弁護士任官どどいつ集

弁護士から裁判官になった竹内浩史のどどいつ集

不妊手術の 大法廷で「良心」問われる 最高裁

2024年05月29日 17時11分06秒 | 裁判

注目事件の最高裁大法廷の口頭弁論が丸一日をかけて開かれた。
旧優生保護法による不妊手術の被害者は、全員が手術から20年以上を経て提訴している。

しかし、最高裁は、平成元年、当時の民法が定めていた20年の期間は、時効よりも絶対的な効力があり、例外を認められない「除斥期間」であるという非情な判例を出してしまっている。
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52709
これは、その頃から続々と提起されていたいわゆる「戦後補償裁判」をシャットアウトしようと意図したものと見られる。戦後しばらく経ってからの国家的な人権侵害が国家賠償訴訟になるなどとは想定せずに作った判例だろう。

(写真)私の著書に掲載した講演でも、最高裁裁判官の「良心」が問われる代表的な事案だと触れた。
最高裁大法廷は、法律の規定の違憲判断ができるばかりではなく、判例を変更することもできる。言わばオールマイティーだ。その意味で下級審裁判官よりも直接的に「良心」が問われる。

間もなく衆議院選挙と同時に行われる最高裁裁判官の国民審査でも重要な判断要素となるだろう。
全国民が注視すべき判決である。


こんな「一休」判事はイヤだ!「橋のたもとで 通せんぼ」

2024年05月28日 08時59分11秒 | 裁判

私の著書の第1章にも掲載した母校講演の評判がいい。
皆さんが面白いとおっしゃるのは「一休さん」の有名とんち話を裁判に例えたくだり。
もし、この「一休さん」が、良心的裁判官ではなくヒラメ裁判官だったら、どういう展開になるか。
現実には、これに近い高裁裁判官、特に部総括が少なくないように見えてしまうのが残念だ。

(写真)講演YouTubeのQRコード。

尻切れになった講演の原稿完全版は著書で。


「ギャグを言っては いけない」かどうか? 民事訴訟法の 新論点

2024年05月27日 18時19分59秒 | 裁判

一昨日のブログ本文末尾のギャグ引用について、ふざけ過ぎだからやめた方が良いと忠告されてしまった。
https://www.shochikugeino.co.jp/

これはなかなか難しい問題で、私も和解期日の合間に、あるタレント弁護士に「テレビ見てますよ」と伝えたら「裁判官、お戯れはおよし下さい」と叱られた経験がある。

英米では裁判官が法廷でギャグを言う事は珍しくないようで、判決に暗号文を散りばめた裁判官がいたことはニュースにもなった。イギリスの裁判官たちのジョーク集まで出版されている(写真)。

日本にもダジャレ好きで有名な元裁判官・加藤新太郎弁護士がいる。
代表作は、
「釧路地裁判事は失言が多い。なーんでか?」
「それはね、釧路湿原があるから」

などという他愛もないものだ。

ブログや著書で好きなギャグを使っただけでも「裁判官の品位」を問題にされてしまうのだろうか。
岡口基一元裁判官に対する過酷な処分のきっかけになった白ブリーフ写真や緊縛写真への非難も、その延長線上にあるように思う。
実に堅苦しい世の中になった。


ベストテン入り 待つ「今週の スポットライト」は 私の本

2024年05月26日 14時03分07秒 | 裁判

私の本が本当に売れるかどうか、本番の勝負は今週だ。
正式な発売日は5月29日なので、 予約されたAmazonの配本や一般書店での販売もその前後からになると思われる。
現時点では出版社LABO関係等のごく一部の書店にしか並んでいない。
主に予約受付だけの段階にしては、売行きは絶好調とのこと。


「高裁が認めた 選手会強気」転載拒否した 報知に「喝!」

2024年05月25日 09時13分52秒 | 裁判

私の本で画竜点睛を欠いたのは、掲載しようとした新聞記事のうち一件、著作権を有する新聞社の許諾が得られず、掲載できなかったことだ。
日本プロ野球選手会の団体交渉権を認めた私たちの東京高裁決定の直後の「高裁が認めた」今日団交「選手会強気」スト決行かと大見出し(写真)を打たれた記事。決定が団体交渉を格段に進展させ、その後のストライキにつながった事がよく分かる記事だった。
なぜ、この記事だけ許諾が得られなかったのか。
あいにく、それは「スポーツ報知」の記事だったと言えば、理由は容易に推察できよう。
日本プロ野球選手会の古田敦也会長(当時)からの会談希望に対し、歴史に残る大失言をしたあの主筆に部下が忖度したのか、あるいはお伺いを立てられた本人が黒歴史に触れられたくないと拒否したのか。
「たかが選手が!」「バカ言っちゃいかんよ」

https://bunshun.jp/articles/-/11812?page=1


被告本人は「勾引」できぬ 錯覚していた ボクに「喝!」

2024年05月24日 21時06分18秒 | 裁判

私の本は、出版社であるLABOが経営している東京・弁護士会館の地下書店や大阪高裁一階の書店、それから私の出身会である愛知県弁護士会館一階の書店以外の、一般の本屋の店頭にはまだ並んでいないようである。
Amazonで注文しようとしたら「品切れ」だったという声を複数聞いた。そういう皆様は、改めて上記QRコードで試みていただきたい。たぶん、まだ予約はできると思う。

