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【福島原発】"撤退はありえない"= 菅首相(当時)「撤退したら、日本はどうなるのか。東日本は終わりだ」福島第一原発 と官邸の15日間(5/8)

2016-09-03 22:11:02 | 福島、原発

「官邸や自分に不利なことも正直に話す」 寺田学・元首相補佐官が語る東日本大震災の15日間【5/8】

 
寺田学 Headshot
 衆議院議員、元内閣総理大臣補佐官
 
投稿日: 2016年09月03日 11時17分 JST 更新: 2016年09月03日 11時17分 JST
 
投稿日: 2016年09月03日 11時17分 JST 更新: 2016年09月03日 11時17分 JST
 

2011年3月11日。寺田学氏は、菅直人首相(当時)の下、首相補佐官として東日本大震災を経験した。突然、福島県に乗り込んだ菅・元首相。緊迫した状況で右往左往する政治家たち。「自分や官邸関係者には不利なこともありますが、それでも正直に記すことが被害に遭われた方や未来の方々への微かな誠意と思っております」と語る寺田氏の証言を8回にわたってハフポスト日本版でお届けします。(寺田氏が2013年に書いたものを加筆修正し、3月に公開したブログです。また本人が、事故調査委員会に証言した話に加え、聞かれなかった内容も含まれています。)

◇            ◇

 5】統合本部設置へ


14日夜。

爆発寸前だった二号機の圧力低下、注水再開で一時の安堵。しかし、根本的に解決には向かっていない。
総理応接室に原子力安全委員会や保安院、東電の関係者を集め、今後の推移を予測、議論。

保安院の安井氏から、
「今回は何とかピンチを切り抜けたが、これから同じような事が起き続ける。そして、いずれ、ベント弁が今度こそ開かなくなる時が来るだろう」。
「どれぐらい持つのか?」
「一、二ヶ月の間に、そんな時が来るかもしれない」。

同席した原子力安全委員会の班目委員長ら数人も同意見。

+++++++++++++++++++++++++++++++++

原子炉への対応サイクルは以下の通り。

核燃料の温度を下げるべく、冷却水を注ぐ

冷却水を浴びた核燃料から大量の水蒸気が発生する

その水蒸気が圧力容器内を満たし、圧力容器内の圧力が上昇

圧力容器内部の圧力が高いため、外部から冷却水が入らない。

圧力が下げる為にベントを行う。

圧力が下がって、再び冷却水を入れる。
以上の繰り返し。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「これの循環が続くなか、ある時、本当にベント弁が開かなくなったらどうするか」。
「殺人的な線量となった場合、または爆発した場合、以後の対応は」等々。

一同、重い将来の現実を目の当たりにする。そして、その瞬間は、遅かれ早かれいずれ訪れるとの予測。「それと」と、保安院の安井氏が話す。

「東電が現場から撤退するとかしないとか話がありましたが、私たち(技術者・役人)が判断するのは、あくまでも原発の構造と今後の推移です。東電が撤退するしないは、政治側で決めて下さい」。
「わかってます」政務の誰かが答えた。

さきほど東電からあった撤退の申し出を断る事は当然として、それでも今後起こりうる深刻な事態に対して、政治的にどう判断するか、それが迫られていた。判断というよりも、決断。いわば「現場で働いている方の命が極めて危険な状態になることを承知の上で、原発事故を収束させる為に働いてもらうこと」が迫られる。大勢の国民生活を守る為に、少数の国民に犠牲を強いることに他ならない。

「現在の状況を踏まえ、総理にご判断頂くべきだ」と福山副長官。

「ならば」と、全関係者を招いて会議を開く事とした。判断は一つしか無い。が、それが余りにも重い。総理にその最後の決断をしてもらわねばならない。日々徹夜で対応に追われている私たちは、心のどこかで「いつかは爆発してダメになるのか。。。」そんな不安を抱えていた。それほど、疲労が心を弱めていた。

その後、この会議は「御前会議」と呼ばれるようになった。臨時の原発対応室となっていた総理応接室を片付ける。テーブルの上は原子炉の状態を示すデータ書類が山積み、タバコの吸い殻、ウーロン茶の缶、食べ物で散乱していた。すべて綺麗にした。綺麗になった机の上に、緩い缶コーヒーとウーロン茶を並べた。臨時の椅子を増やす。

海江田大臣が突如「みんなと写真とってなかったな、撮ろうか」と提案。

一同戸惑う。綺麗になった総理応接室で、その場にいた班目委員長らと並んで写真を撮る。「なんでこんな時に。。。。気でも触れたのかな」と不安になった。関係する大臣らに招集をかける。御前会議が開かれるまでの間、数人で総理執務室で総理を囲む。総理、長官、福山副長官、細野補佐官、伊藤内閣危機管理監、そして私。東電から撤退の申し出があったことを総理に報告。

総理から「撤退するって、それじゃあ原発はどうするんだ」と一喝。

「自分たちでコントロール出来ないから、他国に処理をお願いするなんてことになったら、日本はもう国としての体をなしてない」。
現場の吉田所長に電話する。
総理から「撤退との話があるが、まだ出来るか?」
吉田所長「まだ出来ます」。

