障害年金社労士 吉野千賀 ブログ

障害年金など社労士の仕事を通して感じたこと、知って為になること、面白いことをよしの社労士事務所の代表吉野千賀が綴ります!

社会保険審査会(第二審)2

2017-07-27 | 社労士の障害年金
こんにちは!

社会保険労務士の吉野千賀です!


戻り梅雨でしょうか。

暑くてバテバテでしたが、湿気もなかなか辛いものですね。

皆さまは体調を崩されていませんか。



前回の続きで、

不服申し立ての第二審を行う機関の

社会保険審査会の統計等を元に、

相手を知るシリーズの続き です。


裁判までは考えていない方にとって、

社会保険審査会は、

不服申し立ての「最後の砦」です。


【社会保険審査会で扱う制度】

社会保険審査会では、障害年金だけでなく、

健康保険(国民健康保険は除く)や

老齢年金・遺族年金も扱っています。


審理される制度は、こんな感じです。

・健康保険   療養費・傷病手当金など
・健保・厚年   保険料・標準報酬など
・厚生年金保険   老齢年金・障害年金・遺族年金など
・船員保険   傷病手当金など

・国民年金   老齢年金・障害年金・遺族年金・保険料免除など



制度としては、多肢にわたっていますね。


【障害年金が占める割合】

扱う制度はたくさんあれど、

主に扱う制度」となると、どうでしょう。


平成27年度の再審査請求の件数です。

・健康保険  138件
・健保・厚年  63件
・厚生年金保険 912件
・船員保険   5件
・国民年金 1,031件

   合計 2,149件


厚生年金保険(42.4%)と 国民年金 (47.9%)

主に扱う制度」であると言えますね。


それでは、

厚生年金保険と国民年金において

障害年金はどれくらいの不服申し立てがあるでしょう

<厚生年金保険>

平成27年度の件数です。

・老齢年金   31件
・障害年金  687件
・遺族年金   66件
・その他    128件
    合計 912件


<国民年金>

・老齢年金  18件
・障害年金 920件
・遺族年金   2件
・保険料免除  73件
・その他   18件
   合計 1,031件



厚生年金保険では 75.3%
国民年金では 89.2%


これが、障害年金の不服申し立て件数です!


不服申し立てのほとんどは、

障害年金に関するものであると

言ってもいい・・・と思います。


【なぜ、そんなに不服申し立てが多いの?障害年金】

ここからは、統計ではなく推測ですが・・・。

社会保険審査会の公開審理を傍聴する限り、

大きく2つにまずは分かれます。

・制度そのものを理解していない不服申し立て
・制度を理解したうえでの不服申し立て



制度そのものを理解していない不服申し立てとは、

たとえば、

納付要件を満たしていないことに対する不服申し立て

請求した傷病名とは別の傷病名で行おうとしている不服申し立て

・・・などが見受けられました。


障害年金の制度は、複雑です。

制度を理解することは、私たち社労士も多くの時間がかかりました。


まずは、「初診日」を確定しないと

初診日において納付要件が満たしているかどうかが

確認できない・・・ということが起こります。


さらに、不服申し立てで主張している初診日が

請求傷病の初診日と認められず、

結果的に納付要件を満たさないということもあります。


初診日はいいとして、次に

等級に該当しないため不支給とか・・・

等級が思ったより低いとか・・・

支給停止になったとか・・・

障害の程度」に関することが待っています。



つまり、

「初診日」と「障害の程度」の両方のハードル

クリアしないと

障害年金は受給することができないのです。



そのために、障害年金に関する不服申し立てが多いのかなと考えています。


【アドバイスできること】


皆さんが 不服申し立てを行おうとする時

私が 相談の電話やメールを受けた時に

まずはっきりさせたいのは、


・「初診日」の不服申し立てなのか、

・「障害の程度(等級)」の不服申し立てなのか、

・両方なのか



ということです。


両方とも問題だからといって

受給できないということはありませんよ!

