『いい感じだね…』
褒(ほ)めベタな小次郎は、とりあえず猫語でニャニャっと返した。
『なによ、それ…。この鳴り具合、いいでしょ?』
みぃ~ちゃんは、もう一度、首を軽く振り、チリン! と鳴らして、鈴をアピールした。
『ごめんごめん! いい音色だよ』
こりゃ、所帯を持てば尻に敷かれそうだ…と小次郎は漠然と思った。みぃ~ちゃんは、ニコッと口毛(くちげ)を動かし、少しご機嫌をよくした。
『それよか、僕と君は平安朝の通い婚になりそうだよ』
小次郎は、このままでは危ういと話題を転じた。
『通い婚? なに、それ?』
みぃ~ちゃんは、まったりとフロアへ身体を沈め、寛(くつろ)ぎ姿で訝(いぶか)しげに訊(たず)ねた。
『僕がみぃ~ちゃんの家へ通うってことさ…』
『来たっていう合図は? それに、私(あたし)にも都合があるから…』
小次郎がその後、みぃ~ちゃんから得た詳細情報では、小鳩(おばと)邸には、高級感が漂う家風のスケジュールが、いろいとあるようだった。
『まあ、ともかく…通うことにするよ』
『うん! まあ、話は今後、詰めるとして、今日はおめでたい席だから、硬(かた)い話はナシにしましょう』
『そうだね…』
二匹は、まったりと寝そべって寝息を立て始めた。いつやらも言ったと思うが、猫族はよく眠るのである。一日の三分の二は眠るのが普通だ。特に、この日のように居心地がいいと、すぐ眠ってしまうことになる。