昨日の夜は、映画『TIME/タイム』のDVDを観ていました。
近未来。
遺伝子操作により人類は25歳で成長が止まり寿命をコントロールして無限に生きることができるようになった。
25歳以降の命の時間をやり取りできるシステムが構築されて通貨の代わりに残りの寿命をやり取りして経済活動を行っている。
全ての人は25歳でまず一年間の寿命を与えられる。それからは経済活動を通して残りの命の時間が決まる。長生きしたければ命の時間を手に入れなければならない。
スラム街に住む主人公の男はいつも残りの命が24時間を切っている貧困状態にある。
ある日、彼は富豪の男を成り行きで助けて百数年の寿命を受け取ることになり……。
監督は、アンドリュー・ニコル。
出演者は、ジャスティン・ティンバーレイク、アマンダ・サイフリッド、キリアン・マーフィー、オリヴィア・ワイルド、マット・ボマー、アレックス・ペティファー、ヴィンセント・カーシーザー、ジョニー・ガレッキなど。
寿命を視覚化するアイディアは、現在のアメリカの状況を写し取ろうとした意図から発生したような気がする。
ラストに写る建物はおそらく連邦準備銀行。
メッセージは「貧困層にもっと金を出せ」かな。
「99%の富を1%の人が握っている」という不満を反映しています。
この映画の時間はお金のメタファーですね。
ただ、メッセージを強調するならこのお話の流れでなくてもよかった。
そしてエンターテイメントを強調するなら、あっと驚くような解決方法を提示すべき。
「99%の富を1%の人が握っている」状況に出した答えが「お金持ちが金を出さないなら奪ってしまえ。奪ったお金は貧困者にばら撒いてしまえ」では主人公が考え無しの人間になってしまう。
各シーンは魅力的なのに全体を俯瞰すると伏線が未回収になったり主人公像がぶれまくったりしているのは出発点が間違っているから。
現在の状況に不満があるのは分かるけど感情に任せて物語を作ると作品はぶれてしまう。
エンターテイメントに徹するか、メッセージ性を強く打ち出すのか。どちらかに徹底すればよかったのに。
SF映画なのだから極端な状況を作り出せるけど、この映画の世界は凡庸。「お金持ちが悪い」だけの単純なもの。
そして結論も凡庸。現実的には無理だけどSFなのだから物語として思い切った結論を出すこともできるのに「お金持ちが悪い。悪いお金持ちからお金を奪って破滅させてしまえ」は凡庸。
お金儲けを否定するだけなら、福祉に回す富は生産されなくなる。
そうなると結局困るのは貧困層。でもこの映画ではその発想は無くお金持ちからお金を奪って破滅させればよいだけで突っ走る。
お金持ちを味方に付ける発想や福祉に回す為にお金を稼ぐ方法論を考えればいいのに。
その方法論は世界中で考えられていて頑張っている人はいるのに。
お金を稼ぐことに嫌悪感を持っている人が人を救うことができるのかな?
分け与えるものを生み出せないならともに飢えていくしかない。奪い取るだけなら限界がある。
ただ分かっていてもどうすることもできない焦燥感があるのかな? その部分を表現したかったのかしらん。
でも感情に任せて胆略的な答えに走るのは嫌だなぁ。
各パートで魅力的なシーンが多いのに。
主人公の男の考え方に一貫性がない。世界の真実を明らかにする方向に物語が進むと思わせてそちらには進まない。物語を進める為にご都合主義すぎる展開がある。伏線を回収しない。
寿命を視覚化するアイディアに囚われてしまったのかもしんない。
あるいは述べたいメッセージに囚われたのかもしんない。
どちらかを捨てれば話に整合性ができてもっと面白くなったかもしんない。