水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

世相ユーモア短編集 -48- 科学

2025年01月08日 00時00分00秒 | #小説

 科学の進歩が目覚ましい今の世相である。車が勝手に運転したりブレーキをかけたりするのだから空恐ろしい時代になったものだ。そのうち、運転席がいらなくなるんじゃないか? などと思ったりもする。
 西暦2100年のとある家庭である。
『ゴシュジンサマ、イツデモ、デカケラレマス…』
「そうか…。あと一時間ほどしたら出るから、よろしく頼む。暖かくしておいてくれ…」
『ハイ…』
 自家用飛行車と会話を交わした天川は、家屋の駐車場から室内へと姿を消した。キッチンでは妻が自動調理器のボタンをゴチャゴチャとテレビゲームのように器用に弄(いじく)っている。
「…もう食えるのか?」
「えっ? ええ…。これでOKだわ」
 妻が最終ボタンを押すと、調理機械達はシャカシャカと自動で調理を始めた。
「もう五分ほどで出来るから…」
「そうか…」
 天川は眠そうな声でそう言うと、大型スクリーン新聞に片手の指を向けた。すると今朝の新聞がパッ! と現れ、大映しになった。
「なになに…民自党が民新党に負けたって…。どぉ~~でもいいや。どうせ罵り合いをするだけだろ…」
 天川はスクリーン新聞に向けた指を右方向へ振った。すると、画面が変わり四コマ漫画が映し出された。
「これこれっ! これが楽しみなんだよ。ははは…今日も面白いぞ」
 そのとき、妻がまたボタンを押した。運搬機械達がセカセカとキッチン・テーブルへ料理を運び始める。辺りに美味そうないい匂いが立ち込める。
 ここまで未来の科学が発達していいのかどうか? の論議は別として、平和に暮らせる世相が存続していることを望むばかりです。^^

                   完


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世相ユーモア短編集 -47- 兜(かぶと)の緒(お)

2025年01月07日 00時00分00秒 | #小説

 勝って兜(かぶと)の緒(お)を締めよ・・と昔からよく言われるが、物事は勝利したあとが緩(ゆる)めば、瓦解(がかい)するから気を引き締めなさいという訓示である。日本海海戦で勝利した東郷司令長官が艦隊を去るときの訓示が有名だが、最近の世相を見れば、与党がガタガタになっておられて実に嘆かわしい。ガタガタになったあと、兜を引き締めても、もう遅いっ! という訳だ。^^
 とある町役場である。
「おいっ! ここに置いておいた万年筆、知らないかっ?」
 管財課の課長、横縞(よこしま)が前の席に座る課長補佐、砂尾(すなお)に小声で訊(たず)ねた。
「さあ? 見てませんが…」
「そうか…怪(おか)しいな。確か、デスクに置いたんだが…」
「はあ…」
 置いたんなら、あるでしょ…という顔で砂尾は小さく哂(わら)った。だが、そうとは言えないから、意味なく書類のファイルに目を通す。
「前のが傷んだから、娘が誕生日にな…くれたんだ…」
「はあ…」
 そんなに大事な物なら忘れないでしょ…と、砂尾は勝って兜の緒を締めよ顔で横縞をチラ見した。
「まあ、いい。そのうち出て来るだろ…」
「はあ…」
 いいんかいっ! と、ニヤけたタメ口顔で、砂尾はまた横縞の顔を窺(うかが)った。
 その後、万年筆が出てきたのか出てこなかったのか、私は知りません。^^ 横縞課長、管財課長なら勝って兜の緒を締めよ精神で、自分の物もしっかり管理しましょう!^^