続々と御前会議招集メンバーが総理応接室に集まってきた。会議定刻。総理、正副官房長官、総理補佐官、経産大臣、防災担当大臣、危機管理監、原子力安全委員長、保安院幹部ら十数人。

官房長官から説明「現状、原発の状況が相当深刻な状態にある。それに加え、東電から現場を撤退したいとの申し出もあった。官邸側として撤退は認めていないものの、これから一層事態が深刻化した場合、どのような判断をとるか決めていきたい」。

普段饒舌な長官だが、珍しく導入が下手な気がした。なかば撤退を将来的に認めるかのような導入だった。一瞬の沈黙の後、総理が強い口調で発言。

「撤退なんてあり得ないんだ!撤退を認めたらこの国はどうなるんだ!」
「そうだろう!」と原子力安全委員長を指差した。「どうなんだ!」

明らかに威圧的な聞き方だった。

委員長「撤退はありません」。
総理「お前はどうなんだ!」と今度は委員長代理に。
代理「ありません」。
総理「お前は!」と保安院安井氏に指は移った。
安井氏「ありません」

先刻、安井氏から言われた言葉を思い出した。
「東電が現場から撤退するとかしないとか話がありましたが、私たち(技術者・役人)が判断するのは、あくまでも原発の構造と今後の推移であって、東電が撤退するしないは、政治側で決めて下さい。」

まさしく、それを強要している場面だった。隣の細野補佐官に小声で話す。
「これはまずいんじゃないですか。政治で決める事でしょう」。
細野「この雰囲気じゃ、、、、何も言えない。。。」
総理の意見に反対ではなかったが、先刻の安井氏からの真っ当な意見に基づいて口を挟んだ。
「総理の勢いに構わず、技術的なご意見で結構です」。

一瞬、戸惑いが見られたが、総理の勢い変わらず。結局、聞かれた全員が「撤退はありえない」との答え。
総理から「そうだろう」と満足した様子。
続けて「今から東電に行って、政府と東電の統合対策本部を作る」。

一つの方向性が決められた。撤退の意思を持つ東電に直接に乗り込んで抑え、統合本部結成により滞っている情報共有含め諸問題を改善したいとの意図。それに際して、一点疑問が浮かんだ。(例え撤退が阻止されたとしても、今後、原発の線量が一層高くなり、作業員が自発的に逃避する事態になったら、どのような権限で、それを食い止めるのか。そもそも、総理が民間企業に深刻な命令を下すことは出来るのか)。

そこで、「統合本部を作って撤退を食い止めるとして、その権限の法的根拠はどこにあるのでしょうか」と発言した。

すると、長官から「そんな法律云々は、いま関係ないんだよ!!」と怒鳴られる。(むしろあなたが考える立場だろう。。)と悔しくなる。

「東電の清水社長を官邸に呼べ」。

その指示をもって、いわゆる御前会議は終了。長官ら一部が、総理執務室に移動。その場で改めて総理から
「これで東電が投げ出したら、全ての原発がダメになる。福島第一だけじゃなく、第二も、それ以外の原発も。それは東日本全部がダメになるってことだ。」

「そうなったら国の体をなしてない。そんな日本だったら、他国から管理される結末になる」
「東電に統合本部を作る、統合本部の本部長は私、事務局長は細野君」。

一通り、総理の想いと指示を受け止める。再び、私から「統合本部の法的根拠と指示権限をはっきりさせたほうがいいのではないでしょうか」と問いかける。

再度、官房長官から「だから、いまそんなことはいいんだよ!!」と怒鳴られる。

よく怒鳴られる日。それでも、社長でもない総理が、東電社員に指示を下すことができるのか、法的に整理はしとくのは当然と思った。向かいに座る滝野官房副長官の後ろにまわり、耳元で「長官はあぁ言われましたが、副長官のところで早急に検討しておいて下さい」とお願いした。東電の撤退要請を受け、政府と東電の統合本部を作る事を決定。清水東電社長を官邸に呼ぶ。東電の清水社長が到着したとの一報。「私が迎えに行ってきます」と立ち上がった。

総理執務室を出ると、扉の前には既に清水社長と従者2人。
「社長お一人で入られますか?それとも全員で入られますか?」
清水社長「私一人で参ります」。
清水社長と共に総理執務室に入室。総理の斜め前に座ってもらう。

総理「まず、撤退はありえない」。

すると、意外なほどあっさりと「はい。。。」と清水社長が答えた。
撤退要請の電話を受けていた長官や経産大臣は意外な表情。関係者一同も首をかしげた。
総理から「これから政府と東電の統合対策本部を作る。本部長は私。事務局長に細野君。直ちに東電に行くから、準備するように。どれぐらい準備に必要か?」

これには清水社長も驚いた様子だった。清水社長「二時間ぐらいあれば。。。。」
総理「そんな悠長な時間はない!!」
清水社長「・・・・・・・」
総理「一時間で用意して下さい。細野君を同行させます」
清水社長「はい。。。」

短い会議が終了。席を立ちかけた清水社長に私から一問。
「統合本部設置に東電は同意したという事でいいですね?」
清水社長「はい。結構です。」

今後の為に、双方の同意である事を確認しておきたかった。総理が命令を直接下す立場になる以上、しっかり同意してもらいたいと。清水社長が帰った後、急いで準備に取りかかる。秘書官室に戻り「集合して下さい」と秘書官達に声を張り上げた。

