★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

年度末の病床から

2017-03-28 23:24:36 | 思想


ここ数日だいたい寝ているのであるが、大学院のときに×秀実氏の本を読んだら元気になった記憶にもとづき、池田浩士だか福間良明だかの本の下になっていた『反原発の思想史』を引っ張り出してつまみ読みしてみた。×秀実氏というのはいまや、アイロニカルな意味でも何でもなくほとんど文学=思想史家の趣のある人である。わたくしのみるところ、この人は本質的には評論家ではない。時評を得意とするジャーナリストはたくさんいる我が国であるが、この人みたいなタイプは案外いない。アカデミズムでも歴史を論じられる人というのは、非常に行動的な人であることがおおいのだが、氏はそういう人である。我々の業界はもっとしっかりしなきゃならない。

かなり疲労の色がみられるとはいえ、さすがにこの本も面白いところは面白く、教えられるところがある。もっとも山本均氏の調査に負うところが多い本らしいのであるが……。革マル人脈から「プロ教師の会」や「ヤマギシ会」の動静あたりの問題は、わたくし個人としても興味があるところである。いまや、氏が問題にしているニューウェーブ系は安倍昭恵に至る不思議ちゃんやモンスターペアレンツの一部にまで伝播している。いやはや面白い時代になってきたものである。

最近急激に流布した「忖度」という言葉であるが、役人がエライやつに勝手に合法的に便宜をはかることは言葉の正確な意味で「忖度」ではない。むしろ、教育基本法などの「大きな命令」がでているにも関わらず、教育を「支援」、とか「心に寄り添う」とか強弁してみせることに近い。むろん、客観的に言えば「命令に従っただけ」、道徳的に言えば「ケツなめ」(宮台真司)である。しかし、そんなふつうの感覚が働かず、上の強弁がここまで広がりを見せているのは、単に馬鹿にすればいい問題ではない。たしかに氏が問題にするようにそれは大正生命主義的なものに近いのかもしれない。


1974年の「ザルドス」であるが、昔これをブラウン管のテレビで観た時には、ボルテックスというハイソで死ねない、セックスを忘れた人々のコミューンが非常に非現実的に見えたものであるが、いまやあまり違和感がない気がするのが怖い。その理由を考える上でも、上の本は役に立ちそうだ。


明烏

2017-03-27 23:42:45 | 映画


落語の「芝浜」をもとにした「明烏」という映画がこの前テレビでやってたが、吉岡里帆という人の演技がまるで男の落語家が女房のまねをする時みたいな感じが出ていて面白かった。落語や演劇のような芸術様式がどこまで作品の内容に作用を及ぼすかは昔ながらの問題であるが、わたくしはなんとなく舞台芸術が苦手だ。考えてみたい問題である。

segregation

2017-03-26 23:17:23 | 思想


今日も夢野京太郎のヤクザな小説を読んでいたら、これはどこかである発想だと思って、合田正人氏の本をめくっていたら、segregation とでた。合田氏の本の結論としては気持ちは分かるけど……、わたくしは不満である。だって、籠池騒動の推移なんか、まさに準安定状態の説明に使えそうだからね……。

パン屋

2017-03-25 14:11:34 | ニュース


http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG24HGS_V20C17A3CR0000/

和菓子屋のどこが国と関係あるのかさっさと教えて欲しいものだ。西洋文明の粋を懲らした戦艦大和がよかったのだから、もはやクロワッサンを麺麭大和とか呼べばいいのではなかろうか。だいたい「我が国や郷土の文化と生活に親しみ、愛着を持つ」とかいうたいそうなことは、「源氏物語」や「好色一代男」や「万延元年のフットボール」の勉強をしてない輩にとって、どだい無理な話なのだ。パン屋でも和菓子屋でもいいが、無条件に愛着がわくはずがないのであって、わいているとしたら、相当食欲があるやつだけだろう。しかのみならず、残念ながら、「日本」は愛着を持ったとしても食べることは出来ない。

長期的にみて、食欲で愛国心を釣ろうとする××がいる「国」を愛することは出来ないであろう。小学校一年生の時に和菓子をおごってやったのに、なんで俺を好きにならないのか?と言って幼なじみに迫る男がいたら、スーパー・ストーカーではないか。(違うか)

あそうだ、麺麭がだめなのは、給食が麺麭中心だった戦後レジュームを否定するつもりなのであろう。

もはや、文科省の一部が本気で狂っていないことを「祈るしかない」(昭恵さん風)。いや、具体的な人間を知っているので断言してもいいが、彼らは狂っているわけではない。科研費やその他書類などで鍛えられた、パンや和菓子に変えるごとき、くそみたいな社交辞令的な操作が学問的なところまで侵入しているだけなのである。

そういえば、昭恵氏の「神」は一体何なのであろう?彼女は聖心女子の出だから、あれなのかもしれないが……。さすがに和菓子で日本文化を表象しようという体たらくは論外としても、我々の戦後世界が道徳的なものの創成に完全に失敗したことを意味していることは確かである。インテリ世界だって……、吉本も柄谷も倫理学ではなかった(あ、『倫理21』はあったか)から、明治の宗教的哲学者たち、例えば西田幾多郎が持った意味とは違った。わたくしは、アメリカの陰から無知その他ゆえに解放されつつある若い人たちにようやく「道徳」を考える気運をみているのだが、お偉方のやろうとしていることは、それへの妨害である。国家は彼らを放って置いてほしいものである。とにかく、この和菓子屋の調子では、とにかく、やっていることが「ダサイ」の一言だ。このダサさは精神的な病気のそれを感じさせる。


「道徳」が「全教科書に「いじめ」」をしているとの指摘、さすが『朝日新聞』!

