あなたから一番遠いブログ

自分が生きている世界に違和感を感じている。誰にも言えない本音を、世界の片隅になすりつけるように書きつけよう。

ビジネスが印籠になった理由

2013年08月28日 23時09分57秒 | Weblog
 現在でこそビジネスは錦の御旗になっているが、それはかなり限定された期間だけの話である。
 封建時代には商売は下賎なものだったし、金融ビジネス、すなわち金貸しはいつの時代でもたいてい悪者に見られた。「ベニスの商人」のシャイロックが典型である。
 日本でもおおっぴらに金儲けが一番でしょと言えるようになったのは、バブル崩壊後のことだと思う。新自由主義、小泉改革、ホリエモン、村上ファンドなどがそのキーワードである。

 それはもう一方で「官は悪、民は正義」の風潮とも重なるところがある。なんでもかんでも民営化が良いのだという論調は、どんどん強くなり、これだけ世の中が荒廃してもなお、「官より民」と主張する人がいる。
 余談だが、「官は悪、民は正義」という方向性は政府と自民党が作ったものだ。ようするに左派潰しキャンペーンである。というのは、かつて労働組合が今よりもしっかりしていて、資本と労働者が正面から戦う構図が出来ていた頃、労働組合の中心、かつ最先頭にいたのが官公労、つまり公務員労働組合だったからだ。

 資本主義は一番金を儲けた者が正義である。だから採算を考えてはいけない官庁・役所は資本主義にとってジレンマであり、許しがたい存在である。しかし資本家が安心して金儲けできる環境を整え守る機能も絶対に必要であって、その意味で国家や官庁は資本主義における必要悪となるのだ。
 しかしそうだからと言って、それをあからさまに言ってしまうことは長いことタブーであった。なぜなら現実には資本家より労働者、金持ちより貧乏人の方がずっと多いからである。このピラミッド構造は資本主義である以上、絶対に覆せない構造だ。
 だから資本家は労働者に反乱を起こされると大変な危機に陥るので、常に大衆=労働者、貧乏人を懐柔し続けなくてはならない。だから「金を儲けた者が正義だ」などとあからさまに言い放って、庶民の反感をわざわざ買うことはしなかった。
 そうした緊張関係の中で、労働者階級も駆け引きをしながら、自分たちの取り分をより多くすることができた。具体的には賃上げや福祉の充実である。

 しかしそのうちに世界情勢が変わっていく。
 かつて第三世界と呼ばれた開発途上国諸国が、だんだんと権利を主張するようになり、また先進諸国から少しずつ経済的権益を奪い取り始めたのである。
 もはや資本の側には余裕がなくなってきた。国内の労働者を懐柔している間に、入ってくるはずの富がどんどん目減りしてきたのだから。しかし一方で幸運なことに、資本主義にとって最も大きな脅威であった共産主義勢力が自滅、瓦解してくれたのである。ここで資本は開き直る。
 資本主義の勝利を宣言し、資本主義の原理を声高に主張したのである。すなわち「金儲けは正義である」と。ビジネスと言う言葉は水戸黄門の印籠になった。

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