「これから政府と東電の統合本部が設置されます。それに伴い、まもなく総理が東電へ向かいます。以下二点、作業お願いします。一点目、統合本部の法的位置づけを詰めてください。二点目、総理出発時に玄関でぶら下がり取材を行います。その段取りと、その際の発言案を用意してください。 以上」
直ちに各秘書官が作業に取りかかる。本当に優秀なスタッフ。

岡本政務秘書官から呼び止められる。「総理からいま呼ばれまして『東電の職員が逃げ出し始め、原子炉が最悪の事態になったら、もう一度私が現地に再度行く可能性がある、準備せよ』と。どうしましょう?」重い相談を持ちかけられる。聞いた私も、問いかけた岡本秘書官も、現実化したときのことを想像してゾッとした。作業員が逃げ出すような現場に行くってことは、間違いなく死ぬじゃないか。メルトダウンだらけの原発事故現場に行くのか。。。。。しかも決死隊の一人として。

「とりあえず、輸送ヘリのスーパービューマの状況確認だけしておきましょう」と返答。
防衛省出身の秘書官にヘリの運航状況のチェックを命じる。それと共に岡本秘書官に「東電までの道中、総理と同乗させてくれ」と頼む。東電に着く前に、熱くなっている総理にクールダウンしてもらおうと思った。

東電行きの準備は進められているが、突然の訪問ゆえ、官邸側の準備も大わらわだった。通常の総理専用車が点検にまわっていて使えない。急遽予備の専用車を用意。運転手も深夜だったので就寝中。急いで起きて準備してもらう。警察も東電までのルート確認、警備、事前チェックにてんてこ舞い。連日の徹夜でシャツにサンダルというスタイルだった私も、久しぶりにジャケットとネクタイをしめ、革靴を履く。

準備が整い、総理執務室を出る。階下のエントランスホールで記者たちへの取材。簡単に済ませて車に乗り込む。久しぶりに私も総理車に同乗。車中、総理は意外なほど落ち着いていた。官邸から東電は驚く程近い。信号が青なら5分程度。

急いで総理にご進言。「先刻、岡本秘書官にご指示あった原発行きのヘリは現在手配確認中です」
総理「うん」
「一点、僭越ながらお話ししたいのですが」
総理「いいよ」

「ご指示の通り、事態が一層深刻化した場合に、総理が再度福島原発入りできるよう準備はしておきます。ただ、いざ決死の覚悟で超高線量の現地に行く事は、同行する私も含め、多くの秘書官、警備の警護官には相当の心の準備が必要になると思います。12日の現地入りでさえ、表には出しませんが多くの同行者は心の底で恐怖感を持っておりました。今後、総理ご自身が再度現地入りを決行される場合は、そのような想いの多くの若手が含まれる事をご留意ください。高線量被爆で死ぬ可能性が必至の場合は、総理お一人で向かって頂くことになりかねません」。

決断に従う立場の私が、このような進言をすることに躊躇はあったが、私以外に総理に伝えられるものはいなかったから、全く余計なことではあったが、総理にお伝えした。

自分の弱さが如実にでた瞬間だった。やはり、まだ死にたくない、将来子供を授かりたいとの想いが、いざ死の覚悟を迫られた時に出てきたのだと思う。それと、進言出来ない秘書官や若い警護官の気持ちを代弁したいとの想いもあった。

総理は「そうか〜、 やっぱり怖いかな〜」と意外とケロっとしていた。
そして「俺はもう歳だからな。余り怖くないんだよ。若い人にはやっぱり恐怖感あるかもな」と、少し微笑みながら話していた

官邸に清水東電社長を呼び、政府と東電の統合本部を設置する事が決まる。官邸から五分の東電本店へ急行。急遽決まった総理東電行きにもかかわらず、東電本店玄関口には多くのマスコミが。ライトとフラッシュの中、車は地下駐車場へ。そこから本店内の対策本部へ早足で進む。

対策本部に到着。馬蹄形のテーブルに社長をはじめ東電幹部。その向かいの長テーブルに総理らが座る。私は総理の斜め後ろ、福山副長官の後ろに座る。東電の職員が「広報班」等書かれたビブス(メッシュのランニング)を着て走り回っている。廊下では談笑している人もいた。
細野補佐官から「総理からお話があります」と仕切り。

ここで総理が話した内容に関しては、既報の通り。私の記憶の断片は以下。

「撤退は許されない」
「撤退したら、日本はどうなるのか。東日本は終わりだ」
「自国の原発事故を、自ら放棄する事は、国として成り立たない。そんな国は他国に侵略される。」
「撤退しても、東電は潰れる。だからやるしかないんだ」。
「60歳以上の職員は全員現地に行く覚悟でやれ。俺も行く」。

このような内容を怒鳴るように話していた。車では落ち着いていたのに、結局、幹部を前に激高してしまったようだった。話も繰り返されるようになり、長めに。後ろを振り向くと、各現場とオンラインで繋がっているテレビシステムがあり、その画面の中で各現場は作業を停めて総理の話を聞いていた。(これじゃ作業の妨げになる)そう思って前に座っている福山副長官にメモを渡す。

