夢の介音楽夜話

音楽、アート、グリーン、クラフトなどなど徒然なるままに

ギャビィとチキン・スキン・ミュージック

2014年12月10日 | 音楽



70年代数々の名盤を世に送り出した「パニニ・レコーズ」を話題にしたところ、思い出したようにNさんが2003年のバックナンバー「Switch」誌を持って訪ねてくれた。
「サウンド・オブ・アロハとともに旅するオアフ、マウイ、そしてハワイ」と題する紀行の4頁は、パニニ・レコーズの創設者の一人「Steve Siegfried」へのインタビュー記事だ。

ライ・クーダーとギャビィ・パヒヌイと間に、どのような出会いがあったのか、興味深い。
アルバム「Chicken Skin Music」での2曲、ギャビィとアッタ・アイザックスの二人が初めてライとレコーディングする光景を、映像で見てみたいものだ。

「Steve Siegfried」は、大学に通いながらアラモアナにあった「House of Music」という音楽ショップでアルバイトをしていた。
レコードや楽器、音楽関係の書籍、楽譜等がおかれてハワイ音楽好きには最新のアルバムを探すスポットでもあった。

子供の頃からハワイの伝統的ミュージックに親しんでいた彼は、お店にエディ・カマエがやってくることを聞いた。
やがてエディに会うことができた彼は、尊敬するギャビィのことを熱く語ってついにギャビィを紹介してもらう。

70年代初期は日本もハワイもハワイ音楽が衰退していた。
日本では商店街や夏場にかかるBGMとして供給され続け目新しいものはなかった。
ハワイでもメインランドのオファーで作られるツーリスト向けのレコーディングに微々たるギャラで使われハワイのミュージシャンたちは傷ついていたという。
そんな状況のなかで若干20歳そこそこのSteveは「本気で素晴らしいアルバムを作りたいんだ!」とエディに熱く語る。

そしてエディはギャビィ、ジョー・マーシャル、デヴィッド・ロジャース、モエ・ケアレに声をかけて、71年アルバム「Sons of Hawaii」ができた。
ボックスに入った1枚のLPレコードとブックレット、美しいイラストとミュージシャンたちの似顔絵で彩られたパニニ・レコーズ最初のアルバムは素晴らしかった。



あの当時こうしたコンセプトのしっかりしたアルバムが作られたことに驚いた。
何より「これをビジネスとして捉えてミュージシャンたちにきちんとお金を払い、できるだけ多くの人に聴いてもらいたい」というSteveの志と熱情に恐れ入る。

そしてギャビィのアルバムを作りたかったSteveは、あのブラウン・アルバム「Gabby」を72年リリースした。

この「Gabby」アルバムは、現地ハワイの人たちにショックを与えた。
「自分たちにこんなに素晴らしい音楽があった」ことを知り、「ローカル・ミュージックを軽んじてきた」ことを反省した。

ギャビィは一晩で「ハワイで最も有名なハワイ人」になった。
そしてそれが「ハワイアン・ルネサンス・ムーブメント」につながっていった。

さてバカンスでハワイに行ったライの奥様スージーは、ブラウン・アルバム「Gabby」をお土産に買った。
これを聴いたライ・クーダーは「ぶっ飛んだ」

ハリウッドのエージェントを通じて招かれたギャビィのギターを聴いたライは、瞬時に「これはスゴイ!」と。
そしてハワイに向かったライは、ワイマナロでギャビィたちと毎日セッションすることになる。

スラックキーというオープン・チューニング奏法に初めて出会ったライはギャビィの弾き方がわからなくて、演奏を何時間も聴いていたそうだ。
どん欲な素晴らしい生徒であったというライは、ギャビィの演奏を本当に楽しそうに聴いていたらしい。
そして二人は素晴らしい音楽仲間だった。

ギャビィが死んでからもライは「ギャビィとの出会いがなかったら今の自分はない」と、ことあるごとに言ったそうだ。
ギャビィから直接習ったフレーズはライブで出て来るし、以降のハワイ以外の地の音楽の旅もすべてギャビィから始まった。

「Chicken Skin Music」はライの「音楽巡礼の旅」の原点だという。

これで70年代、五月雨のようにレコードショップに並んだLPレコードたち、ギャビィとライの関係が鮮明になった。

ハワイ音楽ファンは、ライ・クーダーの「Chicken Skin Music」の「Chloe」や「Yellow Roses」を聴いてギャビィやアッタを再認識した。
ライ・クーダーファンの方がこれらを先に聴いていたりしたあの時代が懐かしい。

まるで異なるジャンルから来た音楽ファンたちがこのアルバムを通じて熱弁をふるい友達になったりした。


スライドギターの雄が、ギャビィというレジェンドに出会い、ハワイアン・スラックキー・ギター、ハワイアン・スティール・ギター、ウクレレそして「ハワイの心」を歌う彼を愛した。
ギャビィがどんなにぶっ飛んでいたか、という逸話は数知れない。
招かれたパーティに行かないで、誰だか知らない席でとんでもない演奏を繰り広げたり、と。

ミュージシャンとミュージシャンとの友情、ジャンルや奏法を超えた音楽によるつながりが数枚のアルバムとして残っている。

ギャビィも愛したというマウイ島のハナに住む「Steve Siegfried」という人の人生が素晴らしい。














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YouTube: The Gabby Pahinui Hawaiian Band - Pu'uanahulu 1974 YouTube


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YouTube: Gabby Pahinui - Hi'ilawe 1947, Luau Hula (1972)


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YouTube: THE GABBY PAHINUI HAWAIIAN BAND - IPO LEI MANU 1974 - YOUTUBE


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YouTube: Sons of Hawaii " Molokai Nui Ahina " Sons of Hawaii




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