
福島第一原発事故から14年 廃炉に進展も完了実現見通し立たず NHK 2025年3月11日 3時47分
世界最悪レベルの事故を起こした東京電力福島第一原子力発電所では、溶け落ちた核燃料デブリを初めて試験的に採取するなど、一部で廃炉に進展がみられる一方、政府と東京電力がかかげる最長40年、2051年までの完了は実現の見通しが立たないままです。
福島第一原発では、14年前の巨大地震と津波により、原子炉を冷却するための電源が失われ、運転中だった3基の原子炉で核燃料が溶け落ちる「メルトダウン」が発生し、大量の放射性物質が放出されました。
1号機から3号機で溶け落ちた核燃料が、周りの構造物と混ざり合った核燃料デブリは、合わせておよそ880トンにのぼると推計されています。
2024年11月には、この核燃料デブリが初めて試験的に採取されました。
採取された量はおよそ0.7グラムで、日本原子力研究開発機構などの研究施設で詳しい分析が行われていて、原子力機構は今後、本格的に核燃料デブリを取り出す工法などの検討に生かすため、硬さや粘りけといった性質を詳しく調べ、ことし夏ごろをめどに、主な結果を公表することにしています。
東京電力は、本格的な取り出しを2030年代初めまでに3号機で始める計画で、ことし中にも具体的な工法を公表するとしています。
また2023年に海への放出が始まった処理水をめぐっては、ことし2月、1000基余りにのぼる保管タンクのうち、空になった一部の解体が始まりました。
東京電力は、2025年度までに12基を解体し跡地には核燃料デブリの本格的な取り出しに関連する施設を整備したいとしています。
処理水の海洋放出を受けて、中国が行っている日本産水産物の輸入停止措置は、1年半年余りたった今も続いていますが、2024年9月には中国も参加する追加調査を前提に、段階的に輸入を再開することで日中両国が合意しました。
ことし2月にはIAEAの枠組みのもと、中国の専門家らが初めて原発構内のタンクから直接、処理水を採取していて分析の結果が速やかな輸入再開につながるか注目されます。
廃炉をめぐって一部で進展が見られる一方、国と東京電力がかかげる最長40年、2051年までの完了は、実現の見通しが立たないままです。
核燃料デブリの取り出し開始は当初の目標から3年遅れ、1号機と2号機の使用済み核燃料プールに残る核燃料の取り出し完了は、当初の計画から10年遅れるとしています。
遅れの背景には技術的な難しさに加え、現場でのリスクの把握や情報共有の不足などによるミスやトラブルもあり、原子力規制委員会や廃炉の専門機関は、東京電力の管理体制について改善を求めています。
こうした状況を踏まえて、国と東京電力が廃炉の完了時期も含め、今後の進め方をどのように見直していくのかが改めて問われています。
2051年までの廃炉目指し作業も 多くの工程に遅れ 不透明さ増す
東京電力福島第一原子力発電所の廃炉は、事故から40年となる2051年までの完了を目指して作業が続いていますが、廃炉最大の難関とされる溶け落ちた核燃料デブリの取り出しをはじめ、多くの工程が当初の計画から遅れていて、計画どおりに廃炉を終えられるかは不透明さを増しています。
政府と東京電力は、福島第一原発の事故が起きた2011年に、
▽原子炉建屋で発生する汚染水への対策のほか
▽建屋に残る使用済み核燃料の搬出や保管
▽それに、溶け落ちた核燃料が周りの構造物と混ざり合った核燃料デブリの取り出し
といった取り組みを段階的に進めようと、30年から40年で廃炉を完了するとしたロードマップを定めました。
その工程は、
▽使用済み核燃料の取り出し開始までの第1期
▽核燃料デブリの取り出し開始までの第2期
▽建屋の解体や廃棄物の処分を含む第3期
の大きく3つの期間にわけられています。
処理水放出から1年半
このうち汚染水への対策では、当初、発生量をゼロにすることを目指しましたが、建屋の損傷が想定以上に激しかったことなどから、雨水や地下水の流入を止められず、今も1日およそ80トンのペースで発生しています。
東京電力は、汚染水から放射性物質の大半を取り除いた処理水を、敷地内にある1000基余りのタンクに保管してきましたが、廃炉作業を進めるうえで、ため続けることはできないとして、政府の方針に基づき2023年8月から大量の海水を混ぜて基準を下回る濃度に薄めたうえで、海への放出を始めました。
