障害年金社労士 吉野千賀 ブログ

障害年金など社労士の仕事を通して感じたこと、知って為になること、面白いことをよしの社労士事務所の代表吉野千賀が綴ります!

障害年金 慢性疲労症候群の初診日

2018-10-22 | 社労士の障害年金
こんにちは!

社会保険労務士の吉野千賀です!

最近の秋の陽気は過ごしやすいですね。

いかがお過ごしですか?


社会保険審査会の裁決は、私にとって「情報の宝庫」です。

それは、きっと皆さまも同じはず!と思い、

社会保険審査会の裁決から

参考になるような部分を連載するシリーズの①です。


第一弾は、弊事務所でも取り扱いが多い傷病の

「慢性疲労症候群 (CFS/ME)」です。

内容が濃い裁決なので、2回に分けますね。


今回ご紹介する裁決は、「初診日」が争点です。

「慢性疲労症候群 (CFS/ME)」の初診時が

整形外科受診で「頚椎椎間板症」の診断だったため


整形外科の疾患との相当因果関係が否定され、

「障害厚生年金の初診日が確認できない」として

日本年金機構で却下されたもの。

しかし、相当因果関係はあるとして、社会保険審査会で容認した裁決です。


とても興味深い、かつ、読み応えのある裁決ですから、

厚生労働省のホームページからアクセスして参考にしてください。

※ 私は裁決集を購入して読んでいますが、

この裁決は厚生労働省のホームページでも公開しています。

この裁決 平成26年(厚)第830号は、こちらをクリックしてください。


【CFS/MEの初診時は整形外科だった】

慢性疲労症候群(CFS/ME)の傷病名で、事後重症請求をしたのですが、

初診時はC外科受診、

受診状況等証明書(初診日証明)の傷病名は

「頚椎椎間板症、その後頚椎椎間板ヘルニア」

う〜ん、正直なところ、これだけ見ると

慢性疲労症候群(CFS/ME)の初診日としては

相当因果関係がないように思いました・・・。


整形外科で頚椎椎間板症・頚椎椎間板ヘルニアと診断した根拠は、

MRI検査で第5/第6頚椎間のヘルニアを確認したことです。

裏の傷病に慢性疲労症候群(CFS/ME)があったとは考えづらく、

頚椎椎間板症になった後に必ず、CFS/MEに罹患するとも考えづらいです。

ちなみに、

最近の傾向では、慢性疲労症候群(CFS/ME)・線維筋痛症、共に

「確定診断日を初診日とする」決定が横行していますから、

初診日の確認には注意が必要です。

【医師照会で得た両医師の意見】

裁決に戻りますと、

不服申立をした後、社会保険審査官が

慢性疲労症候群と診断したA医師(診断書作成医)および、

初診時の外科医B医師(受診状況等証明書作成医)に医師照会を行い、

B医師からは

相当因果関係は不明、しかしながらトータルに診て

100%CFSを否定することも不可能と考える」との見解がありました。

一方、診断書作成医のA医師からは

「外科の診療録には外科的症状(痛み、しびれ)、MRI所見の記載のみであるが、

詳細に問診すると、慢性疲労症候群の発症は平成○年○月で

急激な発症と悪化を伴う全身痛と労作後の疲労であり、

同年○月にはc外科にて頭を上げているのも困難、

倒れ込むような疲労感を訴えていたようだが、

その頃は慢性疲労症候群の認知度が低く、無視されたようであり、

その後の経過を考えれば、

慢性疲労症候群の発症を平成○年○月と考えることが妥当である」

との回答がありました。

これらの臨床経過により、社会保険審査会ではc外科の初診日を

慢性疲労症候群の初診日と容認しました。


【この裁決の教訓】

まず第一にお伝えしたいのは、

この平成26年(厚)第830号裁決で

社会保険審査会が容認したからといって、

今の社会保険審査会で同様の事案を扱っても、

同じように「容認」されるとは限りません。

平成26年・平成27年といえば、容認率22.5%の年で(前回のブログを参照してくださいね)

社会保険審査会のメンバーは当時と入れ替わっています。

近いところでは、

平成29年度に弊事務所で不服申立から代理した線維筋痛症の案件で、

初診時の受診が「痺れ」を主訴としていたことから、

医師の意見書や診療録写し(痺れの他に痛みの記載もあり)を提出したにもかかわらず、

障害厚生年金の初診日と認められず(涙)

裁決で棄却された案件がありました。

もちろん納得できず、弁護士さんにバトンタッチして提訴しています。


まあ、それは別にして、

この裁決の教訓としては、医師照会されたような内容の意見書を

前もって準備して、

最初の請求時から提出する

不服申立を行わずに

初診日が認められる可能性は高いと考えます。

転ばぬ先の杖ですね・・・。

上記のような内容の意見書であれば、

容認されるのだなとわかりますね。


次回も、「これは是非お伝えしたい」と考える情報を発信していきますので、

参考にしてくださいね。

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【関連記事】障害年金請求サポート専門社労士吉野千賀ブログの「社労士の障害年金」記事一覧
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【お知らせ】

よしの社労士事務所では、障害年金に関するご相談は無料です。専門家としてアドバイス致します。
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Chika Yoshino

障害年金請求サポートの「よしの社労士事務所」 吉野千賀
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障害年金 ハードルが高くなった最後の砦

2018-10-18 | 社労士の障害年金
こんにちは!

