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原発ヨイショのお為ごかしな物語をオーストラリア・ディーゼンドルフ氏が反駁する

2024-04-21 20:34:10 | 原発
4月7日付けのコラム「原子力発電は地球環境にやさしいのか」は、常々感じていることが多い内容の意見で、興味深く読ませていただきました。
特に「原子力発電はクリーンな発電方法である。原子力発電こそが現状で最も安定した電力供給ができる」等々のバイアスがかかった言説の問題性を指摘している点は大いに共感するところです。

見習い期間さんに触発され、核エネルギー推進者が用いがちな言説や物語の問題点を検討している海外の意見を少し調べてみました。その結果、オーストラリアにDiesendorfさんという方がおり、興味深い情報を提供しております。2016年と少々古いものではありますが、参考になる部分多いと思いますので、紹介したいと思います。

バイアスのかかった推進者側の言説・論理に対する反駁の力が弱いということと共に、彼らの言説・論理だけが、大手を振るってまかり通っている社会構造を放置し続けている、ということも我々社会が抱えている大きな問題点と思っております。
おかしいことには、ハッキリとおかしいということを言い続けること、そしてその反駁の論拠の正当性を高めていくことも大切と思っております。

「原発ヨイショのお為ごかしな物語をオーストラリア・ディーゼンドルフ氏が反駁する」
(Energypost.eu,2016年5月31日 Mark Diesendorfさんが記す)

オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学(UNSW)の学際的環境研究のMark Diesendorf準教授が、再生可能エネルギーを絶えず貶めることに専念している原発推進主義者らから発せられる「まことしやかな」物語や言説を信じてはならない、と主張している。そして準教授は、クリーンであり、安全な再生可能エネルギー技術が世界の電力需要の100%を供給できる潜在能力を持っていると述べる。
合わせて指摘していることは、入念に仕組まれ、そして市民を間違った方向に誘導することを狙った神話やある意図を持って語られる物語に、反駁することが第一に越えるべきハードルと指摘している。
彼らが語る神話や物語というものは、政治的な強者が、命脈が尽きかけている原子力産業を究極的に応援するよう仕組まれたものなのである。

多くの国において主要な炭素低排出型電力供給源として原発エネルギーと再生エネルギーの両者が、ライバル関係にあるとされている。

ここで再生可能エネルギー技術が、発電量ならびに投資額の点で著しい拡大を見せており、そして発電コストが大きく低減してきている。しかしこの推移の進行につれて、原発を推進する人々や気候科学を否定的に見る人々らが、再生可能エネルギーに対する否定論者になってきているのである。

再生可能エネルギー否定論者らの戦略と戦術は、気候科学を否定する人々の用いるそれらと非常に良く似ている。
産業界向けの電力源として、再生可能エネルギーは能力の面、そして確実性の観点から劣っており、問題であるという風潮を作りだすことを狙っている再生可能エネルギー否定論者らは、政策決定権者らやメディアに対して再生可能エネルギーに対するマイナスの神話を、そして原発エネルギーに対してはプラスの神話を植え付けようと奔走している。
彼らの狙いは、これら二つの神話の間の争いが通俗的・世俗的なものであり、重大な問題ではない、との認識を市民に持ち込もうとしていると言える。

異常気象に対処するため、原発エネルギーと再生可能エネルギーの両方に充分な投資を行えるに足る経済的資源を持っている国は、ほとんどないのである。このことは、2016年の英国の対応を見れば了解されるだろう。即ち2016年英国は原発エネルギーに対しては長期に亘る補助金政策を提供し、一方で再生可能エネルギーに対しては既存の短期的補助金の厳しいカット政策を持ち込んだのである。

この記事は、原発や石炭火力などのベースロード発電所が必要だとする神話や物語に反駁する記事の続編であり、原発エネルギーと再生可能エネルギーに関連するその他の神話・物語の幾つかを批判的に検証することを目的にしている。これらの神話・物語に疑念を持つ人々へ役立つ情報を提供することを狙っている。ここで検証する神話・物語は、メディアや論説文やブログ・オンライン上のコメントで見受けられる原発推進者や再生可能エネルギー否定論者らが発しているコメントから引用している。

神話・物語1:ベースロード発電所は、ベースロード需要を供給するために必要だ。
変形例:ベースロード発電所は、不規則で安定していない再生可能エネルギーをバックアップするために、常時運転しておく必要がある。
変形例:再生可能エネルギーは、大規模な電力供給の為の主要な電力源と見なすには、あまりに不規則であり不安定性である。

