荻野洋一 映画等覚書ブログ

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『ワールド・ウォーZ』 マーク・フォースター

2013-08-20 06:01:35 | 映画
 『ワールド・ウォーZ』は、主演者のブラッド・ピットがみずからプロデュースも担当したゾンビ映画で、まずは単純に「ブラピもゾンビ映画を作りたかったんだなあ」と、その心意気に感じ入る。中国の僻地で発生し、韓国の軍事基地から蔓延し始めたらしい謎のウィルスがあっという間に人類をゾンビ化させるという設定で、主人公たちが現場へ急行した韓国の飛行場は真っ暗闇、全体的にひどく雑な演出のためあまりはっきりしないが、ようするに極東災厄論、ずばり言わせてもらうと、黄禍論を観客に再-認識させる作品になっているように思える。どういう意図なのかまでは考察する気も起きないが。
 画面内で起こっていることの珍妙さで2時間の上映時間をもたせるという方向で作り込まれ、内容は薄っぺら、しかもその薄さを楽しめない輩は「分かっていない」輩だと脅してくる雰囲気は、『パシフィック・リム』と同様である。とにかく、こういう人類滅亡パニックがここ数年、ハリウッドでくり返し製作され、私はそれを飽くことなく見続けている。何がほしくて私はこんなに付き合いがいいのか?
 アメリカ(=ブラピ)は家族のために使命の遂行にがんばり、イスラエルは方舟を思わせる巨大な防御壁をすばやく用意して身を守り、ロシアはゾンビとの戦いそのもののなかにアイデンティティを見出していったらしい(ロシアの例はナレーションのみ)。この「スイス=鳩時計」的なクリシェでまとめ上げたあげくに、アメリカ的「スウィートホーム」への帰還を添えるやり方は、ひどくえげつなく野暮ったいやり方だからやめてほしかった。


TOHOシネマズ日劇(東京・有楽町マリオン)ほか全国公開中
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