★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

噂をきいた

2014-04-29 05:05:21 | 思想


コルタサルとかちょっと読んでたらいろいろよくないことを思い出した。マルケスの悪夢とこれはちがう。

・そういえば、生活習慣が悪い人は保険料上げるぜ、という法律がでるとかいう噂を聞いた→はああ、いやな世の中になってきたな。健康を説くやつってだいたい人としてつまんねえじゃん(個人の見解です)いっそカップラーメン食ったことのあるやつは全員国外追放でいいわ。日本は楽園になるね。

・オバマ国賓なのにお寿司食べただけですぐ韓国行っちゃった。でも尖閣問題は安保の範疇にしてくれたぜバンザーイ、という噂を聞いた→だいたい保守層の日本国民は、サヨクからの自主独立を果たしたいけどアメリカからの独立は果たしたくない、からここ数ヶ月不安でたまらなかった、というのが実情であろう。わしもちょっと不安だったからな。でも、今回の共同声明読んでねえけれども、アメリカは先の大戦において日本が資本主義とも社会主義ともつかぬ妖しい文化と精神を有しているから無気味なんで焼き払わなかっただけであって、TPPで日本の風景を破壊したあとは何するかわからんぞ。はあー、どうみても今回は何か取引があったなあ、安保はまだあるからねTPPで妥協してね、だと思うなあ……。あるいは、それよりもっとひどいことを命令されたかもわからん……。というか、集団的自衛権にしたって「おれはアメリカと一緒にやるから中韓はちょっと遠慮してしゃべれよな」と言いたいがための方便だったつもりが、本気に「はいはい、日本はTPP妥協してやってんだから、ちょっとお金と兵出せよ。あそうだ、議会で尖閣には兵出せないことになったけど、おれらロシアに攻撃されそうだからウクライナの件、よろしく。兵が死んだら靖国に参拝してやるよ、キリスト教徒として(笑)」という論法で、アメリカに利用されるんじゃねえのか、今回の件は。アメリカに限らず、世界のリーダーたちは複雑な国際方程式を解いている途中で忙しいのである。日本みたいなわかりやすい属国のことに本気になってるわけなかろうが……。それよりも中国ですよ。

・大阪で、校長の人事権無視して校内人事を選挙してましたけしからん、というニュースがあったと噂を聞いた→校長の人事権なんて校長が責任ひっかぶるための方便でしょうが……あ、ちがったか。校長がリーダーシップ発揮して大なたを振るうような非常事態がつづくような学校がろくな教育をやっているわけがない。これは逆も真で、だめな教員がおおいところほど校長の存在感が必要になる。で、そういうリーダーシップが必要な校長が必要だということにしておくと、かならず平の教員の中で「威張りたいアホ」が手練手管を用いて校長になろうとするという、およそくだらない競争が発生するのである。だいたい、人事権がだれにあるからなんやかんやとか、どうでもいいわ、子どもが成長してくれりゃ。

・ある程度の収入の人の残業代を0にしよう、あとの人も同意があれば残業代0にしよう法案が出てきたという噂を聞いた→労働者に「キミ残業代0でいいよね」という上司の脅しに「いやですよ」と言える人が何人いるというのだ。ここは19世紀のイギリスか?

・首相がメーデーに参加したという噂を聞いた→さすが安部首相、自分がアメリカの労働者だと自覚しておるな……。しかし、よく無事に官邸まで帰ってこれたな、日本人は優しいね。

・ポール・サイモン逮捕→さすが、アーチスト!

薔薇の葉と花との隙間をくぐって

2014-04-28 23:03:09 | 文学


その内に雌蜘蛛はある真昼、ふと何か思いついたように、薔薇の葉と花との隙間をくぐって、一つの枝の先へ這い上った。先には土いきれに凋んだ莟が、花びらを暑熱にねじられながら、かすかに甘いにおいを放っていた。雌蜘蛛はそこまで上りつめると、今度はその莟と枝との間に休みない往来を続けだした。と同時にまっ白な、光沢のある無数の糸が、半ばその素枯れた莟をからんで、だんだん枝の先へまつわり出した。

――芥川龍之介「女」


……薔薇を見に行こう

見える……菌たちよ……私にもっと何か言葉を……!

