障害年金社労士 吉野千賀 ブログ

障害年金など社労士の仕事を通して感じたこと、知って為になること、面白いことをよしの社労士事務所の代表吉野千賀が綴ります!

1型糖尿病の認定基準(裁判)

2024-04-23 | 社労士の障害年金
こんにちは!
社会保険労務士の吉野千賀です。

先週金曜日(4/19)大阪高裁で、1型糖尿病の集団訴訟の判決がでました。
結果は「逆転勝訴」でした!

長い戦いで心労も多くあったと思います。
本当にお疲れさまでした。

【1型糖尿病と障害年金】

糖尿病には「1型」と「2型」があり

生活習慣病の延長線上で発症する「2型」糖尿病

中高年になり発症することが多いのに対し、

「1型」糖尿病は、膵β細胞が何らかの理由により破壊され

インスリン分泌が枯渇して発症する糖尿病で

幼少期・若年期に発症することが多い疾患です。

障害年金の観点でいうと

20歳前に発症(受診)したなら、
障害基礎年金(20歳前傷病)に該当します。

障害基礎年金は2級以上でないと受給できないのですが、

障害認定基準の「代謝疾患による障害」では

3級に該当する基準しか明確にされていません。


【事件の概要】

大阪の裁判は、若年期(20歳前)に1型糖尿病を発症し、

障害基礎年金2級を受給していた複数の控訴人が、

障害認定基準の2016年6月改正による影響か

2017年以降の更新時に3級(2級不該当)と認定され、支給停止になったため

支給停止の解除を求めて集団訴訟を行なった裁判です。


【障害認定基準では原則3級】

2016年6月に改正された障害認定基準の認定要領では、以下と定められています。
——————

糖尿病については、必要なインスリン治療を行ってもなお血糖のコントロールが困難
なもので、次のいずれかに該当するものを3級と認定する。

ただし、検査日より前に90 日以上継続して必要なインスリン治療を行っていること
について、確認のできた者に限り、認定を行うものとする。

なお、症状、検査成績及び具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に
認定する


ア 内因性のインスリン分泌が枯渇している状態で、空腹時又は随時の血清Cペプチド値
が0.3ng/mL未満を示すもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの


イ 意識障害により自己回復ができない重症低血糖の所見が平均して月 1 回以上ある
もので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの

ウ インスリン治療中に糖尿病ケトアシドーシス又は高血糖高浸透圧症候群による
入院が年1回以上あるもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの
———————-

この改正により、3級の例示は具体的に記されたため

1型糖尿病で障害厚生年金3級を受給できるようになった事例は多々あります。

しかし、

2級に該当するかどうかは、

「症状、検査成績及び具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する」

記されているのみ。

この書き方が曖昧なので、新規裁定で2級認定は困難な現状です。

認定基準改正前に障害基礎年金2級を受給していた方が

2級不支給(3級)となったら、提訴するしかありません。

補足:
不服申立(審査請求・再審査請求)を行なっても
障害認定基準ベースで判断されるので難しいです。


【障害認定基準に2級の例示を!】

1型糖尿病は、幼少期・若年期に発症する傾向があるとのこと。

障害基礎年金(20歳前傷病)になるなら、

どのような場合に上位等級(2級)に該当するのか

障害認定基準に具体的な記載をして欲しいです。


【裁判までしないと受給できないのでは・・・】

裁判になると、時間と費用がかかり負担が大きい・・・。

今回の大阪高裁の裁判は紆余曲折があり、

勝訴まで7年(提訴は平成29年11月20日)もかかっています。


他にも、1型糖尿病の障害基礎年金の不支給決定(2級不該当)で

令和4年7月26日東京地裁で勝訴した事案もありますが

勝訴まで丸4年(提訴は平成30年7月27日)費やしています。


時間も弁護士費用もかかる裁判を行わないと

1型糖尿病で2級受給への道は開けないのでしょうか。

繰り返しになりますが、

障害認定基準の認定要領で「2級」に該当する具体的な例示を示して欲しいです。

そうすれば、1型糖尿病で重症の方は

裁定請求(最初の手続きによる申請)から2級と認められ、

何年も裁判に費やす時間や費用や心労がなくなることでしょう。

そうなることを願ってやみません。

【ご参考】
大阪高裁1型糖尿病訴訟の記事はこちら
東京地裁1型糖尿病訴訟の書籍はこちら 賃金と社会保障1820 2023年2月下旬号

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【関連記事】障害年金請求サポート専門社労士吉野千賀ブログの「社労士の障害年金」記事一覧
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障害年金の再認定(更新)時期