これまでのおよそ1年半で7万8285トンを放出したことにより、タンクにためられている処理水の量は、放出前の133万6502トンから、ことし2月27日時点で128万7306トンに減少しました。
ことし2月からは空になったタンクの解体も始まり、東京電力は2025年度までに12基を解体する計画で、跡地には、2030年代初めに始めるとしている核燃料デブリの本格的な取り出しに関連する設備を整備したいとしています。
使用済み燃料プールは
また1号機と2号機の原子炉建屋最上階にある使用済み燃料プールには、合わせて1000体余りの核燃料が残されています。
東京電力は2025年度後半に、まず2号機での搬出開始を計画しています。
1号機は、2027年から2028年度の搬出開始を予定していますが、搬出完了の目標時期は当初の計画から10年遅れとなる2031年となっています。
核燃料デブリを採取 廃炉の工程は第3期に
一方、1号機から3号機で溶け落ちた核燃料デブリは、当初は2021年までに取り出しを始める計画でした。
しかし2号機で予定していた試験的な取り出しは延期を繰り返し、2024年11月にようやく0.7グラムほどの核燃料デブリを採取しました。
これによって廃炉の工程は第3期に入り、東京電力は本格的な取り出しを2030年代初めに3号機から始める計画です。
具体的な工法については、国の専門機関が提言した原子炉などに充填(じゅうてん)剤を流し込んで、デブリごと固めて取り出す新たな工法も含めて検討を続けていて、ことし中にも示すとしています。
ただ、実際に核燃料デブリをいつまでにどれだけ取り出せるかは不透明な状況で、たとえ取り出せたとしてもデブリを含む膨大な放射性廃棄物を、どこでどのように処分するかについては今後検討するとしか説明していません。
そもそも「廃炉の完了」が、どのような状態になることを意味しているかについても、政府と東京電力はいまだに明らかにしていないのが現状で、専門家や地元住民の一部からは、廃炉の最終形をどうするかも含めて計画を現実的に見直すべきだという声も上がっています。
初めてのデブリ取り出しで、廃炉が新たな段階に入る中、政府と東京電力の対応が改めて問われています。
「廃炉最大の難関」デブリの取り出し 現状と見通し
核燃料デブリは、2011年3月の原発事故で原子炉から溶け落ちた核燃料と周囲の構造物が混ざり合ったもので、福島第一原発の1号機から3号機の3基、合わせておよそ880トンに上ると推計されています。
3基すべてで原子炉の底を突き破って、格納容器の底を中心に広がっているとみられ、極めて強い放射線を出し続け容易に近づけないことから、その取り出しは「廃炉最大の難関」とされています。
政府と東京電力が示している廃炉の工程では、2051年までの廃炉完了を念頭に、2030年代初めには、核燃料デブリの本格的な取り出し開始を目指しています。
当初の計画では、2021年までに核燃料デブリの取り出しに着手しその後、10年から15年で1号機から3号機の核燃料デブリをすべて取り出し終える計画でしたが、現在の工程表からは、デブリ取り出しを完了する時期の目標は削除されています。
こうした中、2024年9月から初めてとなる核燃料デブリの試験的な取り出しが2号機で行われ、11月に大きさ5ミリほど、重さおよそ0.7グラムの核燃料デブリが採取されました。
核燃料デブリは国の研究機関の日本原子力研究開発機構を中心に分析が続けられています。
具体的には、
▽数十万倍の高倍率で観察できる電子顕微鏡を使って、核燃料デブリの表面にウランなどの元素がどの部分に分布しているか調べたり
▽一部は溶かして液体にして、放射性物質の種類ごとの濃度などを調べたりしています。
分析を通して、溶け落ちた核燃料のほかにどういった部材が混ざり合っているかなどを調べ、硬さや粘りけといった性質や状態を明らかにすることで、核燃料デブリを取り出す際に、切ったり砕いたりできるかや、取り出しや保管にどのような装置が必要か検討するための情報を得ることを期待しています。
また核燃料デブリは、採取した場所や号機によって性質や状態が大きく異なっていると推定されるため、東京電力はさらにサンプルを採取して分析を重ねるために、ことし春にも2号機で2回目となる試験的な取り出しを行う計画です。