                   完


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世相ユーモア短編集 -46- 人

2025年01月06日 00時00分00秒 | #小説

 私の子供の頃を顧(かえり)みれば、捨てる人は少なく、拾う人が多かったように記憶する。今ではもう死語となったバタ屋さんとか鋳掛(いかけ)屋さんといった商いを見かけたものである。敗戦後の物が少ない時代で、大事に使わねば買えなかったからだ。それが今の世相は使い捨てが横行する時代となっているのは、私達の世代としては実に悲しい現象といえる。『部品の保有期間が過ぎました。買い替えて下さい』の時代なのだ。ぅぅぅ…実に悲しいですっ!^^ 豊かさは 物と心が 反比例[ユーモア時事川柳・百選より]^^
 とある中流家庭である。
「弱ったわ…」
「どうした?」
「加湿器が傷んだんだけど、買い替えて下さいって、電気屋さんが…」
「別に傷んだようには見えんけどな…」
「10年以上前のだから部品がないんだって…」
「ふ~~ん…」
「どうしよう?」
「どうしよう? って、いるんだろ? 必要な物は買うしかないじゃないか。人は使い捨てって訳にはいかんけどな、ははは…」
 ということで、このご家庭では新しい加湿器が買い替えられることになった。めでたし、めでたし、とはなりませんが…。ぅぅぅ…。^^

                   完


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世相ユーモア短編集 -45- 圧力

2025年01月05日 00時00分00秒 | #小説

 サッカーでは、相手チームの選手にプレス[プレッシャー]をかける・・などと表現するが、要するに、ボールを蹴る相手チームの選手に圧力をかけて前進を阻(はば)む・・ことを意味する。
 どこにでもあるような、とある普通家庭の居間である。中年夫婦が語り合っている。
「検察は政府上層部の立件を無理と見たようだな…」
「まあ、それでも思い切ってやった方よ…」
「過去の疑獄事件で、『検事総長を指揮します』なんてのもあったな…」
「あった、あった! 法務大臣が闇の圧力で指揮権発動したやつね。懐かしいわっ!」
「今回は政治資金パーティの還流分が収支報告書へ記載されてなかった、というだけの話だが、大ごとになっちまったな…」
「パーティ収入の還流自体は罪にならないのよね…」
「そうそう。還流分を記載しなかったのが罪って話だ。検事もそう言ってる…」
「今回も法曹界に圧力が、かかったのかしら?」
「その件に関しまして、私(わたくし)は一切、存じ上げません…」
 見えない圧力が密かに今の世相の全方向へ蔓延(はびこ)ころうとしているようですね。^^

                   完


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世相ユーモア短編集 -44- 半煮え

2025年01月04日 00時00分00秒 | #小説

 最近の報道を顧みれば、なんとも歯切れの悪いニュースが駆け巡っている。災害報道の判明しない半煮えニュースはともかくとして、不確かな半煮えニュースがあとを絶たない。そのうち、『〇〇家の飼い犬ペロとお隣の飼い犬ナメが喧嘩をし、双方とも動物病院へ運ばれました。二匹とも命に別状はない模様です…』なんていう、どぉ~~でもいいような半煮えニュースが堂々と報じられる時代がやってくるのかも知れない。^^ 疑心暗鬼になる半煮え報道は最低限にし、今の低成長の時代、フフフ…と明るく哂(わら)えようなトピックス的によく煮えたニュースを多く流して欲しいものです。^^
 とある普通家庭である。日曜の朝、空腹の鼻頭(はながしら)は新聞を読みながら菓子を食べ漁(あさ)っていた。というのも、昨夜、飲み歩いて午前様で帰宅し、朝寝坊したからである。午前十一時過ぎに起きれば、当然、家族の朝食は済んでいる。というか、すでに昼食が迫っている時間帯だった。
「なになに…派閥解消! …はるか昔、三木総理が言ってたやつだな…」
 そこへ妻がキッチンから入ってきた。
「結局、いつの間にか復活して、今まであったんでしょ!」
「まあ、そういうことだ…」
「今回も?」
「たぶん、黙阿弥だろうな…。半分くらいの派閥は解散するらしいが、残って存続する派閥は政策集団として認めるって言ってるからな…」
「半煮え、ね…」
「そう、半煮え。ああ、そういやお汁粉の小豆(あずき)は、もう少し煮た方がいいぞ…」
「…はい」
 半煮え報道が家庭内を駆け巡れば、余りいい世相にはなりませんよね。^^

