以前、住んでいた2Kの借家は
同じ作りの家が
3軒ありました。
道路に近い家には中学生の男の子とお母さんが住んでいました。
うちの前には
ちょっと一見怖そうなおじさんが一人で住んでいました。
そのおじさんは
写真の現像の仕事をしているとのことで
出勤時間がまちまちでした。
日中、
おじさんが車で出勤する時
やっと歩けるようになった娘は
必ず縁側から
おじさんに
大きな声で「バイバイ」と
言いながら手を振りました。
娘のそんな「行ってらっしゃい」は
5年間、
続きました。
おじさんとは普段は お話をすることはありませんでしたが
ちょうど今頃、
8月のお盆になると
必ず
うちにやってきました。
おじさんは
うちの縁側から
ちょっと酔っ払った様子で、
顔を出し
スーパーで買ったお団子を
娘にくれました。
毎年、必ず
お盆の頃に。
その時だって
特に
話はしませんでしたが
おじさんへの「行ってらっしゃい」と
お盆のお団子の交流は
5年間、続いたのです。
でも
ある日、
おじさんは顔を殴られたような怪我をして
そのあと、
親戚の人から
おじさんが亡くなったことを聞きました。
ちょうど
一番暑いお盆の頃の
忘れられない思い出です。