これらは、既にDiesendorf氏の以前の記事(RENEW ECONOMY,2016,March 18)で反駁済みである。【この紹介は別の機会に行う予定です】

神話・物語2:原発エネルギーには、復興(ルネッサンス)がおきている

世界の原発の発電量は2006年にピークを打っている。世界の総発電量に占める原発の寄与は1993年の17.5%をピークとして以降は下降しており、2014年時点では11%を下回っている。現在の原発に対する年間投資額は、風力への投資額および太陽光への投資額のいずれに対しても下回っている。直近の10年間、新規原発の数は、既存原発の閉鎖の数とほぼ一致している。欧州の幾つかの国では原発が消滅の方向に移行しつつある。そして反対に原発リアクター建設を推進している国があり、それらは中国・ロシア・インドそして韓国である(世界原子力産業レポート2015からの引用)。

神話・物語3:再生可能エネルギーは、直ちに化石燃料の代替えとはなり得ず、低炭素型のエネルギーを充分供給するには、主張されている 移行期に発生するだろうギャップを埋めるために、原発エネルギーが必要となるだろう。

既存の原発の大半は第二世代に分類され時代遅れになっていると見られている。現在の新しい世代の原発は、第3世代および第3+世代に分類される。これまで、4基の第3世代原発が日本で稼働しているが、それらの稼働実績は貧弱なものである。第3+世代の原発は欧州で2基、アメリカで4基そして中国で数基が建設中である。従ってその稼働はまだである。そして第3+世代の建設スケジュールは遅れており、必要予算も超過傾向になっているという。例えば欧州の建設費は予定の3倍に既に膨らんでいる。
高速増殖炉・統合型高速炉・小型モジュール炉などの第4世代原子炉は一つも市場に出回っていない状況にある(World Nuclear Industry Status Report 2015より)。
従って、新式原発はまだ準備できていないのが、現在の状況である。

一方、風力と太陽光はどちらも急速に成長しており、そしてコストの低減化が今も続いている。大規模な風力や太陽光の発電計画があり、2-3年で建設が終わる予定となっている(原発には10~15年の建設時間が要する)。従って風力と太陽光による発電で、今すぐにでも化石燃料や原発を置き換えることが可能なのである。

神話・物語4:民生向け核エネルギー利用と核兵器の拡大・拡散は別物だ。
変形例:核兵器の爆発物は、通常の原子炉で作られるプルトニウムからは作れない。またトリウム核燃料サイクルやIFR(統合型高速炉)で作られるものからも、核兵器の爆発物は作れない。

6カ国(フランス・インド・北朝鮮・パキスタン・南アと英国)は、核兵器開発を支援するために民生用原子力エネルギーを秘密裏に利用してきた。加えて、少なくとも7カ国(アルゼンチン・オーストラリア・ブラジル・イラン・リビア・韓国と台湾)は同じく民生用原子力エネルギーを利用して核兵器の開発を秘密裏に開始していたが、その後計画を中止している(Diesendorf2014の参考文献より)。このように、核エネルギーは核拡散を促進し、それにより核戦争の危険性を高めるのである。そして例え核戦争の可能性は低いとしても(この点に関しては議論の余地がある)、潜在的な打撃の大きさは計り知れないものである。従って民生用原子力エネルギーが持っている、核兵器の拡散リスクは軽視出来るものではないのである。
トリウム原子炉はインドで開発中。トリウムには核分裂性が無いため、まず中性子を照射してウラン233に変換する必要がある。ウラン233は熱を発生させたり、電気を作りだしたり、各爆発物としても利用できる。ウラン233を使用した核兵器はアメリカ(ティーポットMETテスト)、ソビエトとインドでテストされている。

【参考情報:トリウムとは、原子番号90の元素で地殻中に豊富に存在。トリウム232が中性子を吸収するとトリウム233となり、β崩壊によりプロトアクチニウム233を経由して最終的に核燃料のウラン233が生まれる】

一部の核推進者らは、仮定を前提とした上で、IFRというものは核拡散に対して防止効果があると誤った主張を行っている。IFRはこれまで1基の試作機がアメリカで運用されたのみである。だが、このプロジェクトは資金面・必要性についての疑問・潜在的な核拡散能力についての懸念などの理由から1994年に議会で中止に追い込まれた(Kerry 1994)。

