弥生宛に届いたメールには次のように打ってあった。
弥生さん、心配してくれて有難う、私は大丈夫ですので安心して下さい。母に連絡しなかったのは、それなりの理由があるのですが、いまはうまく話せそうもないので、弥生さんには申し訳ないのですが、私が友達と勝手に信州方面へ写真を撮りにいってしまい、怒られるのを恐れて連絡しなかった、と母に話しておいてくれないでしょうか。きょうの夜には自宅に戻りますので、詳しくは会った時に説明します、よろしくお願いします。 慎一
弥生は無事を直接知らせたくて、久美子の元に急いだ。
「叔母さん、母親に話せないってどんな事かな」
「それは、父親が関係してるという意味じゃないの」
「今度は息子にまとわりついているのかしら」
「なにか起こりそうな気配がしてきたわ」
その後慎一からもう一度メールが届き、翌日の昼頃、国立駅で会う約束をしたので、今夜は久美子の家に泊まることにした。ここからのが近いし、元気のない父親と一緒に居たくなかったのである。
8月の終わりで人通りも少ない大学通りのまっすぐな道を、3,4分歩いて左に曲がり少し行くと、天然酵母パンが自慢のカフェがある。
座席数は少ないが空いていて、それぞれ好みのパンを注文した。
弥生はこういう学生街のある所に通えればいいな、と将来を夢見た。
慎一はあまり元気がなかった。
「心配したのよ、誰にも言わないで帰ってこないなんて、初めてなんでしょう」
「初めてです、勿論」
「一体何があったの?」
「うまく説明できないのですが」
「うまくなくてもいいから、本当の事を話してね」
待っている久美子は落ち着かなかった。嫌な予感めいたものが頭の中を走る。
17時過ぎになってようやく弥生が戻ってきた。
「慎一君、どんな話をしたの」
「よく分からないけど、考えてみると、まさかって感じ」
弥生さん、心配してくれて有難う、私は大丈夫ですので安心して下さい。母に連絡しなかったのは、それなりの理由があるのですが、いまはうまく話せそうもないので、弥生さんには申し訳ないのですが、私が友達と勝手に信州方面へ写真を撮りにいってしまい、怒られるのを恐れて連絡しなかった、と母に話しておいてくれないでしょうか。きょうの夜には自宅に戻りますので、詳しくは会った時に説明します、よろしくお願いします。 慎一
弥生は無事を直接知らせたくて、久美子の元に急いだ。
「叔母さん、母親に話せないってどんな事かな」
「それは、父親が関係してるという意味じゃないの」
「今度は息子にまとわりついているのかしら」
「なにか起こりそうな気配がしてきたわ」
その後慎一からもう一度メールが届き、翌日の昼頃、国立駅で会う約束をしたので、今夜は久美子の家に泊まることにした。ここからのが近いし、元気のない父親と一緒に居たくなかったのである。
8月の終わりで人通りも少ない大学通りのまっすぐな道を、3,4分歩いて左に曲がり少し行くと、天然酵母パンが自慢のカフェがある。
座席数は少ないが空いていて、それぞれ好みのパンを注文した。
弥生はこういう学生街のある所に通えればいいな、と将来を夢見た。
慎一はあまり元気がなかった。
「心配したのよ、誰にも言わないで帰ってこないなんて、初めてなんでしょう」
「初めてです、勿論」
「一体何があったの?」
「うまく説明できないのですが」
「うまくなくてもいいから、本当の事を話してね」
待っている久美子は落ち着かなかった。嫌な予感めいたものが頭の中を走る。
17時過ぎになってようやく弥生が戻ってきた。
「慎一君、どんな話をしたの」
「よく分からないけど、考えてみると、まさかって感じ」