ただ2回目の取り出しについて、東京電力は当初、1回目の取り出しでは使用できなかった開発中の大型ロボットアームを使う計画でしたが、一部のケーブルに劣化によるとみられる断線が見つかるなどして、1回目と同じ装置を使うことになりました。
一方、2030年代初めに3号機から始めるとしている本格的な取り出しについては、国の専門機関から充填材を流し込んでデブリごと固めて取り出す工法の提案を受け、東京電力がその実現性を検証するなどして、ことし中にも工法を具体化するとしています。
東京電力 廃炉責任者「新しいステージに入った」
福島第一原子力発電所の廃炉の責任者を務める、東京電力福島第一廃炉推進カンパニーの小野明代表は、廃炉の現状について「廃炉の本丸と言われる核燃料デブリの取り出しに一歩踏み出せたという意味で、新しいステージに入ったと言えると思う」と述べました。
取り出した核燃料デブリの分析については、「今の段階でも、かなり重要な情報が得られているが、あの1粒ですべてわかるというわけではない。サンプルを増やしていくことが大事で、それによって成分だとか、場所によってどう違うのかとか、デブリの情報量が増えていくと思う」として、ことし春にも行うとしている2回目の試験的取り出しを含め、情報収集を続ける重要性を強調しました。
一方、重要な作業でミスやトラブルが今も相次いでいる状況については「トラブルがあったから、協力企業に全部責任をとってくれというわけにはいかない」と述べ、協力企業との関係について、「これからは、発注者と受注者という枠を超えて、一緒になって作業に携わり、現場レベルで協調・協働しながらやっていく必要性があると思っている。『ワンチーム』というのをキーワードとしてやっていきたい」と話しました。
また政府が示す「最長40年で廃炉を完了する」というロードマップの実現性については、「今の時点で、あの目標を変える必要は、私はないと思っている」と前置きしたうえで「例えば今、デブリの情報がいろいろ集まりつつある。当然ながら、その状況をもとにロードマップの改訂と言うか、見直しと言うか、関係する所と相談することは出てくるかと思うが、まだその情報は十分集まっていないので、その情報を集めることが、われわれにとっては非常に大事だ」と述べました。
世界最悪レベルの事故を起こした東京電力福島第一原子力発電所では、溶け落ちた核燃料デブリを初めて試験的に採取するなど、一部で廃炉に進展がみられる一方、政府と東京電力がかかげる最長40年、2051年までの完了は実現の見通しが立たないままです。
福島第一原発では、14年前の巨大地震と津波により、原子炉を冷却するための電源が失われ、運転中だった3基の原子炉で核燃料が溶け落ちる「メルトダウン」が発生し、大量の放射性物質が放出されました。
1号機から3号機で溶け落ちた核燃料が、周りの構造物と混ざり合った核燃料デブリは、合わせておよそ880トンにのぼると推計されています。
2024年11月には、この核燃料デブリが初めて試験的に採取されました。
採取された量はおよそ0.7グラムで、日本原子力研究開発機構などの研究施設で詳しい分析が行われていて、原子力機構は今後、本格的に核燃料デブリを取り出す工法などの検討に生かすため、硬さや粘りけといった性質を詳しく調べ、ことし夏ごろをめどに、主な結果を公表することにしています。
東京電力は、本格的な取り出しを2030年代初めまでに3号機で始める計画で、ことし中にも具体的な工法を公表するとしています。
また2023年に海への放出が始まった処理水をめぐっては、ことし2月、1000基余りにのぼる保管タンクのうち、空になった一部の解体が始まりました。
東京電力は、2025年度までに12基を解体し跡地には核燃料デブリの本格的な取り出しに関連する施設を整備したいとしています。
処理水の海洋放出を受けて、中国が行っている日本産水産物の輸入停止措置は、1年半年余りたった今も続いていますが、2024年9月には中国も参加する追加調査を前提に、段階的に輸入を再開することで日中両国が合意しました。
ことし2月にはIAEAの枠組みのもと、中国の専門家らが初めて原発構内のタンクから直接、処理水を採取していて分析の結果が速やかな輸入再開につながるか注目されます。
廃炉をめぐって一部で進展が見られる一方、国と東京電力がかかげる最長40年、2051年までの完了は、実現の見通しが立たないままです。
