「…なんなんですよ。すっかり、いい仲になったようでして…」
「まあ! どなた達が?」
小鳩(おばと)婦人は扇(おうぎ)を手元へ下ろし、訝(いぶか)しそうに里山を見た。
「ですから、うちの小次郎とみぃ~ちゃんが…」
小鳩婦人は、しばらく黙っていたが、理解したのか頷(うなず)いた。
「ああ、そういうことざまぁ~すの? ちっとも気づきませんでしたわ。あら、嫌だ!」
婦人は扇をパタつかせた。
「なんとかなりませんか? 頼まれたもので…」
「どなたに?」
「いや、その…小次郎に」
小次郎が人間語を話せる猫だということは、今や世界で知れ渡っていたから、当然そのことは小鳩婦人も知っていた。
「そういうことは、本人同士、いえ、本猫同士に任せるしか仕方ないんじゃござ~ませんこと?」
「と、いうことは、ご婦人も二人の仲をお認めになると?」
「ええ、もちろん。世界的な国際猫の小次郎君なら、文句はござぁ~ませんことよ、ほほほ…」
話は小次郎の心配とは裏腹に、順調に纏(まと)まっていった。
「通い婚というのは、古く平安の御代(みよ)には、ごく当たり前だったそうですから、小次郎を通わせても別に不自然ということはないですよ」
里山は歴史好きだったから上手(うま)い具合に小鳩婦人へ返した。