社会保険労務士の吉野千賀です!

すっかり秋の気候となり、暑がりの私にとっては過ごしやすい季節ですが、

いかがお過ごしですか?


さて、これからは社会保険審査会の裁決から

一般の皆さまが参考になるような、傷病に関する記事を連載する予定です。

社会保険審査会の裁決は、私にとって「情報の宝庫」です。

それは、きっと皆さまも同じはず!

「これは是非お伝えしたい」と考える情報を発信していきます。


社会保険審査会の裁決に入る前に、

まずはお伝えしなければならないことがあります。

それは、「再審査請求で容認されるハードルが高くなっている」ということです。


不服申立を行って、最後に決定を覆せて「容認された!」という嬉しい知らせが

ここ2年くらいで急激に減少している・・・とは

肌で感じていましたが、数字でも現れています。


【社会保険審査会 年度別(再)審査請求裁決状況】

厚生労働省のホームページに掲載されており、

最新年度は「平成29年度)」です。

直近5年度の「容認」

事実上の容認とも言える「原処分変更による取下げ」

件数は以下のとおりです。

       容認   + 原処分変更による取下げ / 裁決件数(分母) 
平成25年度 209件  +  84件 / 1,987 件
平成26年度 219件  + 233件  / 2,003 件
平成27年度 227件  + 236件 / 2,056件
平成28年度 152件  + 170件 / 2,161 件
平成29年度  99件  + 130件 / 1,848 件

容認件数も原処分変更も、平成28年度からガクッとと減っていることがわかります。

【直近5年度の容認率】

上記を容認率として%にすると、以下になります。

平成25年度 14.7%
平成26年度 22.5%
平成27年度 22.5%
平成28年度 14.9%
平成29年度 12.4%

平成26年度・平成27年度がおよそ4分の1が覆せていたのに、

平成28年度・平成29年度は、容認のハードルが上がり、厳しい限りです。

小職が担当して「なぜこれが認められないのか?」という悔しい案件もありました。


(再)審査請求のご相談を受ける時も、

数年前であれば認められたかもしれませんが、

今の社会保険審査会では、容認されない可能性が高い」と

答えせざるを得ない状況です。

社会保険審査会までは、社会保険労務士も代理できますが、

ここで棄却や却下されると、残された道は提訴しかありません。

そうすると、弁護士さんに代理を依頼することになり、

弁護士費用もかかりますし、なかなか裁判までは踏み込めない方も多いです。


【どうすればいい?何ができる?】

小職は、依頼された方が障害年金の受給権を得られるようにすることが仕事です。

そのために、情報を得たり、経験を積んだりして、精進しているつもりです。

「最後の砦」とも言える社会保険審査会でこんなに容認率が下がっているとなると、

それを踏まえたうえで、

最初の裁定請求(年金事務所への提出)において

ビシッと受給できるように尽力するしかありません。

それが一番確実、かつ、決定や受給開始時期も早いです。


残念だなぁ・・・と思うのは、

自分や家族で書類を提出、または、他の社労士が代理したのに

最初の裁定請求でダメだった方からの相談を受けた時です。

提出書類を見ると、これではダメだと残念でなりません。


数年前ならば(再)審査請求でなんとかなりそうだったものでも

不服申立で覆せる見込みが立てられず、

代理業務を引き受けられないことも多いです(涙)。

そんな時は、他の方法(再度の事後重症請求など)で、

なんとか受給権を得られれば良しとするしかありません。

結論としては、繰り返しになりますが、

もし最初の提出でダメでも、不服申立すればなんとかなる(はず)と期待せずに、

最初からしっかりとした書類を整えて提出する!

今はこれしかないように、私は思います。


次回からは、いよいよ社会保険審査会の裁決から傷病の「情報の宝庫」を連載します。

参考資料:厚生労働省 社会保険審査会 年度別(再)審査請求受付・裁決件数等の推移

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【関連記事】障害年金請求サポート専門社労士吉野千賀ブログの「社労士の障害年金」記事一覧
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一般の方向けに「スッキリ解決!みんなの障害年金」を商業出版しました。
おかげさまで、2015年9月刊行後、2か月で1万部に到達しました。ありがとうございます。

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Chika Yoshino

障害年金請求サポートの「よしの社労士事務所」 吉野千賀
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