ひとりよがり。

日々のことや思い出などを書きます。
個人的な覚え書き、日記のようなブログです。

幼なじみのこと。

2021-11-07 00:41:00 | 思い出
A子ちゃんに初めて会ったのは
小学1年生の時でした。
彼女は1番前の席で
いつもお母さんと一緒でした。
お母さんは
いつも彼女の腕を支えて
学校に来て
教室では
いつも彼女の席の隣に腰掛けていました。
彼女のお母さんは
子どもたちからも先生たちからも
親しみを込めて
「おばちゃん」と呼ばれていました。
ある日、おばちゃんは
教室の前の方で何人かの子どもたちといた時に
「A子は本当はようごがっこうに
行かないきゃいけなかったのよ」と言いました。
それを聞いた子どもたちは
はじめてきく「ようごがっこう」という言葉に反応して
「ようごがっこう!いいな!」
「いいなぁ!」と言いました。
それを聞いて私も
心の中で「ようごがっこう、いいな〜」と思いました。
キラキラ輝くお城をイメージしたのです。
その時
おばちゃんが
「Y子ちゃんはようごがっこうなんていやだよねぇ〜」と
私に同意を求めるように言ったのです。
私は
頭の中で「ようごがっこう=お城」のイメージになっていましたが、
正直には言えずに
こっくり頷きました。

私はよく彼女のうちに
遊びに行き、
お泊まりも何回もしました。
彼女には
お姉さんがいました。
土曜日の夜、
お姉さんは
私が見たことのない怖いドラマを見ていて、
A子ちゃんも私も怖くて
きゃあきゃあ騒いでいました。

朝になると
A子ちゃんのお父さんが
朝ごはんの用意をしてくれていました。
お父さんは、大きなどんぶりに納豆を入れて
ものすごい勢いでクルクル混ぜていて、小さな小鉢の納豆しか知らなかった私はびっくりしました。

A子ちゃんとは
同じ中学校へ行きました。
もちろんおばちゃんも一緒に。

あれから
数十年経ちました。

A子ちゃんのお世話も
家事も全てこなしていたおばちゃんは91歳になりました。

それで
A子ちゃんのお姉さんが
彼女の身の回りのことや家事を
担うことになりました。

いつの頃からか、
私が遊びに行くと
お姉さんが私と話すようになりました。
お姉さんは二人の介護をしています。
だから
話すことがたくさんあるのです。

私は金曜日、2年ぶりに
A子ちゃんのうちに遊びに行きました。
A子ちゃんは必ず家にいることはわかっていましたが、
一応、電話をしました。
そうしたら
彼女が電話に出ました。
彼女と電話で話すことは
この50数年の中で2回目です。
彼女は
「今日はダメなの」と言ったので
「じゃあ、ちょこっとだけ行くね」と言って
家に向かいました。

A子ちゃんの家に着くと
これからヘルパーさんが来て、
そのあとリハビリの先生が来るとのことで彼女は畳の部屋にいました。

私は居間に
通されて、お姉さんが
淹れてくれたコーヒーを飲みながら
話を聞きました。
A子ちゃんを朝起こすのが大変だという話、
おばちゃんが耳が遠くなった話、
だからひとりでは散歩に出せないという話などなど。

リハビリの先生が来たので
私はA子ちゃんに
また来るね、と言って
彼女のちょっと冷たい
やさしい手に触れました。

私の唯一の幼なじみ。
彼女も私も
小学生の頃とあまり変わっていない。
でも
彼女の髪がグレイになっていました。