「長過ぎます。話を止めることは出来ませんか」。
副長官の表情は困難を示していた。総理と、怒鳴り演説を聞く幹部、職員、作業員との温度差は深刻だった。総理の話が終わり、総理が振り返る。

「俺に誰が説明するんだ!!??」と叫ぶ。
「こんなデカい部屋じゃ何も決められない!!」。

異様な雰囲気。東電幹部、職員が唖然とする。対策本部の大部屋の廊下向かいの小部屋に移る。ここの壁にも現場とオンラインで繋がったテレビ会議システム。福島第一原発の内部が手に取るようにわかる。ボタン一つで、吉田所長と話が出来る。(官邸にいた今まではなんだったんだ。。。。こんなシステムがあるのなら、さっきの注水開始だって本店が知らないわけないじゃないか)

小部屋には、政府側は総理、経産大臣、福山副長官、細野補佐官、班目委員長、保安院安井氏、そして、総理秘書官ら数名。東電側は勝俣会長、武藤副社長、後ほど東芝らメーカーの人も加わっていた。清水社長はウロウロ。勝俣会長に、初めて会う。非常に小柄だが、清水社長とは比べ物にならない存在感。周りの対応も清水社長とは違うようだった。

政府用に小部屋をもう一つ用意してもらった。そこは電波の通りが悪く、官邸残留組との連絡が滞る。政府首脳が乗り込んだこともあって、至極居心地が悪い。総理のいる小部屋では勝俣会長と武藤副社長による現状説明と、今後の予測が話されていた。しばらくすると段々人が減っていく。総理がうたた寝をし始めた。さすがにみっともないので突いて起きてもらう。(もう体力的にも限界か。大きな判断が続き疲れているのだろう)。怒り気味の人が話しかけてきた。

「寺田さん、酷いじゃないですか。官邸に置いてくのは!!」

突然怒られる。誰だろ?と戸惑ったが、官邸に清水社長と一緒に来た従者の方。清水社長が一人で総理執務室に入室したもんで、小部屋で待機してもらっていたのだ。清水社長は、その従者を小部屋に迎えに行く事無く、細野補佐官と東電本店に戻ってしまっていたようだ。(置いてったのは清水社長だろ)

【ご了承ください(寺田学)】
主観的な修正はせず、余分な事であっても備忘録の意義も込めて記憶のまま吐き出し、淡々と書きたいと思います。そこには、私の弱さが、そして当時の官邸の善悪諸々が混在していると思います。それが被災された皆様に失礼になるような記述もあるかもしれません。何卒ご容赦ください。

また、記憶をもとに書き記すため、事実として誤った部分があるかもしれません。それを事実を調べながら書くには、個人的に難しいのでご容赦ください。単なる記憶違いは後ほど訂正します。

また、出来る限り実名で書きます。記憶が定かではない場合等は匿名にします。
カギカッコも記憶のママ、書きます。多少の言葉遣いの違いはあるかもしれません。
以上の事、ご了承ください。

(2016年3月11日「寺田学のオフィシャルウェブサイト マナブドットジェーピー [ Manabu.jp ]」より転載)

(続編は近日公開予定)

【1】3月11日(2016年8月30日掲載済)

【2】重要免震棟へ(2016年8月31日掲載済)

【3】福島原発、爆発(2016年9月1日掲載済)

【4】東電、撤退用意(2016年9月2日掲載済)

【6】首都圏に放射性物質

【7】反転攻勢

【8】最悪のシナリオ等

*********************** 

 

【 【5年前の記憶の全て】 】寺田学のオフィシャルウェブサイト マナブドット ...

 

 

 

 

 


<天木直人のブログ>今の大手新聞は、みな安倍首相に対して「王様は裸だ」と言えない状態に金縛り/「領土」めぐり思惑交錯〔東京新聞2016.9.3〕

2016-09-03 21:04:27 | 報道

天木直人の公式ブログhttp://xn--gmq27weklgmp.com/2016/09/03/post-5315/

「王様は裸だ」と言えない大手新聞


2016年9月3日  天木 直人

 今の大手新聞は、みな安倍首相に対して「王様は裸だ」と言えない状態に金縛りだ。

...

 「王様は裸だ」という言葉を「アベノミクスは失敗に終わった」という言葉に置き換えてみたらいい。

 「王様は裸だ」という言葉を「原発アンダーコントロールは大嘘だ」と言う言葉に置き換えてみたらいい。

 「王様は裸だ」と言う言葉を「拉致問題の解決は安倍政権では無理だ」という言葉に置き換えてみたらいい。

 「王様は裸だ」という言葉を「慰安婦問題の不可逆合意はいかさまだ」という言葉に置き換えてみたらいい。

 「王様は裸だ」という言葉を「安倍首相と習近平の日中関係は改善不可能だ」という言葉に置き換えてみたらいい。

 誰もがその通りだと思っている事が書けないのだ。

 そして、今度は安倍首相の訪ロである。

 安倍首相が訪ロしてプーチン大統領と会談した。

 しかし、この訪ロがほとんど成果のないパフォーマンスであることは、識者は皆知っている。

 いや、外交に素人の国民でもわかる。

 ところが大手新聞はどう報じたか。

 すべての新聞がきょうの一面トップでこう書いている。

 「プーチン氏来日合意 首相、領土問題に『手応え』」(読売)
 「領土問題 交渉加速を確認 日ロ首脳11月にも会談」(朝日)
 「日露首脳年内2回会談 首相 領土問題に強い意欲」(毎日)
 「首相『領土発展へ手応え』 プーチン氏来日12月15日会談」(日経)
 「首相『領土交渉に道筋』、日露11月に再会談」(産経)

