舞い上がる。

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ちひろBLUESこと熊谷千尋のブログです。

映画「君が世界のはじまり」観てきました。

2020-08-14 22:57:09 | Weblog


8/13(木)、T-JOY新潟万代で「君が世界のはじまり」を観てきました。
新潟市内では、T-JOY新潟万代のみでの上映。





予告編はこちら。



映画監督で小説家でもあるふくだももこさんが、自身の短編小説「えん」「ブルーハーツを聴いた夜、君とキスしてさようなら」を自ら監督して映画化。
ふくだももこさんの前作「おいしい家族」が面白かったし、前作、今作ともに主演の松本穂香さんも好きなので、観に行くのを楽しみにしていました(にもかかわらず、上映最終日に観てしまった)。

女子高生の縁(本名は「ゆかり」だが「えん」と呼ばれている)は、男にモテまくる不良少女な琴子と怠惰な毎日を過ごしています。
そんな中、縁は、琴子を好きなサッカー部の岡田と、琴子が一目惚れした業平の2人と妙に仲良くなるという、不思議な人間関係が展開していきます。

一方、二人暮らしの父を嫌う純は、ブルーハーツを聞いた時、伊尾に一目惚れするが、彼にもまた秘密があります。
唯一の遊び場であるショッピングモールさえも潰れかかっている退屈な地方都市を舞台に、縁と琴子と岡田と豪平のパートと、純と伊尾のパートを軸に、6人の高校生達の悩みや不安や葛藤を一人一人丁寧に描いた行き場のない青春群像劇が展開していきます。

そんな何も起こらないかに見えた町で、ある日、同じ高校の生徒が親を殺害する事件が起こります。
行き場のない退屈な日常が永遠に続きそうな町の雰囲気は、突然殺伐としたものになりますが、高校生の彼らにとってそんな同じ高校で起こった殺人事件さえも、どこか遠くの出来事のような無力感を誰もが抱えているわけです。

その夜、たまたま出会った縁、岡田、業平、純、伊尾の5人が(琴子がいないところもポイント)ショッピングモールに忍び込んで一夜を過ごすことに。
それまでの退屈な閉塞感や無力感、微妙に絡み合う複雑な彼らの人間関係を吹き飛ばすかのように、彼らの不安や葛藤が爆音のブルーハーツとともに爆発していくクライマックスの爽快感が凄かったです。

いわゆるストレートな青春モノだと、スポーツや音楽などに打ち込んだ若者達が最後のクライマックスで試合やライブが展開する、というものもあります。
そういう青春映画って、若者達が目標に挑戦したり、夢を叶えたり、社会に対する叫びを表現したり、それによって彼らが成長していく部分にこそ感動があるわけです。

でも、この映画彼らは、地方都市の閉塞感、社会を変えることなどできないという無力感を常に抱えています。
でも、彼らの叫びは誰にも届かないとしても、そんなことにはとっくに気付いているとしても、それでも叫ばずにはいられないわけです。

どうしようもない気持ちを抱えた彼らが、開き直ったかのようにヤケクソで熱唱するブルーハーツがぐっとくるんですよね。
今までの青春映画とは違うけれど、すごく気持ちが分かるなと思ったし、ブルーハーツというバンドの楽曲が時代を超えて若者達の心を動かすのは、ブルーハーツ好きとしても感動的でした。

やがて彼らは朝を迎えるのですが、何も変わらないようで少しだけ何かが変わったかも知れない朝という感じがして、それがすごく良かったです。
いつか終わる青春に、突然訪れた一生忘れないかも知れない鮮烈な体験を描いたストーリーになっていたと思います。

松本穂香さんはじめ若手俳優達の繊細な演技に引き込まれるいい映画でした。
あと、映画に登場する大人達も、特別な存在ではなくそれぞれの人生を生きている人達であり、若者達とちゃんと彼らなりに向き合って接している人達に描かれていたのも良かったです。
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