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並木の丘 33

2007-08-15 10:00:16 | 並木の丘
「私、優柔不断なんです、もっと早くはっきりさせればよかったのに」
久美子は絹代に本音を打ち明けると共に、寄りかかっておもいきり泣きたい気持ちが高まった。
「今日、はっきり伝えたのだからそれで良かったのよ、間違ったりしていないわ、話せる相手がいなくて辛かったでしょう・・・それで、これからどうしたいの?」
「まだ就職先も決めていないし、いろいろ考えてみようと思い、こちらが懐かしくて伺いました」
「そうなの、私さっきも言った様に、あなたが娘に思えてしかたがないのよ」
「有難うございます、そのお言葉、嬉しく思います」
「もし東京でよい仕事がみつからなかったら、ここの温泉にくればいくらでも紹介できるわよ、旅館の仕事だけでなく、観光の方からも仕事を選べるから」
「その節はよろしくお願いします」
「まあ少し気分転換を兼ねてゆっくりしていきなさいよ、第二の故郷になるかもしれないでしょ」
「でも、弥生を連れてきているので」
「あなたのお姉さんも早く亡くなったわね」
「母が亡くなってから3年後でしたから、寂しくなりました」
「弥生さんは元気にやっているの」
「とても元気で、私が煽られています」
尽きない話をしているうちに18時近くになり、弥生が帰ってきた。
「ここ、すぐに分かった?」
「地図通りに来たらすぐだったわ、駅から近いのね」
「絹代さん、弥生です」
「初めまして、女将の絹代です」
「高辻弥生です、よろしくお願いします」
「まあ、目元の涼しいところなんか久美子さんと一緒ね、親子みたいよ」
「私も叔母さんとは思っていません」
「姉も、弥生は自分よりもあなたと一緒に居る時がよっぽど打ち解けてよく喋ると言っていました」
「だって叔母さんの方が話しやすいんだもの、ここの温泉、随分古いんですね」
「1300年以上の歴史があるんですよ」




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