2020年最初の映画は、1/4(土)に去年見逃していた「カツベン!」を観てきました。
予告編はこんな感じです。
大正時代、映画にまだ音がなく、いわゆるサイレント映画だった時代に、日本では上映される映画の横であらすじを読み上げる、活動弁士、いわゆるカツベンが活躍していた。
そんなカツベンを主人公とした映画で、予告編を見た時点では、映画を愛する貧しい青年がカツベンとして成長して活躍していく…みたいなストーリーを想像していたのですが、実際の映画は確かにそういう要素もあったものの、もっとハチャメチャな内容でびっくりしました。
まず、主人公は幼少期からカツベンに憧れているのですが、大人になったらカツベンに成りすまして映画を上映して民衆を引き付け、その裏で村の家々で空き巣を働く窃盗団の一員になってしまう、という時点で、かなり想像と違うストーリーでした。
そんな主人公が、ひょんなことから窃盗団から逃亡し、小さな映画館に身分を隠して潜り込んで住み込みで働きながら、少しずつカツベンの才能を発揮して活躍していくのですが、主人公を含めて一癖も二癖もある登場人物たちが次々と登場し、複雑に絡み合いながら様々な騒動が巻き起こります。
確かに、悪役っぽい人物は登場するのですが、じゃあ逆に主人公が完全に正義かと言えば彼は彼で元窃盗団の人間だし、それ以外の登場人物の誰もがなんていうか、勧善懲悪ではなく、全体的にいい奴/悪い奴の境界線がなく、善悪がごちゃまぜなのです。
嫌な奴かと思ったら憎めない一面があったり、いい奴かと思ったら意外と裏では悪賢いことをしていたり、ダメな奴だと思ったら意外なところで活躍したり、カッコいい奴が意外なところでドジだったり、とにかく全員が一筋縄ではいかない人物ばかりで、全体的にアクが強く、それでいて全員憎めなくて魅力的なんですよね。
ストーリーも、コメディかと思ったらサスペンスだったり、ラブストーリーだと思ったらアクションだったり、とにかくあらゆるジャンルの面白さが何でもアリでめちゃくちゃでてんこ盛りで詰め込まれていて、これ、僕が思うに、周防正行監督が「映画の映画」を撮るにあたって、もうあらゆる映画の面白さをとにかく一本の映画にぶち込んで、周防正行監督の「映画ってこんなに面白いんだぜ!」という映画愛を全力で体現していた映画なんじゃないかなと思いました。
というか、昔の映画ってわりとそういう面白さを何でも詰め込む的なちょっと強引だけど勢いのあるパワーを持っていたんだと思うし、それを現代で再現したのかな、なんてことも思ったりしました。
実際劇中でも、映画のフィルムがめちゃくちゃになってしまって、仕方なく全部の映画の細切れのフィルムを強引につなぎ合わせて、めちゃくちゃな映画を作ってしまう、という場面が登場するのですが、この「カツベン」という映画自体がまさにそういう映画なわけで、あれはメタ的な面白さだったのかな、なんて思いました。
ちなみに、その場面ではめちゃくちゃな映画も、主人公のカツベンの力でお客さんが大喜びで拍手喝采するような名作にしてしまうという、まさに映画の奇跡、そしてカツベンの奇跡を表現した場面になっていました。
そんな主人公、元は泥棒で偽物のカツベンをやっていた人物なんだけど、映画に対する愛もあれば最終的には本物のカツベンさえも越えることができるという、本当に映画らしい夢のある物語だったなと思います。
それ以外にも、当時の今よりもずっと大変だった撮影や上映の舞台裏などもかなり細かく見せてくれるから、映画を作れること、観られることって本当に幸せなことなんだなあと感じられる映画でもありました。
そんなカツベンの主人公を演じているのは、昨年は「チワワちゃん」「愛がなんだ」でも大活躍した成田凌さん、ちょっと癖があって胡散臭いけど何だかんだ憎めない奴、みたいな役が本当によく似合う魅力的な役者さんですよね。
窃盗団のハッタリ活動弁士なんだけど、活動弁士への愛は本物でプロ級の腕前を見せていく、という役回りとかストーリーも、彼が演じるから説得力が感じられるし愛すべきキャラクターにもなっているという、完璧にドンピシャでハマり役でした。