中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

紬きもの塾 第5回「麻の伊達〆を縫う」ー運針から学ぶこと 

2018年09月28日 | 紬きもの塾’17~’20

今年は紬塾のスケジュールがかなり変則的になってしまい、23日は第7回「織りの準備」、翌24日 第5回「麻の伊達〆を縫う」と2日続けての講座となりました。
ここでは運針について書きます。今までもほとんどの方が運針は出来ず、今年は運針にしっかり時間を取り、なんとか皆さんに型だけは覚えてもらいたいと思いました。
麻の伊達締め(伊達巻き)だけで十分なのですが、今期の方はヘンプの蚊帳生地を使ったバイアスの汗取りも縫いたいと希望があり、私としては伊達締めだけでも指導が大変なのにエライことになってしまいました.. (-_-;)

                                   半襟の付け方もやりました。

義務教育のうちに家庭科の授業で運針は教えるべきだと思います。本当に生きていく上で基本的なことですから(大げさなようですが、、)。
覚えると自家用のものなら大抵のものは何でも手縫いできます。
無心に針を動かすのは集中力を高め、達成感も得られ、本当にいい事ずくめです。
受験校で毎朝運針をする女子校(豊島岡女子学園)があるようです。自分なりの目標を一針でも先に進めることが大事なようで競争をするわけではありません。

ミシンももちろん便利ですが、手縫いは小さな針箱に針山と針、まち針、ハサミ、後は絎台があれば大抵のものは縫えます。
私の母は和裁を特にしたわけではありませんが、いつも手元に針箱を置いて、着なくなった服などもなんでもはぎ合わせて様々なものに作り替えていました。それを私は傍らで見ていただけですが、結局母と同じようなことを今しています。

運針は小学校の家庭科で一応習いましたが、本当に身につけられたのは母の姿を見て覚えたのです。
学ぶというのは真似をすることから始まると思います。真似の上手い人は技を身につけるのが早いです。
よく見て覚えろということは職人の世界などでも言われることですが、本当に見る力が大事だと思います。同じようにするにはどうしたらいいかを自分で考えるのです。

技というのは実は手取り足取り教えられるものではなく、示された手本を本人が見て受けとれるかどうかです。
お茶の教室でも“見稽古”というのがあるそうです。先輩の点前をじっと見て、その所作を感じ取り覚えることなのではないでしょうか。手順を覚えるだけではなく、どこをどう感じ取るかがないといけないのでしょう。
母の運針を見てリズミカルで、糸こきなどもシュッ!とカッコよくてあんなふうに縫いたいと私も真似して覚えました。

運針で学ぶことは布の素材感や織り密度、針や糸との関係性、針の長さ、太さ、糸の番手も奥が深い事にも気付きます。針目の大小も縫うものによって変えます。

昔は伊達締めや腰紐などは古い襦袢などから作ったと思います。幸田文さんの「きもの」の中でも腰紐を縫う話が出てきます。
古い布を少しためておくと何かに役に立つものです。

今の時代のなんでも断捨離というのも情けなく、薄ら寂しさを覚えます。
どんどん安いものを買い、2~3年着ない服はどんどん捨てるというようなことはやめにして、素材を吟味してとことん使う文化の豊かさや楽しさに気付きたいものです。
前々回の記事にかいた「ぼろの美」は布自体も美しいですし、針目や配置の妙味もあります。

絎台があると、まち針を打つとき、糸こき、キセを掛けるときにもとても役に立ちます。
母は絎台がなければ裁縫は出来ないと言っていました。和裁の方は足の指で布を挟む方もありますね。

この写真の方は絎台を新しく用意して来てくれました。どうやって使うかもまったくわかってなかったのですが、終わる頃にはだいぶ慣れてきていました。机上絎台と木製のものを合体させて今回は使いましたが、テーブルなどに固定させる簡易式のものでも良いと思います。正座で使うには写真のような木製の折り畳めるようになっているものが良いと思います。針山も毛糸くず(油分のあるもの)など詰めて作っておくと重宝します。
今期の方もだいぶ良くなりましたが、まだきちっとは出来てはいないのです。。でも自分がやっていた方法は運針ではなかったことに気付いただけでも良かったのではないかと思います。基本を覚え、毎日手ぬぐいの長さ分1本でいいので、針と指ぬきをそばに置いて運針をしてほしいと思います。
秋の夜長、虫の声(コオロギ)を聞きながら「肩刺せ、裾刺せ、綴れ刺せ」と繕い物の時間はいかがでしょう?
この言葉を祖母が母に、母は私に伝えてくれました。虫の声が聞こえてきたら冬に備えて衣類や布団のほころびを直したり、作り直したりして準備しておきなさい、と。

この日は暑かったのですが、藍小格子の単衣の紬に壺文様のジャワ更紗の半幅を締めました。下着は半襦袢にヘンプステテコでした。
庭の萩の花も満開で、一輪挿しに活けてみました。
暑さ寒さも彼岸まで―、これから紬の季節でもあります。




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