 これら一面トップの見出しはすべて首相官邸の言葉の垂れ流しだ。

 王様は裸である事を知っていながらそうは書けないのだ。

 真実を隠す大手新聞がこの国のメディアをリードし、国民に本当の事を教えないのだから、日本の政治が良くなるはずがない。

 そんな大手新聞の中でただ一つ、安倍首相の今度の訪ロを一面で無視した新聞がある。

 外報面で取り上げ、安倍首相とプーチン大統領の思惑のすれ違いを書いた新聞がある。

 それは東京新聞だ。

 そこにかすかな救いを見る(了)


*******************

東京新聞 TOKYO Webhttp://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201609/CK2016090302000118.html

日ロ会談、山口で12月15日 「領土」めぐり思惑交錯

2日、ロシア・ウラジオストクでの会談で握手する安倍首相とロシアのプーチン大統領=共同

写真

 【ウラジオストク=栗田晃】安倍晋三首相は二日、ロシア極東のウラジオストクで、プーチン大統領と会談した。両首脳はプーチン氏が十二月十五日に訪日し、首相の地元山口県長門市で首脳会談を行うことで合意した。

 プーチン氏訪日は大統領としては二〇〇五年十一月以来、十一年ぶりとなる。首相は地元に招く理由を「ゆっくり静かな雰囲気の中で、平和条約交渉を加速させたい」と記者団に述べた。訪日に先立ち、十一月のペルーでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議でも会談を行う。

 日本側は五月に行われたロシア・ソチでの前回会談で、北方領土問題が障壁となり停滞が続く平和条約締結交渉について「新たなアプローチ」を提案。

 今回、会談途中の五十五分間、通訳だけを残し、プーチン氏と一対一で話し合った首相は「二人だけでかなり突っ込んだ議論を行うことができた」と指摘。さらに「新たなアプローチに基づく交渉を具体的に進めていく道筋が見えてきた」と振り返った。

 前回会談では、極東の産業振興やエネルギー開発など八項目の経済協力案を提示。その後、ロシア側からも四十九の共同プロジェクトリストが示され、今回は具体化に向けて協議した。

 プーチン氏は会談冒頭のあいさつで「ソチでの提案を真面目に検討している」と述べ、首相は「ロシア極東地域は格好の共同作業の場。日ロ協力を強力に推し進めていきたい」と応じた。会談は夕食会を合わせて約三時間行われた。

◆首相、進展へ足掛かり プーチン氏、G7へ揺さぶり

 十二月に実現することになったロシアのプーチン大統領の訪日。安倍晋三首相の北方領土問題の進展への強い意気込みと、欧米の包囲網を切り崩し、日本からの経済協力を得たいロシア側の意向が一致したことが背景にある。

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■不透明

 プーチン氏の訪日は、北方領土交渉を巡り日ロ間で合意した「新たなアプローチ」の成果が問われる場となる。首相はロシア極東での経済協力を加速して問題の前進につなげたい考えだが、功を奏するかは見通せない。

 首相は五月のプーチン氏との会談で、北方領土問題で「新たなアプローチ」で交渉を進めることを提案。極東の産業振興など八項目で協力を進めることを提示した。今回の訪ロ直前の一日には、ロシア経済分野協力担当相を新設し、経済協力の本気度を示した。

 日本と旧ソ連は国交回復を定めた一九五六年の日ソ共同宣言で平和条約締結後の歯舞、色丹二島の引き渡しを明記。プーチン氏が共同宣言の有効性を認めていることから、首相は経済協力をさらに進めることで、領土問題進展に向けた足掛かりとしたい考えだ。

 しかし、日本はこれまでも、領土交渉と経済協力を並行して推進してきたが、領土問題は停滞が続いてきた。首相は引き続き、プーチン氏との会談を重ねて信頼関係を深めたい考えだが、日本政府内にも「プーチン氏を動かしても、ロシア大衆の合意がないと難しい」と悲観論が根強い。 (関口克己)

■けん制

 先進七カ国(G7)の一角である日本へのプーチン氏の訪問は、日本から経済協力を引き出すとともに、ウクライナ危機を巡り対ロシア制裁で足並みをそろえるG7に揺さぶりをかける思惑がありそうだ。

 訪日は当初、二〇一四年中を目指したが、ウクライナ危機で先延ばしになってきた。先月三十日、ロシア側が訪日を一方的に明らかにしたのも、日ロの接近に懸念を示してきた米国へのけん制とみられている。