IFRには少なくとも2つの核兵器の拡散を拡大する経路があるとされる。
一つの経路は、核放射性の高い核分裂生性物の大半を、焼成手段を用いて放射性の低い超ウラン性物質から分離することが出来れば、通常の化学処理を用いて、分取した放射性の低い超ウラン性物質からプルトニウム-239を抽出することは容易に出来ることになり、それを使って核兵器が作れるのである。
もう一つの核拡散に結び付く経路はウラン238から兵器級のプルトニウムを製造できるようにIFRを改造するやり方である(Wymer et al. 1992参照)。

【IFTとは:統合型高速炉(Integrated Fast Reactor)。設計コンセプトとして、燃料のリサイクルを取り込み、発電プラントと燃料の再処理施設を同一サイトで実現することを狙った原子炉のことを指す】

神話・物語5:チェルノブイリの死者数は28~64人だった。

これらの不条理に低い推定値は、急性放射線症候群による短期間の死亡のみを考慮し、死亡率の主要要因である数十年に亘るガンを無視することで生じる。推定死亡者数については幾つか出されており、IAEAの国際機関の一つのチェルノブイリフォーラムの推計(2006)が最少であり、4000人未満としている。IAEAは核拡散に反対の立場と原発事故の未然防止安全対策を推進するという立場とともに、一方では核エネルギー利用の推進の立場をとるという、相反する考え方を持っている組織である。
かかる利害関係を持たない立場の推計値として、国際がん研究機関が発表の16,000人からウクライナ・ソビエト等からの国際的医学研究者団体が発表の93,000人まで存在している。

神話・物語6:高レベル核廃棄物の永久貯蔵の問題は解決している。

すべての高レベル核廃棄物は現在、プールまたは乾式キャスクに一時保管されている。世界には永久的保管を行う場所は一つもない。アメリカのユッカ山で提案されている保管場所の開発は135億米ドルを支出した段階で中止されている。スウェーデンとフィンランドで地下保管庫の建設が進められている。例え、技術的及び経済的な課題が解決できたとしても、保管を10万年間管理し、隔離を続けることへの社会的な問題が未解決で残るのである。

神話・物語7:IFRが世界の核廃棄物を燃やし、消失することになるだろう。

IFRは設計としてのみ存在している。もしも開発されたとしたら、また別の核拡散の経路の誕生となるだろう。せいぜいが、大半の超ウラン物質を核分裂生成物へと変換する程度であり、高放射性核分裂生成物を保管するのに地下の長期保管庫が依然として必要となる。
IFRやその他の「新しい」原子炉設計の問題の詳細は、最近エコロジスト誌に再掲載されたAmory Lovins氏の2009年の古典的エッセイ「“New" nuclear reactor? Same old story」を参照のこと。

神話・物語8:原子力エネルギーは、温室効果ガスを全く排出しないか、またはごくわずかしか排出しない。

原子力エネルギーもほとんどの再生可能エネルギー技術も運転中のCO2排出はない。ただし、意味ある比較を行うには、原材料の採掘から廃棄物の管理までに至るライフサイクル全体を比較する必要がある。核物理学者で核エネルギー利用支持者のManfred Lenzen氏は、高品位のウラン鉱石の採掘を前提として、原子力エネルギーのライフサイクル平均排出量がkWhあたり60gのCO2となり、風力発電の場合は10~20gのCO2、天然ガス発電では500~600gとなると算出している。

ここにおいて、大半の核エネルギー推進派が無視をし、誤って伝えようとする部分が登場する。即ち、高品位のウラン鉱石の埋蔵量は、世界にあと数十年分しか残っていないことである。ウラン鉱石の品質が低下すると、ディ-ゼル燃料を用いるウランの採掘と粉末化工程に使用する燃料が増大し、その結果GHG排出量も増加することになる。Lenzen氏は低品位ウラン鉱石を使用すると、ライフサイクルGHG排出量が131g/kWhになると計算している。そして131g以上の、もっと大きい排出量を算出している人もいるのである。

このような大きなkWh当たりの排出量は気候科学の観点から容認できないものである。
低品位ウラン鉱石の採掘を再生可能エネルギーで行うとか、バーナー型原子炉の代わりに高速増殖炉を使用するという条件の場合に限って、核エネルギー利用によるGHG排出量を許容できる範囲に抑えることが出来るが、これら両方の条件とも少なくとも今後数十年以内にクリア出来ることは無さそうなのである。
このトピックの詳細はKeith Barnham氏の「False solution:nuclear power is not low carbon」を参照のこと。

