水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

世相ユーモア短編集 -84- 紛(まぎ)らわしい

2025年02月13日 00時00分00秒 | #小説

 最近の世相は紛(まぎ)らわしいことが多くなった。その弊害の一例がパソコンのメールである。いかにも関係がある内容で、よくよく思えば心当たりがないメールなのだ。うっかり読み込んでしまえば被害を被る・・といった手合いのメールで実に紛らわしいから困る。^^ 迷惑メールで消去すればいい訳だが、巧妙に釣り糸を垂れているのである。フィッシング詐欺…私は魚かっ! とついつい気分を害していたが、まあこれも世相の流れか…と、最近は右から左へ流しています。左から右の場合もありますが…。^^
 雲尾は朝からブツブツと呟きながら怒っていた。
「どうしたの?」
 山の神的存在の妻が台所から居間にやってきて、ブツブツ言っている夫に気づいた。
「いや、なんでもない…」
「なんでもなかったら、ブツブツ言わないでっ!」
「はい…」
 青菜に塩である。夫は山の神には弱かった。^^
「どうしたのよ…」
 気になったのか、山の神の方から訊(たず)ねてきた。
「いやなに…。つい今し方、電話がかかってな。雲井さんのお宅ですか? って言うんだ。いや違います、雲尾ですっ! って言ったらな…」
「なんて言ったのよ」
「ははは…紛らわしいですね。失礼しましたで、プツンさ…」
「そりゃ、私でも怒るわ」
「だろっ! 間違い電話をかけて呵(わら)うこたぁ~ないよなっ!」
「まあ、そうね…」
「それにしても、紛らわしい苗字もあるんだなぁ~」
 夫の怒りは、いつの間にか静まった。かくしてこの家庭の朝食は、紛らわしくなく、いつものように始まった。
 平和ですねぇ~雲尾さんっ!^^

                   完


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