2014-04-27 19:06:14 | 大学


「もやしもん」が完結していた。
このユートピア物語は、いろいろとうまく出来ているのであるが、農学部のお酒造りの話だからまあ産業に地つづきの実学であるといってよいのと、ゼミに一年生から入れる?のと、菌が見える化(←この言葉はさぶイボが立つ)しているのと、しかもインフルエンザ菌に至るまでかわいいキャラだったことと、政治のことはあまり気にせずによかったことと、いろいろ……

実際のわれわれの世界は、もっと人間が漂流せざるを得ない要素ばかりである。お酒造りの代わりに文学論を社会に向けて発信しなけれならないがいつも観客は五人(←私だけ)、ゼミは4年生から(←漂流して甘い言葉にだまされて就職の良さそうなところに流れ着き……)、物事の仕組みは(菌)は見えない(この前、「お姫様細胞」が見えていた人もいたが、それはともかく「見える化」を標榜している研究をしている人はわたくしの経験から言ってどうもね……)し、真実は可愛い顔はしていない。

でも確かに大学には、まだかわいらしく安住できる自由が……

ジレンマではない

2014-04-27 07:55:17 | 大学


テレビで、東大の院生の古市氏などが進行役をしている「ニッポンのジレンマ」という番組があるのだが、むかし、十代しゃべり場?という番組を偶然見たところ、全員、「勉強できないので悩んでるのに、悩んでるので勉強が出来ないと思っている」あるいは「なにも面白いことが浮かばないので、他人に八つ当たりしてヒントをもらおうとしている」、現実的な真の抑圧を口に出来ない心のひん曲がった人間たちがしゃべりあっているのをみて、心底絶望してテレビを消した経験があるので――、比較的若い人たちが議論する古市氏の番組もその類ではなかろうかという危惧があり、一度も見たことはなかったのであるが、なんか今日は怠いので見てみた。「大学論」だったしね。

なんだ、案外、商人が混じっている割には、彼らも含めて普通のアカデミシャンばかりではないか。グローバル化で使えることばっかりやっててもしょうがない、基礎教養がないやつがコミュニケーションなんかとれるわけねえじゃん、インターンはやくやめろよロック・ルソー知らないやつが何やっても意味ねえよ、大学の改革(笑)がエビデンスを示さずに行われております(タスケテ~)、大学に入ったら高校よりも勉強してないとかむしろ国際的に孤立しすぎ、推薦入試で入ってくる学生って学力ないから駄目だよね、面接がマニュアル化するから人物重視入試やっても全く意味ないわw……などなど、教授会では全くでてこないが、一端廊下に出るとみんなが話している意見である(……あれ?そうかな?最近わたくしの周りではこういう意見すらなくなってきたような気がしないでもないか……)

だから、問題はこの先で、どうするかであるが……

例の与那覇氏は日本の入試制度の利点があったことを自覚していて……、入試が過去をリセットできる制度であることによって、階級差を流動化する役目をはたしていたとか、そのいみでは大学に入って遊んでもいいじゃんとか、述べていた。それに、旧制高校の時代とは違って、基本やる気のない学生ばかりということを考える必要があるとか……

ただ、これも大学の教員なら誰しも考えたことがある現状認識であろう。この現状認識によって、上記の様々なグローバル化や資本の論理の侵入によって引き起こされている不満に対して、立ち向かう姿勢がややぐらつくことは確かである。

しかし、やはり十代しゃべり場?と同じく、ある種の抑圧がかかっているように思う。さすがに与那覇氏は、「本当は大学の考えるべきことではなく、資本の側の問題だ」というような発言をしていたが、資本は資本である。昔から、そんなもんではなかろうか。われわれに対する本当の抑圧はもっと身近にあるのだ。ゼミ生とか、なんとか委員長とかなんとか部長とか、大学のお偉方とか、文科省の誰かとか、である。これらからの抑圧がどうにもならないのにグローバル化とか資本のせいにするのは、昔のマルクス主義と同じである。よって、上の不満に対しては次のような処方箋が考えられる。


・基礎教養がないやつがコミュニケーションなんかとれるわけねえじゃん→教養科目で六〇点以下を正直に不可にいたしましょう。

・インターンはやくやめろよロック・ルソー知らないやつが何やっても意味ねえよ→授業のかわりに就職活動、インターンに行こうとする学生を不可にしましょう。

・大学の改革(笑)がエビデンスを示さずに行われております→ばかばかしいプログラムなどの報告書は社交辞令ではなく、本気で書きましょう。書き直し要求が来たら拒否しましょう。

・大学に入ったら高校よりも勉強してないとかむしろ国際的に孤立しすぎ→勉強していない学生を卒業させなければいいのではないだろうか。

・推薦入試で入ってくる学生って学力ないから駄目だよね→推薦入試やめればいいわな

・面接がマニュアル化するから人物重視やっても全く意味ないわ→マニュアル化した回答を行った学生をすべて落とせば問題なし。


……現実的には、これらを行おうとすると、いろいろなところから脅迫や妨害が入る。それもひどいものがくる。これらが怖いからみな「ジレンマ」があるふりをしてしまうのである。

そういえば、番組中に、参考意見として例の文化研究で有名な東大の学者が出て意見を述べていたが、彼の発想は結果的にグローバリズムにも学問の発展にも寄与しないと思った。一見リベラルなのだが、こういう「越境的」な発想がひどい結果をもたらすのは、たとえばわたくしがいた大学などで実証済みである。

必要なのは、普通言われている中間集団より小さい単位のグループの孤立であり自由である。いきなり大学や組合や地域の復興を目指しても、もう占領されているからだめだろう。5人ぐらいからこつこつと自由になることが重要ではなかろうか。