どちらか一つでも

問題が深くてダメだったということもあります。


一番良くないのは、

論点をはっきりせずに、不服申し立てを行うこと。


次に難しいのは、

(自分が受給できるために)制度を変えてくれないか 

というような懇願かなぁ。

これは公平性という観点から、まず無理だと思います。



アドバイスできることは

まずは、社会保険審査会で公表している裁決を

読んでみること
ですね。


そして、不服申し立ての論点をはっきりさせること。


何度もいいますが、

障害年金でいえば、

「初診日」and/or「障害の程度(等級)」です。


そのうえで、

不服申し立てを扱っている社労士へ

相談してみる、ということを考えてもいいと思います。

少なくとも、不服申し立ての経験がありますから

見通しを立てたアドバイスはできると思いますよ。


参考:

社会保険審査会 統計

社会保険審査会 裁決

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【関連記事】障害年金請求サポート専門社労士吉野千賀ブログの「社労士の障害年金」記事一覧
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社会保険審査会(第二審)1

2017-07-14 | 社労士の障害年金
こんにちは!
社会保険労務士の吉野千賀です。


真夏の暑さが続くようになりました。

ふう、暑い・・・。

もうすぐ夏も本番ですね。

私の場合は・・・道産子で暑さに弱く、

日光アレルギーもあるので、これからが厳しい季節です。



社会保険審査会は、不服申し立ての第二審を行う機関です。

再審査請求(第二審)を考えているなら、

まずは相手を知ることも大事ですね。

社会保険審査会の統計等を元に、現状を説明してみます。



【社会保険審査会の構成】

社会保険審査会の委員は合計6名です。

3名で「一部会」を担当し、合議制で裁決します。


被用者保険(厚生年金・健康保険など)に2部会

国民年金に2部会、

合計4つの部会があります。


現在の合議体の構成は、以下のとおりです。

第一部会(被用者保険):瀧澤審査長、後藤委員、森委員
第二部会(同上):   高野審査長、吉山委員、大谷委員
第三部会(国民年金): 瀧澤審査長、吉山委員、大谷委員
第四部会(同上):   高野審査長、後藤委員、森委員


審査長は、元裁判官です。


6名の審査委員で、3名で一組となり、

4つの部会を担当しています。



たった6名の審査委員で・・・

こなしている量は繰越を除くと、年間2000件です。



これ、かなりの数です。

2000件を6人で分担して担当なら

単純に人数で割ると、333件ですが・・・

合議制ですから、そうではありません。



4つの部会(3人一組)で1件担当なので、

単純計算で1部会500件



一人の審査委員は、2つの部会を担当していますので、

一人の審査委員が担当する件数は、

年間1000件ということになりますね。


これは、かなりのハードワーク。

年度中にこなせずに繰越になる案件もあります。



【社会保険審査会で扱っている件数】

過去3年の受付状況です。

※平成28年3月31日現在で、平成29年3月末はまだ出ていません。


平成25年度   973(繰越)2,152(新規)  3,125件(合計)
平成26年度 1,138(繰越)2,163(新規)  3,301件(合計)
平成27年度 1,298(繰越)2,149(新規)  3,447件(合計)



新規受付数は横ばいで、繰越件数がわずかに増加していますね。

結果的に抱えている案件が、少しずつ右肩上がりになっているようです。



【さて、どれくらい容認されているか】

これから再審査請求を行うにあたり、

気になるのは、容認率かと思います。


過去3年の裁決数は、以下のとおりです。

※「裁決」とは、公開審理を行った後に、合議制で裁決することです。

平成25年度 209(容認)1、414(棄却)250(却下)1,138(未処理)
平成26年度 219(容認)1,273(棄却)252(却下)1,298(未処理)
平成27年度 227(容認)1,339(棄却)158(却下)1,391(未処理)


未処理は除いて、裁決だけの容認率を計算すると

平成25年度 11.2%
平成26年度 12.5%
平成27年度 13.2%   です。



【裁決でない事実上の容認もある】

「裁決」とは別に、保険者(厚生労働省)が再検討した結果、

原処分の変更」を行うこともあります。

保険者が再検討するのは、

社会保険審査会へ再審査請求をあげた後です。



再審査請求(第一審の審査請求含む)を行わないと

保険者が原処分を変更することもありませんから、



この「原処分の変更」は、

事実上の容認 とみなすことができます。


なお、原処分とは「等級不該当」などの処分のことで、

これを変更する=主張を認める  ということです。


原処分変更の数は、以下のとおりです。

平成25年度  84件
平成26年度 233件
平成27年度 236件



おおお・・・、

平成26年度・27年度は、容認数よりも

原処分変更数の方が多いではありませんか!