神話・物語9:原子力エネルギーは、送電網において再生可能エネルギーの適切なパートナーである。

原子力推進者らは必要に迫られて、上手い話を作るもので、「新しい」原子力と再生可能エネルギーの両方を同じ送電網に送り込むことが出来ると主張している。しかしながら、変動型再生可能エネルギーが電力供給システムに対して大きな貢献をする上で原子力エネルギーが望ましいパートナーではないということが、次の4つの理由から明らかである。
(1)バイオ燃料の使用が出来る開放型ガスタービンによる発電やダムを備えた水力発電や蓄熱装置を備えた集中型太陽熱(CST)と比べて、原子炉の稼働は柔軟性に欠けるといえる。風力発電と太陽光発電は、柔軟性があり配電可能でありバランスのとれた形で大量のエネルギーを供給可能である。
(2)原子力発電所が故障すると通常数週間から数カ月が停止状態になる。それに対して、風が凪いだことによる風力発電の停止は普通数時間から数日であり、従って風力発電はベースロード発電施設から高額なバックアップを必要としないのであり、充分に、柔軟性のある配電可能な再生可能エネルギーだと言える
(3)風力発電と太陽光発電の運転は、原子力発電や化石燃料発電に比べて安価である。それ故に風力と太陽光発電とは電力業界に経済的メリットを与えることになり、ベースロード運転から原子力電力を切り離すことになり、ベースロード運転システムの巨額なコストの返済の役に立つことになる。
(4)再生可能エネルギーと原子力エネルギーとは、政府の乏しい財政と補助金政策状況のなかで競合関係にあり、例えば英国政府はHinkley C に対し約束している巨大補助金を行っているが、一方では風力発電や太陽光発電に対しては補助金撤廃をしている。

神話・物語10:原子力発電炉は、通常は需要や負荷の変化に追随して柔軟に運転ができるものである。

技術的および経済的な2つの面からの制約が総発電量の77%を原子力発電から賄っているフランスで実証されている。現行世代の原子炉は負荷追随型には設計されてはいない。従って、フランスでは運転サイクルの開始当初の時点、即ち燃料は新しくそして予備の反応性が高いという条件下でのある時間においてのみ、負荷追随型モードでいくつかの原子炉を稼働が出来るとしている。しかし運転サイクルの後半に負荷追随型モードを継続することはできない。この点は、世界核機関によって承認されている。

負荷追随はベースロード発電所にとって次の2つの経済的不利益をもたらす。
・効率の低下により、維持費のコストがかなり増大することになる。
・電力需要閑散期の期間の収入が減少する。しかし、高額な資本コストを返済するには、出来る限り定格出力で、原子炉を運転することが求められるのである。

フランスでは余剰の原子力エネルギーを、送電線を通じて近隣諸国に売却することで2番目の経済的ぺナルティーを軽減している。一方オーストラリアの一部では余剰のベースロード石炭エネルギーを水の加熱用に用いている。

脚本・物語11:再生可能エネルギーは原子力エネルギーよりも費用が掛かるものだ。
変形例:原子力エネルギーが受け取る補助金は、再生可能エネルギーが受け取る額よりも少ない。

両方の神話とも間違っている。
エネルギーの平均コスト(Levelised costs of energy:LCOE)は、その場所に設置されたユニットの数、設置場所、投下資本コスト、金利および設備利用率(実際の平均出力を定格出力で割ったもの)に依存して異なる。原子力発電所のLCOE推定額はIPCCの2014以前のデータによると$108/MWh、多国籍金融コンサルタントLazardの2015以前のデータによると$97-132/MWhである。
IPCCの推定コストには補助金が含まれておらず、一方Lazardの推定値には借入保証と廃炉(decommissioning)を除いて連邦政府の補助金が含まれている。

これらアメリカの推定額のいずれもが、建設中の欧州の2基の加圧水型原子炉(European Pressured Water Reactors, EPR)のコストの大幅な高騰を考慮していない(MYTH3で言及)。
英国向けに提案されているEPRであるHinkley Cは、電力の卸売価格の2倍以上である£92.5/MWh (US/MWh) ( 2012 年為替換算)から始まる35年間のインフレ連動保証電力価格が、当初£100億(153億ドル)の借入保証付きで提案されている。