2024-04-03 | 社労士の障害年金
こんにちは!
社会保険労務士の吉野千賀です。

今年は桜の開花が遅かったですね。
九段下の千鳥ヶ淵は、桜も咲いて、入学式でとても華やいだ雰囲気です。

障害年金の受給が決まり、ホッとするものの
更新が心配になる方も多いようです。

今回は、更新時期(期間)について書いてみますね。

【再認定(更新)とは】

障害年金には、症状に波のある傷病症状が固定している傷病があります。

症状に波のある傷病とは、精神疾患や内科的疾患などが該当し

人工関節置換や人工弁などは、症状固定とされています。

症状に波のある傷病は、

定期的に診断書を提出して再認定を受けることにより

年金受給が更新されます。

これを、再認定(更新)と呼びます。

再認定時期は、年金証書の右下(次回診断書提出年月)に記載されていますので

是非、確認しておいてくださいね!


【再認定(更新)期間はどれくらい?】

自分の更新時期が短いのか、長いのか、よくわからなくないですか。

そこで、障害年金業務統計(令和4年度)から

全体の(他の人の)更新期間がどれくらいなのかを紹介します。

⚪︎新規裁定(初回の申請)の障害基礎・障害厚生の全体

更新期間  
1年 1.6%
2年 23.4%
3年 34.6% ←一番多い
4年 0.9%
5年 30.3% ← (注1)ご参照ください
永久固定 9.2% 

⚪︎障害厚生年金3級だけみると
1年 4.2% ← 比較的多い
2年 39.4% ←2年と3年更新は全体の74.1%
3年 34.7% 
4年 0.8%
5年 8.5%
永久固定 12.5% ← 人工関節・人工弁などで3級の永久認定

障害厚生年金3級は、1級や2級の更新時期と若干違うのかなと思います。

傷病の種類(外部障害・内部障害・精神疾患)によっても

更新時期の設定が異なるようです。

例えば、

人工透析の2級認定では、ほとんどの方が5年更新(注1)、

精神疾患の3級・2級では1〜2年更新が多い印象です。


【更新後の更新時期(次の次の更新)は長くなる傾向】

これが、再認定(更新)後=次の次の更新になると時期が長くなる傾向があります。

⚪︎障害基礎・障害厚生の全体

更新期間(次の更新) 
1年 0.7%
2年 3.9%
3年 19.2%
4年 0.9%
5年 52.0% ← 一番多い
永久固定 23.2% ← 永久固定も増えている

⚪︎障害厚生年金3級
1年 3.0%
2年 8.8%
3年 43.7% ← 一番多い
4年 0.6%
5年 38.9% ←増えている
永久固定 5.1% 

弊事務所で担当した精神疾患(気分障害)の方は、

何度も更新しているうちに永久固定になりました。

この方は、毎年更新(1年更新)が何年も続き、5−6年後に永久認定されたんですよね。

症状に波のある傷病(気分障害)でも永久認定されるんだ!とちょっと驚きました。

それなら、知的障害の方も更新を続けているうちに、永久認定されるかもしれません。


【更新時期の不服について】

毎年更新!なんて面倒だし解せない〜と思っても

更新時期設定の不服は、

審査請求・再審査請求(不服申立)の範疇にないため、不服申立はできません。

何回か更新していると、次の更新期間が延びたり、

いつか永久認定されたりすることもある、と考えて

受け入れるしかないかもです。


開花したばかりの3月29日(金)の千鳥ヶ淵です。
照明があたっているだけで、満開のように見えて綺麗です!



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