 プロジェクトが具体化してきた経済協力も、立ち遅れてきた極東開発に寄与するだけに、ロシアにとってメリットは大きい。

 ただ、北方四島をロシアは「第二次世界大戦の結果、正当に手に入れた」との立場を依然として崩していない。プーチン氏も、二日に報じられた米通信社とのインタビューで、経済協力を得られても「領土で取引はしない」と明言した。

 一方で、プーチン氏は〇四年に国境を画定させた中国との領土紛争を踏まえ、「同じように両国間の信頼関係が高まれば、妥協できるかもしれない」とも述べた。経済協力先行であれば、その先もあり得るとの示唆には交渉で優位に立とうとする姿勢がにじむ。 (ウラジオストク・栗田晃)

 

 <関連>

 外国人記者は、なぜ東京新聞を「ダントツ信頼できるメディア ... - 現代ビジネス

 

 

 


【ご案内】「憲法フェス」by 山本太郎×三宅洋平:9/9 東京 9/10名古屋 9/11大阪…小林 節、小西 ひろゆきも出演

2016-09-03 18:20:12 | 憲法

「憲法フェス 東京」by 山本太郎×三宅洋平
 ~9/9 東京 9/10名古屋 9/11大阪…小林 節(憲法学者)、小西 ひろゆき(民進党)も出演

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
2016年夏の参院選、東京選挙区で旋風を巻き起こした山本太郎×三宅洋平コンビが、今度は「憲法」を語ります!

日本国憲法の成り立ちや現在、世界との比較、そして可能性が濃厚になってきた憲法改正に向けて今私たちが学ぶべきこと、すべきことは何なのか!?政治家、有識者や、各界のアーティストなど豪華ゲストをお呼びしながら、音楽と共に憲法を学ぶ「憲法フェス」東京〜名古屋〜大阪の3Days。始まります!

各日程ともに街頭演説→屋内イベントという2部制になっております。ぜひ大事なご友人・ご家族をお誘い合わせの上、足をお運びください!運営スタッフも憲法について目下勉強中です。一緒に学びましょう。そして多くの方に伝えて頂けたら幸いです。


【第一部】街頭演説

時間:16:00〜18:00
場所:新宿小田急西口駅前
...
<出演>
山本 太郎(参議院議員・生活の党と山本太郎となかまたち)
三宅 洋平(音楽家・政治団体 NAU 代表)
Cro-magnon(Jazzy Sport)


【第二部】The Party

時間:19:00〜23:00
場所:代官山UNIT
   http://www.unit-tokyo.com/map/
   https://goo.gl/maps/YeudK5qhEp12 (Google Map)
   代官山駅より徒歩2分
入場料:500円(+1Drink 別)
※予約制ではありませんので満員の場合は入場をお断りすることもございます。予めご了承くださいませ。

<出演>
山本 太郎
三宅 洋平
小林 節(憲法学者)
小西 ひろゆき(参議院議員・民進党)
DELI(NITRO MICROPHONE UNDERGROUND・松戸市議)


【憲法改正って?】

参議員選挙の結果、憲法改正を目指す勢力が衆参両院の2/3議席以上を占めることになりました。改正発議の要件が満たされた今、憲法改正への動きが本格化し、近い将来「国民投票」によって私たちはその判断を迫られるかもしれません。

ところで、そもそも「憲法」とは?
「法律」とどこが違うのでしょうか?

法律とは、社会秩序を維持するために私たち国民が守るべきルールです。それに対して憲法というのは、時の権力が暴走しないように歯止めをかけるためのルールとしての役割を持ちます。しかし国のリーダーも1人の人間、判断を誤ることがある。それを防ぐためのセーフティネットとなるのが憲法です。つまり憲法は権力者たちの暴挙から国民を守るためにあるのです。少し極端な表現かもしれませんが、そのように捉えると分かりやすい。

ところが自民党の掲げる「憲法改正草案」では、現憲法の「日本国民は」から始まる前文を「日本国は」に変更しています。これまでの「国民」が主体となる憲法ではなく、「国」が主体となり、国民を縛る憲法に変えていくことを、前文の最初に宣言してしまっているとも言えます。


自民党による日本国憲法改正草案(2012年4月案)
http://constitution.jimin.jp/draft/

その他にも、改正草案には以下のような記述が見られます

1.「緊急事態条項」の追加(第九十八条)
緊急事態が起きた時に内閣は法律と同様の政令を発令でき、財政支出と地方自治体への指示権を持つことができる。緊急事態下では「三権分立」「基本的人権」等の原則が一時無効化され、内閣総理大臣にある種の独裁権限が与えられます。しかし肝心の「緊急事態とは何か?」については明確な定義が示されていないのです。

2.「個人の尊厳」の削除(第十三条)
現行憲法「すべて国民は、個人として尊重される。」→ 改正案「全て国民は、人として尊重される。」たった1字の違いですが、「個人」から「人」への変更は、それぞれ個別の性格や特徴を持った人間としての尊厳が失われ、自由な生き方を制限されるものにならないのでしょうか?このような小さな表記の変更に、自民党が目指す国と国民の関係性が垣間見えてきます。

3.「国防軍」を規定(第九条二項)
自衛隊を国防軍として軍隊化させると明記しています。草案の解説として用意された「改正草案Q&A」でも「独立国家が、その独立と平和を保ち、国民の安全を確保するため軍隊を保有することは、現代の世界では常識です。」とその正当性を掲げました。