【実際の容認率は、裁決の容認+原処分の変更】

つまり、裁決で容認された件数に

保険者(厚生労働省)が原処分を変更した数を足すと、

請求人の不服申し立てが認められた件数(率)になります。

それは、以下のとおりです。

平成25年度 293件 / 1987件 (14.7%)
平成26年度 442件/ 2003件 (22.0%)

平成27年度 463件/ 2056件 (22.5%)

※分母は、裁決と取り下げの合計数です。

こうしてみると、容認率は右肩上がり!です。

なな、なんと、全体の2割以上が認められているではないですか。



これは、きっと・・・・

社会保険労務士が不服申し立ての代理人を行うことが増えたからかなぁ・・・

これは、統計が出ていません。

すみません! 私の希望的観測です。


でも、社会保険審査会で代理人を行う社会保険労務士が

増えていることは確かなこと。


代理人(社会保険労務士)のある・なしで

どれくらい容認率に変化があるのか・・・

ぜひ、統計を出して欲しいと願っています。



私が担当した案件では、容認率は6割〜8割くらいです。

昨年から審査長が交代になったことも影響しているのか

就労がらみの精神疾患の障害の程度は、厳しかったです。

残念なことに、容認率も6割くらいになってしまいました。



社会保険審査会については、

次回も引き続き、書くことに致しましょう。

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初診日を巡る攻防

2017-07-06 | 社労士の障害年金
こんにちは!
社会保険労務士の吉野千賀です。


毎日、蒸し暑いですね。

梅雨の時期は、体調を崩しやすいそうです。

皆さまもお気をつけくださいね。

私は17歳の時から日光アレルギー。

曇っていても紫外線対策をしないと

わずかな時間でも、アレルギーがバーッと出てしまいます。



さて、障害年金を請求するときの

第一関門である「初診日」についてです。



初診日に、

国民年金(学生・自営業・専業主婦など)だったか、

厚生年金保険(会社員・公務員)だったか、

まだ20歳前で未加入だったか、 によって

請求できる障害年金の種類が異なります。



【わずか1日の違いで大違いー新人編】

例えば、学校を卒業して、企業に入社したその日に

交通事故に遭ったとします。

この場合、初診日は入社ホヤホヤとはいえ、会社員です。

そうすると、なんらかの後遺症が残った場合、

障害厚生年金を請求することができます。

(もちろん、学生時代に保険料の未納がない(免除でも大丈夫)ことも

要件のひとつですよ!)



そして、たった1日しか働いていなくても、

障害厚生年金は25年(300月)働いたとみなして

年金額を計算します。



これって、すごくないですか?

私は社労士の勉強をしている時に

この制度(300月みなし計算)を知って、愕然としました。

だって、その時でさえ、

十分に今まで働いてきたと思っていましたが、

まだ25年も会社員勤めをしたわけでないですから。



別のパターン。

入社の研修(厚生年金保険に未加入の時)の帰りに

交通事故に遭ったとしたら・・・

障害基礎年金(国民年金)を請求することになります。



わずか数日の違いが、大違い!

障害基礎年金は2級以上でないと受給できないし、

国民年金には、2階部分の年金(厚生年金保険)も

配偶者加算もありません。



【わずか1日の違いで大違いーベテラン編】

体調が悪いのを我慢して、

休まずに会社へ行って

退職した後に病院へ行った場合。


とても残念ながら、

退職した後に初診日があると、

たとえ、それまでに30年お勤めしていたとしても

障害厚生年金は請求できません(涙)。



こういう相談を受けたら、

私は、会社の健康診断で異常はなかったかどうかを確認して、

なんとか障害厚生年金を請求できる方法を考えますが、

平成27年10月に初診日認定の新基準が始まり、

会社の健康診断だけでは、

初診日と認められる可能性が減ってしまいました。



【同じ病気でも障害年金を受給できる人、できない人がいる】

たとえば、糖尿病1型

合併症のない糖尿病は、3級です(糖尿病の認定基準に該当の場合)。

たとえば、人工関節置換

人工関節置換の場合は、3級です。



同じ病気で、3級該当でも

障害年金を受給できるか、できないかは、

初診日に

厚生年金保険加入だったかどうか、の違いだけです。



【初診日を巡る攻防が続く】

そうすると、

初診日がいつなのか?が大問題となるわけで、

う〜んと唸るような微妙なケースもあり、

初診日の相談を受けることも多いし、

不服申し立てに進むこともあります。


初診日を巡る行政との攻防が

今日も、そして これからも

続いています。



実際のところ、病気の始まりや

病歴や症状の経過が

全く同じ!という人は存在しないので

個別に判断するしかありません。


これは、行政も社労士も社会保険審査会も

みんな同じです。


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