中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

<希・望>と長襦袢

2012年03月03日 | 自然環境・脱原発
中野みどりHP
 
はや一年を迎えます。忘れられない、忘れてはいけない3月11日。
今なお行方不明の方、病に倒れた方、不自由を余儀なくされている方、
さまざまな不安や苦しみが続いています。

塾のメンバーの方にもお兄様を亡くされた方もおられます。
昨年12月に身元が判明されたそうです。でも「春には着物で会いたいです」
とメッセージをいただきました。

人はどんなときも一筋の光を求めるようにできているのだと思います。

先日の香川の旅の折にたまたま立ち寄らせてもらった呉服屋さんが襦袢と帯の新作展
をされていました。
店主と少し話をさせてもらいました。
<希望>と銘打たれていたのですが、それはこの一年の苦しみの中で、
わずかでも望みをつないで生きていこう――という決意でもあったようです。
襦袢を変えると未来が開ける――と。

見えないところにひそかにおしゃれをして愉しむ余裕が日本人の感性にあったと思います。
着物は地味にしていても、あるいはボロを纏っていても、羽裏や襦袢は華やかにし、
見え隠れするところに凝ることで何かの拍子にハッとする、あるいはハッとさせる粋さ。

美しいものに出会える感性と、小さな感動をつなぎながら生きていくことが
未来を拓くことになる。この大切さを長襦袢を通して春の初めに思いました。


暮れにも書きましたが、さよなら原発1000万人署名は500万筆は超えるようですが、
5月末まで署名は続けられるそうです。
1000万人という数を考えられたのは作家の澤地久枝さんだということを
送られてきた「1000万人ニュース」で知りました。

数字の持つ意味は沖縄の問題に通じているそうです。
若いころから尊敬する方ですが、いつもテレビで拝見するときは着物をきちっとお召になり
その着姿からは厳しさと暖かさ優しさを感じます。
懐深い芭蕉布や琉球絣、藍型など沖縄の衣がお似合いになる方ですね。

96年に見たユージン・スミスの写真展で沖縄戦を納めた写真の中に、市民の暮らしを写したものがあり、
木に洗濯して干された琉球の衣の写真が美しかったことを覚えています。
こんなに美しい織物を生み出す地で繰りひろげられた惨事に胸が痛みました。

この度の福島原発事故と沖縄戦が澤地さんの中で重ねられているのでしょう。
美しい織物を纏える自然環境と平和はなんとしても守りたいです。
そして子供たちが外で安心して遊べる国土であってほしいです。
賛同いただける方は是非ご署名をお願いしたいです!

「紬塾'12」は来週10日(土)から受け付けます。



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