さて、誤記のお詫びの2件目。
85頁2行目の「出頭に応じなければ、勾引して強制すること」を「出頭に応じなければ反対事実を認定すること」に訂正させていただく。
民事訴訟法上、勾引は証人にしか認められていない。

弁解させていただければ、このような錯覚を起こした原因がある。
最近担当していた裁判で、勾引する直前まで行った事件があった。その対象人物はまさに不法行為を行った「張本人」であり、別に被告になっている裁判も係属していて他の裁判官が担当していたが、たまたま私が担当したその裁判では、形式的には原告でも被告でもない第三者であった。
こういうややこしい事案で錯覚をしがちである。お恥ずかしい。


熊本判事の 起案の苦悩 思い知ったか? 階猛

2024年05月23日 23時53分47秒 | 裁判

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240403/k10014411431000.html
私は、岡口裁判官弾劾裁判に皆勤した船田元(ふなだはじめ)裁判長と階猛(しなたけし)裁判長代理は、罷免に反対する少数意見だったのではないかと推測している。
もし、そうだとすると、判決を起案した弁護士でもある階猛裁判員は、袴田事件の原一審死刑判決を起案させられた熊本典道判事補と同様の苦しみを味わったであろう。判決理由の端々に「罷免」の結論と整合しない認定判断が登場するのも、その現れではなかろうか。
熊本裁判官が起案した死刑判決も、多数通の自白調書につき、検察官に対する1通を除いて全て証拠能力を否定して却下していたという。


「共同親権」殺到すれば 家裁と地裁は 共倒れ

2024年05月18日 15時29分43秒 | 裁判

見えづらい家庭内…DV、虐待見抜けるか
家裁の人員体制に課題(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20240517/k00/00m/040/262000c

現場の一審裁判官が心配しているのは、裁判官・調査官等の配置が元々手薄な家裁(本庁・支部・出張所)が、新たに認められた親権者変更申立事件でパンクしてしまうのではないかという事だ。
最高裁は、これまでも当然の予算要求をしようとしてこなかったので、とても心配だ。
もしも、さしたる増員もせず、地裁からのコンバートや兼務、家事調停官(弁護士の非常勤裁判官)で賄おうなどど考えているとしたら、過重負担に抗議しての退官がこれまで以上に増え、裁判所全体が崩壊の危機に瀕することになりかねない。

わしは知らんけど。


鹿児島から見りゃ「高裁」判事 本当は「宮崎 地裁」だが

2024年05月17日 21時53分17秒 | 裁判

昨日の問題の解答。
高裁の裁判官の一部は、実は地裁の裁判官である。
(写真)宮崎地裁の裁判官配置表(部分)
驚くべき人事配置だ。昨日の福岡高裁宮崎支部の裁判官配置表と見比べてほしい。

一審と二審が同じ裁判官というわけにはいかないので、宮崎地裁本庁の判決に対する控訴事件は福岡高裁宮崎支部専属の裁判官が担当し、鹿児島地裁など他の庁の判決に対する控訴事件は、宮崎地裁本庁の裁判官が高裁判事職務代行として担当しているという。
そこまでして、宮崎に配置する裁判官の人数を節約しなければならないのか。

私が任官した当時は「東京高裁判事職務代行」の東京地裁判事という辞令を受けた。当時は正式な東京高裁判事になるには18年の法曹経験が必要という内部基準があり、それは東京地裁の最も期が若い部総括よりも期が上でなければならないからと説明された。私は弁護士歴16年だったため、2年足りないとされた。
裁判所法上は、10年の判事補・弁護士経験で判事になれば高裁判事の資格があるのだから、そのような内部基準もおかしかった(ちなみに、私の任官の翌年に撤廃された。)と思うけれども、同じ裁判官が地裁と高裁を兼ねるのは、どう見てもおかしいだろう。
鹿児島の弁護士が黙っているのは、案外、宮崎の弁護士以外には、このような兼務をしている事に気づきにくいからかも知れない。


一審・二審が おんなじじゃかいよ 宮崎「どげんか せんといかん」

2024年05月16日 19時02分49秒 | 裁判

裁判所オンブズマンより出題。
(写真)これは福岡高裁宮崎支部の裁判官の配置表であり、上が民事部、下が刑事部。
(問題)この高裁支部特有の裁判官の配置上の問題点は何か。
(ヒント)宮崎地裁の裁判官の配置表を参照。
https://www.courts.go.jp/miyazaki/saiban/tanto/tiho/index.html