核燃料デブリの取り出し開始は当初の目標から3年遅れ、1号機と2号機の使用済み核燃料プールに残る核燃料の取り出し完了は、当初の計画から10年遅れるとしています。
遅れの背景には技術的な難しさに加え、現場でのリスクの把握や情報共有の不足などによるミスやトラブルもあり、原子力規制委員会や廃炉の専門機関は、東京電力の管理体制について改善を求めています。
こうした状況を踏まえて、国と東京電力が廃炉の完了時期も含め、今後の進め方をどのように見直していくのかが改めて問われています。
2051年までの廃炉目指し作業も 多くの工程に遅れ 不透明さ増す
東京電力福島第一原子力発電所の廃炉は、事故から40年となる2051年までの完了を目指して作業が続いていますが、廃炉最大の難関とされる溶け落ちた核燃料デブリの取り出しをはじめ、多くの工程が当初の計画から遅れていて、計画どおりに廃炉を終えられるかは不透明さを増しています。
政府と東京電力は、福島第一原発の事故が起きた2011年に、
▽原子炉建屋で発生する汚染水への対策のほか
▽建屋に残る使用済み核燃料の搬出や保管
▽それに、溶け落ちた核燃料が周りの構造物と混ざり合った核燃料デブリの取り出し
といった取り組みを段階的に進めようと、30年から40年で廃炉を完了するとしたロードマップを定めました。
その工程は、
▽使用済み核燃料の取り出し開始までの第1期
▽核燃料デブリの取り出し開始までの第2期
▽建屋の解体や廃棄物の処分を含む第3期
の大きく3つの期間にわけられています。
処理水放出から1年半
このうち汚染水への対策では、当初、発生量をゼロにすることを目指しましたが、建屋の損傷が想定以上に激しかったことなどから、雨水や地下水の流入を止められず、今も1日およそ80トンのペースで発生しています。
東京電力は、汚染水から放射性物質の大半を取り除いた処理水を、敷地内にある1000基余りのタンクに保管してきましたが、廃炉作業を進めるうえで、ため続けることはできないとして、政府の方針に基づき2023年8月から大量の海水を混ぜて基準を下回る濃度に薄めたうえで、海への放出を始めました。
これまでのおよそ1年半で7万8285トンを放出したことにより、タンクにためられている処理水の量は、放出前の133万6502トンから、ことし2月27日時点で128万7306トンに減少しました。
ことし2月からは空になったタンクの解体も始まり、東京電力は2025年度までに12基を解体する計画で、跡地には、2030年代初めに始めるとしている核燃料デブリの本格的な取り出しに関連する設備を整備したいとしています。
使用済み燃料プールは
また1号機と2号機の原子炉建屋最上階にある使用済み燃料プールには、合わせて1000体余りの核燃料が残されています。
東京電力は2025年度後半に、まず2号機での搬出開始を計画しています。
1号機は、2027年から2028年度の搬出開始を予定していますが、搬出完了の目標時期は当初の計画から10年遅れとなる2031年となっています。
核燃料デブリを採取 廃炉の工程は第3期に
一方、1号機から3号機で溶け落ちた核燃料デブリは、当初は2021年までに取り出しを始める計画でした。
しかし2号機で予定していた試験的な取り出しは延期を繰り返し、2024年11月にようやく0.7グラムほどの核燃料デブリを採取しました。
これによって廃炉の工程は第3期に入り、東京電力は本格的な取り出しを2030年代初めに3号機から始める計画です。
具体的な工法については、国の専門機関が提言した原子炉などに充填(じゅうてん)剤を流し込んで、デブリごと固めて取り出す新たな工法も含めて検討を続けていて、ことし中にも示すとしています。
ただ、実際に核燃料デブリをいつまでにどれだけ取り出せるかは不透明な状況で、たとえ取り出せたとしてもデブリを含む膨大な放射性廃棄物を、どこでどのように処分するかについては今後検討するとしか説明していません。
そもそも「廃炉の完了」が、どのような状態になることを意味しているかについても、政府と東京電力はいまだに明らかにしていないのが現状で、専門家や地元住民の一部からは、廃炉の最終形をどうするかも含めて計画を現実的に見直すべきだという声も上がっています。
初めてのデブリ取り出しで、廃炉が新たな段階に入る中、政府と東京電力の対応が改めて問われています。
