「『ぼろの美』額田昇作コレクション」より
8月最後の週にずれ込んでしまいましたが、第3回紬塾「とことん着尽くす」の講座を行いました。
親から譲り受けた着物など古い着物の生かし方、更生の知恵など具体的に私の私物をご覧いただき説明しました。
母の遺品から、子供の頃の着物をはぎ合わせた手縫いの風呂敷や、戦時中に着ていた着物から作り変えた服なども見てもらいました。
また、18年前に出版された『ぼろの美』額田昇作コレクションも短時間でしたが紹介しました。
みなさん関心をもって見てくれていましたのでブログでも少し紹介いたします。
画家の額田さんがぼろの美に魅せられ打ち込んで収集したコレクション図版集です。
発売されてすぐに購入したものですが、今も手元において時折眺めています。
ぼろのコレクターはたくさんいらっしゃいますし、実物を見ることもありますが、この方のコレクションは特にアート、現代作品を見つめるような視点で選ばれたものが多いように思います。
それらのとことん使われ、幾重にもたたみ掛けるように継ぎはぎされた布は、自然発生的な、導かれるような模様やかたちを成し、美しく、またアート性を感じます。
文中に額田さんは『絵もこのように描けないものか』と書かれています。
画家のみならずこれらの布を見ると自分の仕事と重ねて衝撃を受ける方は多いと思います。
布を織るものとしてはいつもこれらの仕事を根底に据えておきたいです。
ほんの一部ですが本の中から写真を紹介します。
まずは手織り布自体の美しさ、針目の美しさ、特に擦り切れる部分に思いがけない模様が生まれてくる面白さ。
重ね配置される無数の布の調和。自然と人為が織りなす、見ても見ても見飽きないものです。
生きるか死ぬかの瀬戸際の繕い仕事から生まれてきたことは言うまでもないことですが、でも美しいものを使おう、作ろう、纏おうとしているからこその仕事に思えます。
入手困難な本ですが、図書館などにあるかもしれません。
酒袋
右は麻袋
このコレクションでも思いますが、とことん使うに値するものを今の私達も使うことが大切ではないでしょうか?
継ぎ当てには不思議な力が宿ります。身近なものに継ぎはぎをするのは楽しいですし、布や糸質などの発見もあります。
工房の30代のアシスタントも、以前会社勤めの頃は服などをたくさん捨てていたようですが、最近はズボンやシャツに継ぎをあてて着ています。
麻のシャツの擦り切れたところに当て布をして並縫いをしたもの。あて布の色柄が見え隠れして面白いですね(額田コレクションの後に恐れ多いのですが、、)。
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次回紬塾はいよいよ運針で伊達締めとヘンプ蚊帳生地タオルで汗取り(補正用にもなる)を縫います。
運針は練習してきてください。指ぬきも自分のサイズに直してきてください。よろしくお願いします。