自民党による日本国憲法改正草案Q&A(増補版)
http://constitution.jimin.jp/faq/

憲法改正によって、現政権が暴走してすぐに戦争が始まるわけではないかもしれません。しかし、将来的に改正憲法を盾にそれが実現されないとは言い切れないのです。「戦争を始めることができる」ように書かれているのがこの草案の怖さ。だから憲法学者をはじめさまざまな国を想う人たちが警鐘を鳴らしているのです。このままではヤバいぞ、と。

これからの将来、そして家族や子供たちの未来のために、この大事なルール作りに参加しませんか?「知らなかった」では済まされない課題が今目の前にあります。自ら学び、対話をし、多くの人に伝えていきましょう!憲法フェスは皆さんと一緒に作っていくムーブメントです!ご参加お待ちしております。


【憲法フェス 3Days日程】

9月9日(金) 東京
https://www.facebook.com/events/100210887103321/

9月10日(土) 名古屋
https://www.facebook.com/events/294068597621765/

9月11日(日) 大阪
https://www.facebook.com/events/318002751869645/

 

 

 


【声明】「政府外務省が原告の入国ビザ発給を拒否!法廷での尋問期日妨害を許さない」2016.9.2〔安倍参拝違憲訴訟弁護団 安倍靖国参拝違憲訴訟の会・東京〕

2016-09-03 18:19:49 | ヤスクニ 靖国神社 慰霊 

【声明】政府外務省が原告の入国ビザ発給を拒否!法廷での尋問期日妨害を許さない

2016年9月2日

安倍参拝違憲訴訟弁護団 
安倍靖国参拝違憲訴訟の会・東京


 2013年12月26日に強行された、安倍首相の靖国神社参拝に対して、私たちは633人の原告団と15人の弁護団をもって東京地裁に提訴し、国・安倍晋三・靖国神社を被告とする裁判を闘っています。
 
 これまで8回にわたる口頭弁論が重ねられ、次回(第9回・9月5日)および次々回(第10回・9月12日)の期日においては、原告本人尋問が行なわれることになっています。

 ところが、9月1日になって、12日に尋問が予定されていた中国人原告・胡鼎陽さんにたいして、日本の外務省がビザの発給を拒否し、その結果、原告本人が来日し尋問をうけることが不可能になったことが判明しました。私たち、靖国訴訟を闘う原告・支援者および代理人一同は、このことに対して強い怒りと抗議を表明するものです。

 今回の訴訟では、中国大陸だけでなく、韓国、ドイツ、香港、台湾、カナダ、オーストラリアなど、多数の海外在住者が原告となっています。安倍首相の参拝行為が、明白な政教分離違反であるだけでなく、アジアと世界の人びとの平和を求める権利をも侵害する、戦争準備行為で あるからにほかなりません。

 胡さんは、自身、日本軍の731部隊による細菌戦によって家族を亡くした戦争被害者遺族であると同時に、細菌戦の実態に対する聞き取り調査などをおこなってきた人でもあります。昨年11月に行なわれた国際シンポジウムにおいても、731部隊の細菌戦に関する証言をおこなうために来日を予定していた参加者が、ビザの発給拒否に よって参加できなくなった事件がありました。今回外務省は、裁判をも妨害するという暴挙に出ていながら、ビザ発給拒否の理由を明確に述べていませんが、外務省にとって、日本の侵略の実態を明らかにし、戦争責任を問いなおす行為は忌避されるべきことであって、「日本国に害を及 ぼす行為」であるとみなしているとしか考えられません。

 それが侵略戦争を真摯に反省し、そのうえに立ってアジアの平和を構築していく方向性と真逆にあることは明らかです。それと同時に私たちは、今回の外務省の行為が、現在司法の場で審理されている訴訟において、原告本人が法廷において直接証言し、尋問を受ける機会と権利と を、直接的に妨害し奪い去ったものであることを、強調しなければなりません。外務省を含む日本国は本件訴訟の被告でもあり、その意味では当事者でもあります。行政の恣意的で不当な行為によって、司法が侵害されたことを、けっして許してはなりません。

 私たちは外務省の不当な行為に抗議するとともに、裁判所に対しても事態の重大性を直視し、行政の介入をはねのけて正当な審理を尽くすよう、重ねて要求します。

 

<参考> 

 

 

 

 

 


【社説】今、憲法を考える(4)源流は自由民権運動 /(5)修正重ね、自らの手に〔東京新聞 2016.9.1、9.2〕

2016-09-03 18:14:21 | 憲法

東京新聞 TOKYO Web

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016090102000129.htmlより転載

【社説】今、憲法を考える(4) 源流は自由民権運動

 今年で公布七十年を迎える日本国憲法。改正を目指す「改憲」論者は、占領軍によって押し付けられた憲法であることを、改正を必要とする根拠に挙げるが、本当に押し付けだったのだろうか。

 敗戦から二カ月後の一九四五年十月十五日発行の「東京新聞」(現在は本社が発行)一面トップに「憲法改正」と題する評論記事が掲載された。筆者は鈴木安蔵氏。後に静岡大や愛知大などで教授を務めた憲法研究者だ。