                   完


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世相ユーモア短編集 -43- 明暗

2025年01月03日 00時00分00秒 | #小説

 世相が明るいと人々は生きやすいし、暗ければ当然、生きにくくなるのは明々白々だ。最近の世相は? と観望すれば、…と言わざるを得ない。敢(あ)えて言わないが、…まあそういうことである。人の場合だってそうだ。心理の明暗は自ずと現れる。心理を表さない人は神様仏様か達人だろう。^^
 とある囲碁の本戦が幽霊の間(ま)で行われている。幽玄の間ではなく幽霊の間である。^^ 猫野柴丸名人×万力強棋聖の一局である。部屋の空調は効いて暖かいのだが、日射しが遮(さえぎ)られているからどことなく暗く、ゾクッ! と背筋が冷えるような不気味だ。だが、碁を打つ対局者の二人棋士はそんな不満を言っている場合ではない。一局集中、碁盤をジィ~~っと見つめるだけである。
 猫野名人が三々へ碁石をスゥ~っと、か細く置いた。黒番だから暗く、白番だから明るいという訳ではない。^^
「黒、17の三…」
 記録係の女性がヤンワリと、いい声で告げる。AI好みの一手である。^^ 万力棋聖は、そうきたか…と、ニンマリした心の眼差(まなざ)しで熟考する。
「万力棋聖、残り7回です…」
 時計係が渋い声で呟(つぶや)くように告げる。万力棋聖が放った次の一手は本局を左右する分水嶺となった。しばらくすると、両棋士の心理に明暗が現れ始めた。だが外見上には、まったく現れない。静まり返った幽霊の間の棋戦は、世相の明暗とは関係なく打ち進められていく。
 贔屓(ひいき)になりますから、敢えて結果の明暗は言わないことに致します。^^

                   完


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世相ユーモア短編集 -42- お漬物販売

2025年01月02日 00時00分00秒 | #小説

 最近の世相は、-40-にも書いたが、コンプライアンス強化の方向で突き進んでいる。生き辛(づら)くなった昨今には、ただただ溜め息が漏れるばかりである。お上(かみ)[与党政府]は本当に庶民の暮らしを真摯(しんし)に考えているのだろうか…と、ついつい疑いたくなる。^^
 とある地方にある道の駅である。販売目的で毎年、販売されているお漬物販売が食品衛生法の法強化で販売できなくなり、今年で終わることになった。知った情報によれば、食中毒防止のためだそうである。
 車を止めた旅行者がお漬物を買おうとしている。
「ええ~~っ!! 今年で終わりなのっ!?」
「そうなんですよ、お客さん。施設基準が厳しくなりましてね、作れなくなったんですよ…」
「ったくっ!! 議員さん連中は何してるんだろうねぇ~」
「パーティ券販売じゃないですかっ!」
「おばちゃん、上手(うま)いっ!!」
「お漬物も美味(おい)しいですよっ!」
「シャレも上手いっ!! だけどさぁ~、今まで一度も食中毒にならなかったけどねぇ~」
「…毎年、通って頂いて有難うございました」
「いや、こちらこそ…」
 客は料金を支払ったあと品を受け取り、外へ出ようとしてたが、立ち止まると振り向いた。
「政治が食中毒だよねぇ~、ははは…」
 客はひと言、付け加えて踵(きびす)を返し、豪快に呵(わら)い捨てながら外へ出ていった。
 確かに、今の世相は政治が食中毒でド偉いことになってます。^^