甲子園惨敗速報2017

2017-03-24 01:07:55 | ニュース
私が住んだことのある県(太字)の惨敗速報今年も行きます。

至学館(愛知) 5 - 6 呉(広島)

……というわけで、初日第1試合で、全てが終了しておりました。他の県はまったく出場しておりません。誠にありがとうございました。さようなら。


日本 1 - 2 アメリカ

中日 4 - 6 西武

御嶽海 ○ 押し出し ● 豪風

井山六冠 ● ○日本最強AI

……勝ってるのは御嶽海だけであることが判明。しかしまあ、最近は、ちゃんと勝負がついたあとで、「勝利した俺(等)は最高」「負けたおれ(ら)はウジ虫です」といったやりとりがないからつまらない。これなら、もうAI同士で全ての勝負をやらせればいいよ。感情を抑圧する必要もないからな。甲子園も、なんだか地震や何やらの追悼行事と化しているが、野球と地震と何か関係があるんですかね。開会式を観ていたら、誰かが「いまWBCで戦っている日本代表を思って」とか言っていたが、教育勅語より問題発言だ。高校生達は、せいぜい県の代表であって(春の大会はそれですらない)、プロ野球選手や侍J(←なんじゃそら)とは何の関係もない。高校生がみんなプロを目指しているわけでもないし。君が代も歌わなくて結構。関係なし。あと、あの行進は何?普通に歩け

「河童」とニュース

2017-03-22 23:51:43 | 文学


あらためて芥川龍之介の「河童」を読んでみたが、芥川、やはりとんでもない文才の持ち主であった。

・今の天皇が退位したあとは「上皇」にするそうである。いやーどうかなあ……。喜んでこんなことを決めたつもりになっている人たちは、日本国憲法を読んだことがあるのであろうか?で、その上皇とやらは、「象徴」なの?人間なの?言うまでもないことだが、「天皇制」はもうないんだよ。天皇に憲法を踏み越えさせた主犯は誰だろう?

・共謀罪……とんでもない話だな。近代刑法の常識が働いていないいまの国民にこういう法律の運用ができるはずがない。テロとは社会にとって果たして何かという根本的な問題があるが、ひとまずそれは措くとしても、我が国は、確か昭和15年に、運動だけでじゃなく研究するのもだめとかいって学生の研究会を罰し、マルクスの本を読むのもゆるさんみたいなことにしたような、完全に近代国家として「×が悪すぎる」ことをやった国だ。そして、いったんそうなったら、特別警察のかわいそうな部下たちが、「上司の命令だから」、「いまは戦時下だから」、「生活のため(金のため)」とかなんとか言いつつ、資本論を所持してた人間を糞真面目にとっつかまえてしまうような、「頭が×くて話にならん」ことを処世のためにやった人間が大量に住んでいる国である。信用ならない。

それよりも、最近の日本社会のあまりにも「見える化」した腐敗っぷりは、テロリストの欲望をそそるところがあるのではなかろうか。腐ったものは掃除したくなるだろう?

第13回ジオコミュニケーションセミナーのお知らせ

2017-03-22 21:56:27 | 大学
同僚の気象学の先生からお知らせですっ。皆さん、参加してみてはいかがでしょう

東日本大震災を伝える――香川の教育者の卵たちへ
 震災と格闘した二人の先生の話を聞こう


とき:3月27日 13:30-16:20

ところ:香川大学幸町キャンパス 411教室

プログラム:
  13:30-14:45 津波実験装置の開発者が語る 自らの被災体験と、子どもを守る津波対策
         堀込智之氏 (HOLITON波力研究所長、仙台第一高等学校SSH災害研究指導講師)

  15:05-16:20 雄勝小学校の復興教育と被災児の心のケア~国語・総合学習・美術教育を通して~
          徳水博志氏 (一般社団法人雄勝花物語共同代表・宮城教育大学非常勤講師)

復習するは我にあり

2017-03-21 18:42:50 | 文学

今日は、日曜日の復習をする。坂口安吾のエラいところは、処女作を書いてからというもの、似ているようで似ていないものを書きまくっているということであろう。

この前まで読んでいた西村寿行との違いである。西村寿行における小説の中の事象の「反復」と安吾のそれとは意味合いが違う。しかし、似ている部分もあるのである。