……というわけで、まだ途中だったのだが眠くなったのでテレビを消した。

ちょっと一種の感じが

2014-04-23 23:00:32 | 文学


 湖水は静かだった。絵はがきによくあるヨットは一隻も出ていなかった。私達を載せたモオタア船だけが湖上にあって、水の面にガソリンの臭を漂わせながら、いやにエンジンの音を立て続けている。――漸く外人が目なかいに見えて来、その一番はずれには、なるほど赤い屋根の建物があって、その上には赤い旗がばたばたやっているのが認められ出した。
 モオタア船から上って、坂を登り切ると、すぐそれが分かった。レエクサイド・ホテルと云うからには、もう少し洒落た家かと思っていたら、なんの事はない、――丸木作りの、いとも粗末なバンガロオだった。私達は再び顔を見交した。ままよ、もうしようがないから、一晩だけでも我慢して泊って往こうと腹を据えて、私は妻の持っていたラケット入れを殆ど引ったくるようにして、玄関に立った。
 玄関の脇に二つ三つ木の椅子のある小さな土間があって、そこが酒場になっている。舶来物らしいウィスキイや葡萄酒の壜が並んで、壁には「Summer in Germany」というポスタアが掛かっているのが見える。ちょっと一種の感じがある。

――堀辰雄「晩夏」

貧困対野球

2014-04-23 07:22:10 | 映画


昔キアヌ・リーブスがでていた「陽だまりのグラウンド」という映画は、非常に後味の悪い作品であった。野球漫画でさんざ「貧困からの脱出」劇を学習しているために貧困と野球の対決(死と生の対立になる)という劇にわれわれが慣れていないのか……、アメリカの社会があまりにひど過ぎるのか……。ようするに、これはまだ「二十四の瞳」の世界ということなのか……。しかし、思うに大石先生が曲がりなりにもインテリで周りの子どもたちを含めた人間が労働者なのに対して、キアヌはギャンブルの借金に追われるという、貧困と死の世界の住人であり、それがその同じ世界にいながら辛うじて野球や学校に引っかかっている子どもたちに、野球を教えるということになり……、ここでキアヌがいろいろありながらちゃんとした人間に切り替わるところが非現実的というか……、やっぱアメリカには腐ってもコミュニティに支えられた市民運動があるのではないかという、われわれに対する絶望が湧いてくる次第だ。最後は駄目押しのように、教会での救済もあるしね……。まあ、あまりに暴力的な死の世界があちこちにあるからであろうが……。

ハリウッドは、一度、北朝鮮とかわれわれの世界をリアルに描いてみる気はないであろうか……

君が代いろいろ

2014-04-21 10:35:41 | 音楽
https://www.youtube.com/watch?v=_abyOGzml8Q

フランス人が元気よく演奏するとこうなる

https://www.youtube.com/watch?v=bRgvflOsL2M

元ナチスとの噂の指揮者が振るとこうなる

https://www.youtube.com/watch?v=Oyo94G6IB1M

完璧なアンサンブルでやるとこうなる

https://www.youtube.com/watch?v=0FiPn1cSeqk

近衛様たち

https://www.youtube.com/watch?v=sU4sdZQkzoE

学徒

https://www.youtube.com/watch?v=ZPN9OyzXj3k

とし

https://www.youtube.com/watch?v=c4c_FBKvcSg

演歌

https://www.youtube.com/watch?v=KecJ-6noBcg

やくざ映画の人

https://www.youtube.com/watch?v=AQMtP5pfbBc

不謹慎テクノ

https://www.youtube.com/watch?v=QvSBnAFGV90

日系8歳

https://www.youtube.com/watch?v=iFS1rHDOxEg

ものまね10連発

https://www.youtube.com/watch?v=TxO9k53IsMU

ウクライナ人

https://www.youtube.com/watch?v=fx3kvMwPSng

空襲なんぞ恐るべき

https://www.youtube.com/watch?v=dYzftkRZ00k

旧バージョン

https://www.youtube.com/watch?v=reh-2P7AP4M

↑Heidenröslein

これからも孤独

2014-04-20 06:00:12 | 文学


先日、ガルシア・マルケスが亡くなったそうである。マルケスについては高校時代に安部公房から教わった。『百年の孤独』はやっぱりすごい気がした。ちょうど『青い犬の目』の翻訳がでたので、買って読んだ。当時、私が「このような、道が舗装されていない時代には戻れない」と思ったのも事実である。もう幽霊も蟻に運ばれてゆく赤ん坊もあり得ないと。いまはその考えが間違いであったとつくづく思う。

なけりや、勝手にし給へ

2014-04-19 23:46:47 | 文学


「君は北京か、広東か」
「どつちでもない。おれはトウケウだ」
「トウケウ、トンキンか」
「日本の東京だよ」
「君は日本人か」
「当り前さ」
「そんなはずはない」
「なけりや、勝手にし給へ」

――岸田國士「世界覗眼鏡」