東京新聞より転載
【福島原発事故】
福島第一 消えぬ難題 政府汚染水対策決定
2013年9月4日
政府が三日、国費四百七十億円を投入し、東京電力福島第一原発の汚染水問題に積極的に取り組む方針を決めた。これまでの東電任せの姿勢をようやく転換することになる。ただし、福島第一が抱える数々の問題は、政府が打ち出した対策だけで片づくほど甘いものではない。(清水祐樹、志村彰太、岸本拓也)
政府が目玉とするのが凍土遮水壁だ。汚染水問題は、高濃度汚染水がたまる建屋地下に一日四百トンもの地下水が流れ込み、水かさが増すため深刻化している。建屋周辺に、一メートル間隔で配管を地表から三十~四十メートルの深さに埋め込み、超低温の液体を流して土を固めて壁とし、地下水をブロックする作戦だ。
だが、大規模に実施した実例はなく、技術の確立はこれから。完成に二年はかかるとみられ、その間にも汚染水は増える。
もう一つの目玉は、放射性物質を取り除く新型装置の導入だ。地上タンクには、原子炉を冷やした後、放射性セシウムが除去された計三十四万トンの処理水が貯蔵されている。この水に残る高濃度の放射性ストロンチウムなどを除去しておけば、再びタンクの水漏れが起きても、リスクは少なくできる。
ただ、新型の装置でも放射性トリチウムは除去できず、タンクにため続けるしかない。遮水壁が二年で完成して汚染水が増えなくなっても、そのころには貯蔵量は現在の二倍の七十万トンに達する。
ボルト締め型タンクを、耐久性のある溶接型に切り替える計画にしても、汚染水は一週間に三基分増える。そのスピード以上に増設し、かつ代替を進めるのは容易ではない。しかも増設用地も少なくなりつつある。
◆核燃料取り出し 世界に前例なし
実は政府が盛り込んだ計画は、近く開催地が決まる「二〇二〇年夏季五輪の東京招致を意識した」(海外メディア)側面があるとみられ、目先の対策にすぎない。その先に待ち受けるのは、原子炉内に溶け落ちた核燃料をどうするかだ。内側の圧力容器の底は抜け、制御棒などと交ざり合った核燃料は外側の格納容器に落ち、熱を持ち続けている。これを取り出した前例は世界的にもない。
ロボットなどの技術開発もうまくいき、核燃料の取り出しに成功したとしても、放射能がこびりついた原子炉や建屋の解体ごみをどうするのか、という問題が立ちふさがる。まだ白紙の状態だ。
さらには、建屋内の作業が増えれば被ばくのリスクも増える。
二〇一一年暮れ、政府が事故収束を宣言して以降、作業員たちの労働条件は悪化。現場を熟知するベテランが現場を去っている。廃炉まで三十~四十年かかると言われ、収束の担い手である作業員を本当に確保できるのか。安心して働ける環境づくりが求められる。
◆除染住民の安心遠く
そして忘れてはならないのは、いまだに約十五万人もの福島の人々が避難生活を強いられている点だ。
政府は一兆円を超える国費を投入して除染を進めているが、まだ安心して戻ってこられる状況にはない。
除染後に線量が再び上がったり、家の外側を除染しても屋内の線量はあまり下がらないといった事例もある。一般人の年間被ばく線量限度の一ミリシーベルト以下に抑えるのは難しい。
低線量被ばくの健康影響について専門家の意見が分かれる中、住民からは「危ないのかどうか、分からない」と困惑する声も上がっている。
【福島原発事故】
福島第一 消えぬ難題 政府汚染水対策決定
2013年9月4日
政府が三日、国費四百七十億円を投入し、東京電力福島第一原発の汚染水問題に積極的に取り組む方針を決めた。これまでの東電任せの姿勢をようやく転換することになる。ただし、福島第一が抱える数々の問題は、政府が打ち出した対策だけで片づくほど甘いものではない。(清水祐樹、志村彰太、岸本拓也)
政府が目玉とするのが凍土遮水壁だ。汚染水問題は、高濃度汚染水がたまる建屋地下に一日四百トンもの地下水が流れ込み、水かさが増すため深刻化している。建屋周辺に、一メートル間隔で配管を地表から三十~四十メートルの深さに埋め込み、超低温の液体を流して土を固めて壁とし、地下水をブロックする作戦だ。
だが、大規模に実施した実例はなく、技術の確立はこれから。完成に二年はかかるとみられ、その間にも汚染水は増える。
もう一つの目玉は、放射性物質を取り除く新型装置の導入だ。地上タンクには、原子炉を冷やした後、放射性セシウムが除去された計三十四万トンの処理水が貯蔵されている。この水に残る高濃度の放射性ストロンチウムなどを除去しておけば、再びタンクの水漏れが起きても、リスクは少なくできる。
ただ、新型の装置でも放射性トリチウムは除去できず、タンクにため続けるしかない。遮水壁が二年で完成して汚染水が増えなくなっても、そのころには貯蔵量は現在の二倍の七十万トンに達する。
ボルト締め型タンクを、耐久性のある溶接型に切り替える計画にしても、汚染水は一週間に三基分増える。そのスピード以上に増設し、かつ代替を進めるのは容易ではない。しかも増設用地も少なくなりつつある。
◆核燃料取り出し 世界に前例なし
実は政府が盛り込んだ計画は、近く開催地が決まる「二〇二〇年夏季五輪の東京招致を意識した」(海外メディア)側面があるとみられ、目先の対策にすぎない。その先に待ち受けるのは、原子炉内に溶け落ちた核燃料をどうするかだ。内側の圧力容器の底は抜け、制御棒などと交ざり合った核燃料は外側の格納容器に落ち、熱を持ち続けている。これを取り出した前例は世界的にもない。
ロボットなどの技術開発もうまくいき、核燃料の取り出しに成功したとしても、放射能がこびりついた原子炉や建屋の解体ごみをどうするのか、という問題が立ちふさがる。まだ白紙の状態だ。
さらには、建屋内の作業が増えれば被ばくのリスクも増える。
二〇一一年暮れ、政府が事故収束を宣言して以降、作業員たちの労働条件は悪化。現場を熟知するベテランが現場を去っている。廃炉まで三十~四十年かかると言われ、収束の担い手である作業員を本当に確保できるのか。安心して働ける環境づくりが求められる。
◆除染住民の安心遠く
そして忘れてはならないのは、いまだに約十五万人もの福島の人々が避難生活を強いられている点だ。
政府は一兆円を超える国費を投入して除染を進めているが、まだ安心して戻ってこられる状況にはない。
除染後に線量が再び上がったり、家の外側を除染しても屋内の線量はあまり下がらないといった事例もある。一般人の年間被ばく線量限度の一ミリシーベルト以下に抑えるのは難しい。
低線量被ばくの健康影響について専門家の意見が分かれる中、住民からは「危ないのかどうか、分からない」と困惑する声も上がっている。
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