事故や不充分な保険に対する上限付き債務が英国の納税者らに、降りかってくることが予想される。

2015年にLazardはアメリカ全土の陸上風力発電の補助金なしのコストを32~77米ドル/MWhと見積もっている。アメリカエネルギー省による独立した実証研究によると、2014年の風力発電の平均電力購入契約価格は、風速が最も大きいアメリカ内陸部では22米ドル/MWh、風速が最も小さい西部地域では60米ドル/MWhとしている。アメリカ政府は風力発電に対して、10年間23米ドル/MWhの生産税額控除の補助を行っているため、実際のコストを求めるには、この23ドルをアメリカエネルギー省の実証研究で得られている数値に加える必要がある。

ブラジルでは、2014年の逆オークション(通常の売り手が最高値の買い手を選ぶ方式でなく、買い手が最安の売り手を選ぶ方式)において、補助金なしの平均清算価格129.3レアル/MWh(41米ドル/MWh)で契約が落札されている。

Lazardの見積もりでは、アメリカの日射量の多い地域における大規模太陽光発電のコストは、補助金無しの条件で50-70米ドル/MWhである。アメリカ・ニューメキシコ州において、57.9米ドル/MWhの電力購入契約がMacho Springsの50MW太陽光発電所からの電力に対して締結された。連邦政府と州政府からの補助金を勘案すると、実際のコストは場所の違いにより、80-90米ドル/MWhとなる。
チリ・ブラジル・ウルグアイでは、補助金なしの逆オークションにおけるコストは同じ範囲にある(Diesendorf 2016)。

「メーターの裏側Behind the meter、BTM」にあると考える家庭や工場等の屋根設置型太陽光発電装置の発電コストは、固定価格買い取り制度がない条件下であっても、日射量が中程度~高程度である世界の多くの地域において、地域の電力会社が提供する電力価格と競争力がある。

蓄熱を備えたCSTに対しては、Lazardは119~181米ドル/MWhと見積もっている。

原子力と再生可能エネルギーの補助金を比較することは困難である。補助金の量と種類は国ごとに大きく異なり、原子力補助金には以下の一部またはすべてが含まれる場合がある(Disendorf, 2014)。・研究開発、ウラン濃縮、廃炉そして廃棄物の管理に対しての政府の資金提供;
・ローン保証;
・納税者および電気料金支払者により支払われた座礁資産;
・被害者と納税者によりカバーされる必要のある事故が起こった際の有限責任;
・相違点に対する寛大な契約内容。

原子力発電所への補助金は過去50年間に亘り、一定を維持するか、あるいは増大傾向で推移している。一方、再生可能エネルギーへの補助金は、特に固定価格買い取り制度への補助金は過去10年間に大幅に減少(場所によってはゼロに)している。

【参考情報:BTMとは、電力会社が持つ電力メーターまでのインフラでなく、電力購入利用者が持つ電力メーターの裏側の電力利用者の持っているインフラを指す】

神話・物語12:再生可能エネルギーは非常な広がりを必要とするもので、従って巨大な面積の土地を要求するものである。

水力発電用ダムやバイオ燃料向け作物の栽培用地は大きな面積を要する可能性があるが、しかしながら再生可能エネルギーのシナリオの中には、これらの資源から追加的に大きな貢献分を要求するものはほとんどない。
地上に設置の太陽光発電ファームは大きな土地を占有する可能性があるが、それはしばしば耕作限界地を占有する形式なのである。
ドイツとオーストラリアで広く見られる屋根に取り付ける太陽光発電装置や農作物からの残渣をバイオ燃料とする方式では追加の土地は必要としない。
陸上風力発電ファームは通常良く農耕地に設置され、風力発電装置と農耕との相容性・親和性が高いのである。占有される土地面積は通常1-2%であるが、再生可能エネルギー否定論者らは、往々にしてこの点を無視してより広範な土地を占有しているとする間違った土地面積を引用するのである。

オーストラリアのエネルギー市場向けにその必要量の100%を再生可能エネルギーで賄う場合の経済的に最適な再生可能エネルギーの組み合わせを計算すると、km2/TWh/年で表示する場合、100%の再生可能エネルギースキームで必要とされる土地面積は、仮定上半径20kmの緩衝地帯を設定する必要のある原子力発電施設に要する土地面積の約半分で済む、としている。
この原発施設に対して、仮定上半径20kmの緩衝地帯を設ける必要があるとする条件は、福島第一原発事故が原因で、遅ればせながら導入されたものである。