請求しなはれ 一億円を「一円置くのと 違いまっせぇ」

2024年05月16日 00時00分00秒 | 裁判

紀藤正樹弁護士、前澤友作氏のメタ社提訴の損害賠償請求額「1円」に見解

「残念。1億にしてほしかった」

https://news.yahoo.co.jp/articles/c6242c1363fb8445aca53cf701c2018ea227a63a

実は私も同じ事を考えていました。


さっそく訂正 オスプレイなら「15機」分の 裁判所

2024年05月15日 18時10分08秒 | 裁判

私の本が出版社に入荷したようで、いよいよ明日以降、順次配本される。
たまたま今朝の新聞で、オスプレイの相次ぐ墜落事故後の飛行再開の記事を読んでいて、気づいた誤記を訂正させていただく。

オスプレイの値段は約二千億円だと聞いた記憶だったので、そのように書いたが、現時点では、一機当たり約二百億円となっているようだ。
したがって、裁判所予算約三千億円は、オスプレイ「一機半」分ではなく「一五機」分という計算になる。

(参考)

17機を3600億円で買った自衛隊のオスプレイは大活躍してますか? (Yahoo!知恵袋)
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13271206593

いずれにせよ、裁判所の予算が、約八兆円に上る防衛予算に比べて、まさに「桁違い」に少ない事には変わりはない。

古来、論旨の大勢に影響のない些細な誤りを、まるで鬼の首を取ったように針小棒大に揚げ足取りの材料にして、全体を「捏造」だと攻撃する輩が絶えないので、早めに訂正させていただくことにした。

(写真)この頁の最後の一文を次のとおり訂正します。

(誤)約二千億 →(正)約二百億

(誤)1機半分 →(正)15機分


「事務官」トップに 指図をされる「裁判をしない 裁判官」

2024年05月12日 08時59分08秒 | 裁判

昨日の問題の正解は、
③ そもそも最高裁事務総長は裁判官ではないから。
(写真)裁判所法抜粋

あまり知られていないが、最高裁事務総局のトップである事務総長は、裁判官の身分を離れて裁判所事務官になるのが慣例である。
他方、その部下であり、合計数十人にも上る局長・課長・局付たちは、裁判官の身分を有し、辞令上は、裁判官経験年数によって東京高裁判事又は東京地裁判事若しくは判事補となっている。
ちなみに、各高裁の事務局長も裁判官(辞令上は各高裁判事)である。

要するに、裁判所事務官の高位ポストを軒並み裁判官が奪っていると言えなくもない。
というよりも、本来は事務官のやるべき仕事を、わざわざ裁判官の人数を割いてまで、司法官僚として差配しているというのが実情と言うべきだろう。

ところが、最高裁事務総局の「裁判をしない裁判官」の中には、現場の裁判官の上司であるかのように勘違いし、指示を飛ばし、会議を招集し、時には休廷させてまで最高裁に呼び集める者もいる。

私に言わせれば、裁判所組織内の「下克上」である。

新任判事補の採用難や中堅判事の中途退官の責任を取って、現場、特に地家裁支部の裁判官に戻ってもらうのが良いと思う。


分限・弾劾 心配無用 最高権力 事務総長

2024年05月11日 22時43分03秒 | 裁判

裁判所オンブズマンから出題。
最高裁事務総長は、仮に職務を甚だしく怠ったとしても裁判官弾劾裁判にかけられることは無く、裁判官分限裁判にかけられることも無い。
それは、なぜか(3択問題)。
①裁判官弾劾法及び裁判官分限法において、最高裁事務総長は適用除外とされているから。
②両法において「裁判をしない裁判官」は適用除外とされているから。
③そもそも最高裁事務総長は裁判官ではないから。


「地域手当」の 平均値とれば「特権的司法 官僚度」

2024年05月10日 18時33分22秒 | 裁判

私は約1年前に「官僚裁判官度数」の概念とその計算方法を提案した。
https://blog.goo.ne.jp/gootest32/e/c36f4e6306a7125d0ce5b0edbe42c5c7

今回は新たに、判事以上の裁判官の優遇度を測る「特権的司法官僚度数」の概念を提唱したい。これまで、やや抽象化しがちだった「特権的司法官僚」の定義を数値化する指標となると考える。

その計算方法としては、直近10年間(憲法上の裁判官の任期)ないし20年間程度(現行「地域手当」施行後の年数)の、当該裁判官に対する「地域手当」の支給率(1年又は2年の現給保障の特例を適用した後の率)の平均値を採る。

なお、現行の「地域手当」が適用される国家公務員である限り同様に、例えば、中央省庁の官僚については「特権的中央官僚度数」を計算することができる。

逆に、どのような異動をする中央官僚の利益になるように、現行「地域手当」の率が設定されているのか、炙り出すこともできるだろう。

(写真)計算例
例えば、直近20年間の任地がこのような場合は、その間ほぼ通じて、東京23区の20%の適用を受けている(2回の千葉市転出の各1年目(現給保障10割)を含む。)。千葉市の各2年目(上記20%の8割保障)で16%となったのは、高々2年間だけである。
したがって、次のように概算することができる。
(20%×18年+16%×2年)÷20年=19.6%
定義によれば、最大値は20%なので、この値は、純度98%の優遇度ということもできよう。