8/24(月)、シネ・ウインドで「蟻の兵隊」を観てきました。
もともと2006年の映画なのですが、戦争に関するドキュメンタリーということで、終戦記念日のある8月にシネ・ウインドの戦争特集の中で上映していました。
看板に貼ってあった新聞の切り抜き。
予告編はこちら。
この映画は、第二次世界大戦の残留兵の一人である、奥村和一さんを追ったドキュメンタリーです。
残留兵というのは、第二次世界大戦が終結しても軍の命令で中国に残留させられた日本兵の人達のこと。
彼らは、内戦に巻き込まれ中国共産党と戦わされるという、残酷な末路を辿ったそうです。
しかし、国は彼らを自主的に残留した脱走兵とみなし、補償をまったく行わなかったとのこと。
奥村さんも、国を相手に裁判を続けていますが、一度も補償が認められたことはありません。
戦後補償の問題は知っていましたが、残留兵の問題は初めて知ったので本当にひどい話だなと思いました。
奥村さんが会いに行く、当時を知る残留兵の仲間達も高齢だから、裁判中に亡くなったり寝たきりになったりしています。
奥村さんがお見舞いに行く場面も登場するんだけど、寝たきりの元残留兵の方がおそらく認知症で会話することができず、それでも奥村さんに言葉にならない声を上げる場面は胸に刺さるようでした。
しかも、証拠となる当時の資料もほとんど残っていないわけです。
そこで映画の後半、奥村さんは証拠を探して中国へ行きます。
当時、残留兵達は罪のない中国人の方々を殺したりしていたと奥村さんは語り、被害者が加害者になってしまう戦争の恐ろしさを感じました。
それから何十年も経ち、奥村さんが中国の人達と交流し、奥村さんの事情を知った上で中国の人から「あなたは悪い人には見えない」と言われる姿には、一言では言い表せないものがありました。
そして奥村さんは中国でとある証拠を発見するんだけど、結局裁判で補償は認められなかったのです。
この映画は2006年のものですが、このあと奥村さんが2011年に補償をされないままに亡くなっていたことを上映後に知り、悲しかったです。
ところで、映画には8月15日、終戦記念日の靖国神社も登場するんだけど、日本軍のコスプレをして「天皇陛下バンザーイ」とか言ってる人達に普通にドン引きしたし、それを戦地で苦しい日々を強いられた元残留兵の奥村さんが見ているのも居たたまれなかった。
元軍人の小野田寛郎さんが演説をしていて、奥村さんが「侵略戦争を認めるんですか?」と言うと逆ギレされる、という場面もやるせないものを感じました。
とにかく、戦争は色んな形で被害者を産んできたし、彼らを保障してこなかったのが日本であり、そして当時を知る人達がどんどん亡くなっていっているという現実を痛烈に突き付けられる映画でした。
14年前の映画だけどまったく知らなかったので観られて良かったし、「野火」とともに8月に戦争特集上映をしてくれるシネ・ウインドは本当にいい映画館だなと思いました。