「廃炉最大の難関」デブリの取り出し 現状と見通し
核燃料デブリは、2011年3月の原発事故で原子炉から溶け落ちた核燃料と周囲の構造物が混ざり合ったもので、福島第一原発の1号機から3号機の3基、合わせておよそ880トンに上ると推計されています。
3基すべてで原子炉の底を突き破って、格納容器の底を中心に広がっているとみられ、極めて強い放射線を出し続け容易に近づけないことから、その取り出しは「廃炉最大の難関」とされています。
政府と東京電力が示している廃炉の工程では、2051年までの廃炉完了を念頭に、2030年代初めには、核燃料デブリの本格的な取り出し開始を目指しています。
当初の計画では、2021年までに核燃料デブリの取り出しに着手しその後、10年から15年で1号機から3号機の核燃料デブリをすべて取り出し終える計画でしたが、現在の工程表からは、デブリ取り出しを完了する時期の目標は削除されています。
こうした中、2024年9月から初めてとなる核燃料デブリの試験的な取り出しが2号機で行われ、11月に大きさ5ミリほど、重さおよそ0.7グラムの核燃料デブリが採取されました。
核燃料デブリは国の研究機関の日本原子力研究開発機構を中心に分析が続けられています。
具体的には、
▽数十万倍の高倍率で観察できる電子顕微鏡を使って、核燃料デブリの表面にウランなどの元素がどの部分に分布しているか調べたり
▽一部は溶かして液体にして、放射性物質の種類ごとの濃度などを調べたりしています。
分析を通して、溶け落ちた核燃料のほかにどういった部材が混ざり合っているかなどを調べ、硬さや粘りけといった性質や状態を明らかにすることで、核燃料デブリを取り出す際に、切ったり砕いたりできるかや、取り出しや保管にどのような装置が必要か検討するための情報を得ることを期待しています。
また核燃料デブリは、採取した場所や号機によって性質や状態が大きく異なっていると推定されるため、東京電力はさらにサンプルを採取して分析を重ねるために、ことし春にも2号機で2回目となる試験的な取り出しを行う計画です。
ただ2回目の取り出しについて、東京電力は当初、1回目の取り出しでは使用できなかった開発中の大型ロボットアームを使う計画でしたが、一部のケーブルに劣化によるとみられる断線が見つかるなどして、1回目と同じ装置を使うことになりました。
一方、2030年代初めに3号機から始めるとしている本格的な取り出しについては、国の専門機関から充填材を流し込んでデブリごと固めて取り出す工法の提案を受け、東京電力がその実現性を検証するなどして、ことし中にも工法を具体化するとしています。
東京電力 廃炉責任者「新しいステージに入った」
福島第一原子力発電所の廃炉の責任者を務める、東京電力福島第一廃炉推進カンパニーの小野明代表は、廃炉の現状について「廃炉の本丸と言われる核燃料デブリの取り出しに一歩踏み出せたという意味で、新しいステージに入ったと言えると思う」と述べました。
取り出した核燃料デブリの分析については、「今の段階でも、かなり重要な情報が得られているが、あの1粒ですべてわかるというわけではない。サンプルを増やしていくことが大事で、それによって成分だとか、場所によってどう違うのかとか、デブリの情報量が増えていくと思う」として、ことし春にも行うとしている2回目の試験的取り出しを含め、情報収集を続ける重要性を強調しました。
一方、重要な作業でミスやトラブルが今も相次いでいる状況については「トラブルがあったから、協力企業に全部責任をとってくれというわけにはいかない」と述べ、協力企業との関係について、「これからは、発注者と受注者という枠を超えて、一緒になって作業に携わり、現場レベルで協調・協働しながらやっていく必要性があると思っている。『ワンチーム』というのをキーワードとしてやっていきたい」と話しました。
また政府が示す「最長40年で廃炉を完了する」というロードマップの実現性については、「今の時点で、あの目標を変える必要は、私はないと思っている」と前置きしたうえで「例えば今、デブリの情報がいろいろ集まりつつある。当然ながら、その状況をもとにロードマップの改訂と言うか、見直しと言うか、関係する所と相談することは出てくるかと思うが、まだその情報は十分集まっていないので、その情報を集めることが、われわれにとっては非常に大事だ」と述べました。