衆院選を目前に政党間の「原発」の捉え方が争点になっているかのような報道がある。
大きく存続派と廃止派とに分かれているようだが、具体的な論議は聞こえてこない。
どんなエネルギーにも設備投資とランニングコスト、最終的には店じまいまでの費用計算を行ってはじめてコストパフォーマンスがわかる。
火力発電には石油資源が必要だろうし発電設備は老朽化する。
風力や水力も、なんらかの犠牲を払って実現するし、生態系への影響も無視できない。
地底の熱資源を利用する地熱発電では、組み上げた熱水で蒸気タービンを稼働した後で地中に使用水を還元するという配慮をしている。
原発は「ハイテクを装ったローテク」との印象を拭えない。
核分裂は自然界になかった現象であり、熱水でタービンを回す原理は蒸気船の頃からあった。
問題は使用済核燃料の廃棄技術が確立されていなくて美しい地球のどこかに永久に埋め込まなくてはならないことだ。
以前書いたように私の住む近隣に過去の実験施設があり高級住宅地として知られているその地に使用済み核燃料が処理できないまま封印されている。
福島での惨事は天災がきっかけであったにせよ、被害を拡大したのは技術が確立されていないからこその人災だ。
廃炉のための技術開発努力は必要だが、それが確立できていないまま再稼動したいという主張はまさに政治的だ。
あるフランス料理店での話。
フランス人シェフと日本人妻が経営するこのお店、本場フランスでレストランを経営するシェフの父上まで来日して開店した。
ところが、福島の原発事故以来フランス人シェフはさっさと故国へ帰ってしまったという。
この辺りが床に落ちた食物をささっと払って口にすることができる日本人と(いや失礼私だけかしら)
欧米人との違いだろう。
原発を他国へ売りに出かける国フランスですらこの潔癖性なのだから、当時来日中の音楽家たちが故国から帰れとの指示のもと一斉に帰ったのは当然だ。
そんな難しいことを考えなくともクリスマスを前にした商店街や住宅地でイルミネーションが輝いている。
原発を再稼働しなくったってちゃんと発電供給できているじゃないか。
電力料金の値上げという形で我々庶民が、一企業の不始末のツケを払ってはいるものの、それでイルミネーションが輝いているのを庶民はちゃーんと見ている。
どの政党に入れるかは寒々しい限りだが、せめてものコスト意識を持った政治家に票を入れたいものだ。