神話・物語13:再生可能エネルギー技術のエネルギー回収期間(金額ではなくエネルギー単位ベース)は、その設備のライフタイムに匹敵する期間である。

現在のエネルギー回収期間の典型的な年数は:太陽光発電モジュールは0.5~1.8年、大型風力タービンは0.25~0.75年、CRT(パラボラボウル)は2年、核(高品質ウラン鉱石)6.5年、核(低品質ウラン鉱石)14年である。これら数値の範囲は、エネルギー回収期間、および投資したエネルギーに対するエネルギー収益率に関連する考え方が、技術の種類や場所によって異なるという事実を反映していることになる。

再生可能エネルギーを批判する人達は、それぞれの再生可能技術が化石燃料を利用する発電施設から継続的にバックアップ支援を受ける必要があるとの間違った仮定を導入することで、より大きいエネルギー回収期間が提示されるようなことを、しばしば行うのである。

神話・物語14:デンマークの電気料金は風力発電エネルギーからの寄与が大きいことから、欧州で最も電気料金が高い国のなかの1つである。

デンマークの電力料金は、欧州の中で最も高い部類に属する。理由は電気代に対する税が非常に高いことによる。この税は連結収入に組み込まれるが、風力エネルギーに対しては補助金が投入されないのである。税を除いて電気料金を比較すると、デンマークは欧州の中で平均程度に位置している。デンマークの風力エネルギーは、小売電力価格の極わずかな値上げ分を原資とする固定価格買い取り制度によって補助されているが、多額な風力エネルギーの寄与による卸売・大量販売価格の下落により相殺されている。

神話・物語15:80~100%再生可能電力使用を想定した送電網の運用に関するコンピューターシミュレーションモデルは、実際のシステムを無意味に過大に単純化している。

シミュレーションモデルは確かに現実の簡略化されたバージョンだが、様々なシナリオを調査するための強力な低コストの武器となるものである。大半のモデル作成者らは、対象とする変数の間の幾つかの基本的な相関関係を理解することを目的として、単純なモデルから検討を始めるのである。次いで、理解が深まるにつれて段々とモデル作成者らはより現実的なモデルを作り上げていくのである。
例えば、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大のグループは、当初100%再生可能エネルギーによるオーストラリア全国電力市場の運営を1年間にわたる時間単位の段階でシミュレ―ションした。風力発電所は既存の場所でスケールを拡張するだけの処理を行った。

次に検討したモデルでは経済データを含めることをおこない、再生可能エネルギー技術の経済的に見た最適な組み合わせを算出している。ついで低炭素型化石燃料シナリオとのコストの比較を行っている。

最近、シミュレーションは6年間の時間ごとのデータに拡張され、再生可能エネルギーの供給地域は43のサブ地域に分割がほどこされ、そして非同調供給性について一定の制約を課すことを行っている。この様なモデルの精密化を行ったうえでも、100%再生可能エネルギーシステムは信頼性があり、そして経済的有利性があることが認められている。

一方、スタンフォード大の研究者らは、輸送と熱を含むアメリカでのすべてのエネルギー使用が再生可能電力で賄える可能性があることを示している。彼らのコンピューターシミュレーションでは、6年間にわたる30秒ごとの取得された電力需要、風力、太陽光に関する合成データが利用されている。合成データを利用することにより、モデルを使って研究を進める研究者らは、天候の大きな仮定上の変動をも含めていくことが出来るようになる。
この様な感度分析手法はモデルの効力と信頼性を高めることになる。

奇妙なことに、電力システムのシミュレーションモデル化作業を最も声高に批判する人々の中には、専門分野として物理やコンピューター科学や工学や応用数学の資格を持ってはいない人々がいる。例えばオーストラリアでは、2人の生物学者、1人の社会福祉学者、1人の作業療法士が含まれている。

(結論)
コンピューターシミュレーションモデルの進展および増大する実践的経験によって、多くの地域で、恐らくは世界中の地域で電力の供給が100%再生可能エネルギーから調達される状況へと、移行していく可能性があることが示されている。再生可能エネルギー技術の大半は市場で入手可能であり、価格は手ごろであり、そして環境に優しいのである。
かかる移行を遅らせるような理由は、現在の再生可能エネルギーの技術及び経済性には存在していないのである。
原発推進派や他の既得権益受益者や支持者らが拡散している原発推進や再生可能エネルギー反対の神話と称する作り話は検証に値しないものである。政治的意思を持って進めて行けば、第3世代や第4世代の原発が意味ある電力供給をおこなう時期より、はるかに早く再生可能エネルギーのスケールアップにより、世界の電力需要が100%再生可能エネルギーから調達できるという時代がくることになるだろう。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan

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