                   完


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世相ユーモア短編集 -41- 計画的

2025年01月01日 00時00分00秒 | #小説

 計画的を法学的に言えば心象作為と表現するらしい。実に堅苦しい表現だが、分かりやすく言えば、自分で考えて実行する・・となる。。計画的に先々を考えて行う行為はいいのだが、事件性のある悪い行為の場合は計画的犯行となり、心象作為犯と呼ばれるらしい。世相を見れば、この手の行為があとを絶たない[ポイ捨ても含みます^^]。物事を考える人の心理まで他人は見通すことが出来ず、防げないのは困ったことだ。まあ、政治面でも責任者のみが立件で起訴され、御屋形様はお咎(とが)めなし・・となる嘆かわしい世相なのである。指揮権発動…なんていう計画的犯行がお上で行われていたとすれば、小市民の私達は救われず、踏んだり蹴ったりだ。ぅぅぅ…私がやりましたっ! と名乗り出る議員さんが望まれる。シャキッ! としよう、シャキッ! とっ!^^
 とある家庭内の裁判所である。家庭裁判所ではない。^^
「…よって思量するに、被告の計画的犯行とは断ぜられず、本件は下級審へ差し戻す…」
 偉そうに法衣[ダッフル・コート]を纏った裁判長役の恭之介が襟を正し、判決文を読み上げた。被告役の恭一は裁判長に深々と頭を下げ、一礼した。原告席に座る検事役の正也はチェッ! という渋面(しぶづら)で被告役の恭一を見る。被告席に座る弁護士役の未知子は、よかったわっ! とばかり、満面の笑みである。こうも対象的な両席の温度差を知ってか知らずか、後方に陣取る傍聴席の記者役、愛奈は色めき立って報道仕事にセカセカと慌て始める。
 曖昧な判断が続くのは、人が神様でも仏様でもない証拠なのですが、関係者の方々はシャキッ! と襟を正して欲しいものです。悪い計画的な話題が多い昨今の世相は戴(いただ)けません。^^

 ※ 新春を寿ぎ、風景シリーズ[湧水家]の方々にご出演頂きました。^^

                   完


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世相ユーモア短編集 -40- コンプライアンス

2024年12月31日 00時00分00秒 | #小説

 世相は残念なことに目に見えないコンプライアンス強化の方向へ少しづつ進んでいる。繰り返すが、実に残念な国の施政である。まあそれも、その方向を止めだてる組織が存在しないのだから、致し方ないといえばそれまでなのだが…。事件絡みの与党議員さん達も然(さ)りながら、それ以外の議員さん達にも猛省を促したいっ! などと偉そうに言える身の上ではない年金暮らしなのだが…。^^
 どこにでもいる中年男性の二人が、路地の片隅で寒さを避けながら話し合っている。
「少しづつだぜ…」
「コンプライアンス強化だろ?」
「ああ、そうだ。俺はガスから電気にした…」
「液化ガス取締法が強まったからな…」
「点検、点検って、議員さんを取り締まりたいよっ! まったく嫌な時代になっちまった!」
「だなっ! そういや、血圧基準の80~130が75~125になったぜっ!」
「なら、今まで何を測ってたんだっ! ってなるよなっ!」
「それは言えるっ!」
「おっ! いけねえやっ! 冷えてきやがったっ!」
「八尾卯で美味(うま)い出汁(だし)のかけうどんでも啜(すす)るかっ!」
「そうしよう! あそこは刻み葱が無料で、入れ放題だからなっ!」
「コンプライアンスの強化がねぇ~やっ!」
「ははは…違(ちげ)ぇ~ねぇ!」
 二人は哂(わら)いながら背を丸め、繁華街の方向へ寒そう立ち去った。

                    完


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世相ユーモア短編集 -39- 天水(てんすい)

2024年12月30日 00時00分00秒 | #小説

 他の短編集でもタイトルとしたが、天水(てんすい)とは、人の力ではどうすることも出来ない自然現象を指し、アレコレと画策するのは無駄なことを意味する。今の世相の一例を挙げれば温暖化が該当する。何年受験しても不合格となるのも天水だ。もう、やめなさい! と天が忠告しているのである。^^
 山室(やまむろ)は今年で五回目の大学受験に臨もうとしていた。^^
「山室君、来年はやめた方がいいよ…」
「先生、今年は受かりそうな気がするんですが…」
「君は毎年そう言ってるじゃないか」
「はあ、それはまあ、そうなんですが…」
 卒業した高校の進路指導を担当する教諭と、山室は今年も同じ教室の一角で話し合っていた。五年目である。^^
「天水には逆らえんよ、山室君」
「天水? 先生、なんですか、それは?」
「だから天水だよ。降る雨は止められんだろ」
「ええ…」
「今の世相は、何をするにも天水が増えてる」
「たとえば?」
「ポイ捨てゴミだよ。君が受験を諦めんようなもんだ、ハハハ…」
 山室は、何がハハハだ…とは思ったが、生徒と教師の関係ではどうしようもく、思うにとどめた。
 天水となる事柄は、奮闘せずに早くやめた方がいいようです。しかし、それにしても住みにくくなった世相ですね。^^

                   完


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