 三日連続で掲載された評論記事で、鈴木氏は「日本国家の民主主義的建設」や「日本民族のより高次な発展」のためには大日本帝国憲法を全面的に改正する必要があり、改正の意見が「広く国民の間から、溌剌(はつらつ)として」展開されることが望ましいと主張している。

 この連載からほどなく、鈴木氏は元東京帝大教授の高野岩三郎氏の呼びかけで民間の憲法制定研究団体「憲法研究会」に参加する。

 研究会には早稲田大教授の杉森孝次郎、社会学者の森戸辰男両氏のほか、馬場恒吾、室伏高信、岩淵辰雄各氏ら当時の日本を代表する言論人も名を連ねていた。

 憲法研究会は二カ月間にわたって議論を重ね、四五年十二月二十六日、憲法草案要綱を発表した。政府の憲法調査会の改正草案よりも一カ月以上早く、新聞各紙が一面トップなどで大きく報じた。

 「統治権は国民より発す」と国民主権を明示し、天皇に関しては「国民の委任により専ら国家的儀礼を司(つかさど)る」と象徴天皇制に通じる内容だ。「法の下の平等」や「男女同権」など、現行憲法と共通する条文も列挙している。

 この案は一民間の案にとどまらなかった。連合国軍総司令部(GHQ)にも提出され、GHQによる憲法草案の作成に大きな影響を与えたことは、多くの証言や資料から明らかになっている。

 鈴木氏は明治期の自由民権運動活動家、植木枝盛の私擬憲法「東洋大日本国国憲按(あん)」を発掘し、分析したことでも知られ、憲法研究会の憲法草案要綱の作成に当たっては、自由権を規定するなど進取的な植木案をはじめとする私擬憲法や諸外国の憲法を参考にしたことを明らかにしている。

 現行の日本国憲法がGHQの影響下で制定されたことは疑いの余地はないが、そのGHQの草案には日本の憲法研究会案が強い影響を与えた。しかも、その源流が自由民権運動にあることもまた、紛れのない歴史的事実である。

 

 

東京新聞 TOKYO Web

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016090202000137.htmlより転載

【社説】今、憲法を考える(5) 修正重ね、自らの手に

 「改憲」論者が憲法改正を必要とする理由の一つに挙げているのが、その制定過程。現行の日本国憲法は連合国軍総司令部(GHQ)に押し付けられたとの立場、「押し付け憲法論」である。

 現行憲法が終戦後、マッカーサー元帥率いるGHQの影響下で制定されたことは事実だ。

 松本烝治国務大臣を委員長とする日本政府の憲法問題調査委員会(松本委員会)による憲法改正案を拒否したGHQは自ら改正草案を九日間で作成し、政府に受け入れを迫った。GHQ草案である。

 日本政府は結局、この草案に沿って大日本帝国憲法の改正案を起草し、帝国議会に提出する。

 在任中の改憲を目指す安倍晋三首相が「日本が占領下にある当時、日本国政府といえどもGHQの意向には逆らえない中、この憲法がつくられ、極めて短い期間につくられた」と述べるのも、こうした経緯に基づくのだろう。

 しかし、この見方は表面的だ。

 GHQの草案づくりには、日本の民間団体「憲法研究会」が作成した「憲法草案要綱」が強い影響を与えていたし、日本政府が憲法改正案をつくる際も、GHQ草案をそのまま受け入れたわけではなく、地方自治規定を盛り込むなど「日本化」の努力がされていた。

 平和国家という戦後日本の在り方を規定した戦争放棄の九条が、当時首相だった幣原喜重郎氏の発案だったことも、マッカーサー元帥の著書や書簡、幣原氏の証言などから明らかになっている。

 改正案を審議した帝国議会で活発に議論され、修正を加えたことも押し付けとは言えない証左だ。

 九条第二項冒頭に「前項の目的を達するため」との文言を加え、自衛権を保持しうることを明確にしたとされる「芦田修正」は衆院での修正。貴族院では、公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する、などの修正を加えた。憲法前文は、両院で修正され、文言が練られている。

 現行憲法が、押し付けられたものを唯々諾々と受け入れたわけでないことは明らかだ。むしろGHQの圧力を利用して旧弊を一掃し、新生日本にふさわしい憲法を自らの手でつくり上げた、と言った方が適切だろう。

 何よりも重要なことは、公布後七十年もの長きにわたり、主権者である国民が憲法改正という政治選択をしなかった事実である。押し付け憲法論は、賢明なる先人に対する冒涜(ぼうとく)にもつながる。

 

 <関連>

【社説】 今、憲法を考える(1) 平和の道しるべたれ 〔東京新聞 2016.8.29〕

【社説】今、憲法を考える(2)過去幾多の試練に堪へ /(3)明治の論争が試される 〔東京新聞 2016.8.30、9.1〕


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2016/08/12 - 9条は幣原首相が提案マッカーサー書簡に明記押しつけ憲法否定の新史料 ... らきじゅうろう)首相(当時、以下同じ)が連合国軍総司令部(GHQ)側に提案したという学説を補強する新たな史料を堀尾輝久・東大名誉教授が見つけた。