禁錮または30万円以下の罰金」が科せられるほか、最長で5年間、公民権も停止されると、罰則が定められています。
また、公職選挙法に詳しい日本大学法学部の岩崎正洋教授は「偏った政治思想など、政治的な意味合いで悪い影響や考え方を持つことを防ぐという目的が背景にあると思われる」としています。
若者の政治参加の促進
一方で、2015年の法改正で選挙権年齢が18歳以上に引き下げられたのは若者の政治参加を促すことが大きなねらいでした。
これに伴い、学校現場では新たに有権者となる高校生の政治や選挙への意識を高める「主権者教育」が行われ、政治の仕組みなど必要な知識を学ぶ機会が増えています。
文部科学省の2022年度の調査によりますと高校3年生の94.9%が高校生の間に主権者教育を受けたということです。
18歳になるまでは政治について学ぶものの、選挙や選挙運動には参加できない状況になっています。
岩崎教授は「国会での議論や選挙戦での争点になることはほとんどなかったのが実態だ。最近になって被選挙年齢の引き下げとともに議論されはじめたが、正面からクローズアップされてこない論点だった」と話しています。
広がるSNS選挙
2013年にインターネットを使った選挙運動が解禁されたことやSNSの普及にともなって、近年の選挙では支援者が投票を呼びかけることが容易になっています。
去年の東京都知事選挙や兵庫県知事選挙などでは、SNSの活用が広がり、結果にも影響を与えたとの指摘がありました。
今後もSNSを活用した選挙運動が十分予想され、岩崎教授は「中学生や高校生もSNSを使っていていて特に活動をしようと思わなくても政治的な内容に言及をすることは当然あり、規制するのは困難だ。若者たちの間から『もっと参加したい』と求めてきた今、法律の見直しなどの議論をスタートさせていく時期に来ているのではないか」と話しています。
18歳未満の未成年者が選挙の時に特定の候補を応援するなどの選挙運動が禁止されているのは、表現の自由を保障する憲法に違反するとして、高校生4人が未成年者の選挙運動を認めるよう求める訴えを東京地方裁判所に起こしました。
訴えを起こしたのは高校生4人で、このうち3人と弁護団が28日、都内で会見を開きました。
4人はいずれも過去の選挙で、SNSで特定の候補を応援しようとしたり、陣営のボランティアに参加しようとしたりしたものの、法律の規定で断念した経験があるということです。
公職選挙法で18歳未満の未成年者は選挙運動が禁止され、違反した場合は刑事罰が科されるなどとする規定があり、4人はこの規定が表現の自由などを保障する憲法に違反するとして、未成年者の選挙運動を認めるよう求めています。
原告の1人で、愛知県の高校3年生の宮田香乃さんは「選挙で選ばれるのは私たちの代表で、選挙の結果の影響は私たちも受ける。法律が18歳未満の人の声を排除するものであってはいけない」と話していました。
弁護団の戸田善恭弁護士は「表現の自由は未成年者にも当然、保障されている。権利を与えられているのではなく、権利を持っている主体だと訴えていきたい」と話していました。
一方、公職選挙法を所管する総務省は「訴状が届いていないのでコメントは差し控える」としています。
高校2年生 竹島一心さん「若者の意見 聞けるような社会に」
裁判を起こした関西地方に住む高校2年生の竹島一心さん(17)は去年、地元で行われた選挙で、特定の候補を応援するブログを書き投稿しようとしましたが、周りの大人に選挙運動が禁止されていると伝えられて発信をやめたということです。
竹島さんは、中学生の時に校則の見直しに取り組み、生徒や保護者にアンケートを取ったり、行政や教育委員会に報告したりした経験があります。
竹島さんは「政治には全く興味がありませんでしたが、この活動で意外と若い世代の声を聞いてくれる人もいることに気づけたことは大きかったです」と話しています。
このときの経験もあり、去年、ある選挙で若者の政治参加を公約に掲げた候補がいたため応援したいと考えましたが、ネットへの投稿もできませんでした。
竹島さんは「応援すらできないというのはまるで『この町を作る一員ではない』と言われているような感覚がありました。街頭演説を見に行きましたが、自分はSNSでも町に出ても声を上げることができず悔しかった」と、理不尽さを感じたと言います。
ラッパーとしても活動している竹島さんは、自分は何もできないのに有権者が投票にすら行かないことにも怒りを感じ、法律や制度の理不尽さをラップの歌詞に込め発信しています。
竹島さんは「未成年者も1人の人間であって、成人と比べても考える力はあると思っています。『未熟だから』という言葉で片付けず、若者の意見を聞けるような社会になってほしい」と話しています。
なぜ未成年者の選挙運動が禁止なのか
若者の政治参加を促そうと、2015年に公職選挙法が改正された際に選挙権の年齢が引き下げられ、18歳以上が投票できるようになりました。
一方で、なぜ、18歳未満の未成年者について、選挙運動を禁止しているのでしょうか。
公職選挙法の規定
公職選挙法の選挙運動に関する規定では18歳未満の人について「選挙運動をすることができない」と定め、また、大人が18歳未満の人に選挙運動をさせることも禁止しています。
公職選挙法の解説書では、この規定について「心身が未成熟な人を保護するために設けられた」としています。
さらに禁止されている行為として、具体的に候補者の名前の連呼、街頭演説、個人演説会での演説などを挙げています。
この規定に違反して選挙運動を行った場合「1年以下の禁錮または30万円以下の罰金」が科せられるほか、最長で5年間、公民権も停止されると、罰則が定められています。
また、公職選挙法に詳しい日本大学法学部の岩崎正洋教授は「偏った政治思想など、政治的な意味合いで悪い影響や考え方を持つことを防ぐという目的が背景にあると思われる」としています。
若者の政治参加の促進
一方で、2015年の法改正で選挙権年齢が18歳以上に引き下げられたのは若者の政治参加を促すことが大きなねらいでした。
これに伴い、学校現場では新たに有権者となる高校生の政治や選挙への意識を高める「主権者教育」が行われ、政治の仕組みなど必要な知識を学ぶ機会が増えています。
文部科学省の2022年度の調査によりますと高校3年生の94.9%が高校生の間に主権者教育を受けたということです。
18歳になるまでは政治について学ぶものの、選挙や選挙運動には参加できない状況になっています。
岩崎教授は「国会での議論や選挙戦での争点になることはほとんどなかったのが実態だ。最近になって被選挙年齢の引き下げとともに議論されはじめたが、正面からクローズアップされてこない論点だった」と話しています。
広がるSNS選挙
2013年にインターネットを使った選挙運動が解禁されたことやSNSの普及にともなって、近年の選挙では支援者が投票を呼びかけることが容易になっています。
去年の東京都知事選挙や兵庫県知事選挙などでは、SNSの活用が広がり、結果にも影響を与えたとの指摘がありました。
今後もSNSを活用した選挙運動が十分予想され、岩崎教授は「中学生や高校生もSNSを使っていていて特に活動をしようと思わなくても政治的な内容に言及をすることは当然あり、規制するのは困難だ。若者たちの間から『もっと参加したい』と求めてきた今、法律の見直しなどの議論をスタートさせていく時期に来ているのではないか」と話しています。