まつもと演劇祭を振り返る!
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ああ、もうすぐ終わるよ…ここまで来たら一気に書くか…
「まつもと演劇祭を振り返る!演劇裁縫室ミシン『ぱっとみて鯖』」に続いて登場するのは、シアターTRIBE『ヒコクMen!』ですよ。
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シアターTRIBE、まつもと演劇連合会のBOSSこと永高さんの劇団です。
2012年の春に公演した「機甲街」に続いて、二回目の公演。
機甲街は、福島の原発事故にインスパイアされて作られた作品で、封印された放射性廃棄物が数百年後の未来に過去の遺物として発見されるっていうSF作品でした。
これを見た時、すごいロックだなあって思ったんですよ。
音楽のジャンルじゃなくて、芸術によって社会問題を世に訴えるっていう、広い意味でのロックね。
で、今回の「ヒコクMen!」もやっぱりメッセージ性の強いロックな作品でした。
物語は、マグニチュード9.5の地震が来て崩壊した世界から始まる。
震災そのものというよりは、震災後に何が起きたのかよく分からなくなってしまう混乱を描いているのが、東日本大震災を思い出させます。
主人公のタケオという男性も、何がよく分からなくて取り敢えず旅に出る。希望も何もない、混乱から生まれる旅です。
そこで一人のショウコという少女と出会うのですが、彼女はタケオの水を奪って去っていく。
状況をイマイチ飲み込めてなくて結果的に損をしてしまうタケオと、何をしてでもしたたかに生き残ろうとするショウコ。
正反対の人間ですが、どちらも震災後の混乱には出て来る人間なんだろうなあって考えると、すごくリアリティがあったし、演技もすごく良かったです。
で、タケオはそのうちデキンボーイズという、謎の組織(?)に捕まってしまう。
彼らによると、震災後の日本は他国から侵略されており、彼らの目的は侵略者から国を守り、新しい帝国を作ることらしいのだが…?
しかし、彼らの描かれ方は国のことを考えてる割にはあまりに盲目的すぎてコミカルに描かれてるから、ちょっと笑っちゃう。
いや、ぶっちゃけ笑えない状況なんだけど、役者さんたちが面白いから笑っちまう。(山脈の巨体、伊藤くんのぶっ飛んだ演技は最高!)
また、彼らの地主という設定でちんさんが謎の思想家みたいな怪しい女性役で出てきます。
雰囲気は、宗教の勧誘に来たオバサンという感じなんですが、タケオに説教をしては金を巻き上げ、戦えと諭します。
そして、ゆっけが地主の犬という設定で出て来るんですが…これがどう見ても人間で全く意味が分からないんですが…実は伏線でもある。
登場人物はこんな感じです。
ところで、話題をちょっと変えますけど、ボスの描く作品の魅力って、なんとも言えないダサさになると思うんですよ。
登場人物の話し方を見ても、淡々と日常系でも、演劇的なカッコ付けた言葉使い系でもなくて、そのどっちとも付かない。
よく考えると舞台でしかあり得ない言葉と、現実でこういう言葉使ってる人いそうってのの中間の、絶妙なところを攻める。
それがちょっと聞いてるとぱっとしない、ダサくも聞こえるんだけど、妙にリアリティがあって、人間臭い。
衣装に関しても、例えばデキンボーズの衣装はジャージとかで、決して格好よくない。
でも、それが妙に人間臭い、そんな魅力ががシアターTRIBEというかBOSSの作品にはある気がします。
で、話を物語に戻しますが、タケオの前に再びショウコが現れる。
ショウコは「タケオに襲われた」と都合のいいハッタリで、連中を味方に付ける。
かと思えば、気付けば彼女は、奴らから教祖と祭り上げられ、そして決戦の前夜、彼女はノリだけで演説をして、男達を奮い立たせる!
このシーン、完全にハッタリなんですが(まんま「ジークジオン!」とか言っちゃってるし)、うっかり見てると感動しそうになるんですよ。
何だろう、「それでもこの一瞬だけはみんなの心が一つになった」みたいな気がするんですよね。
こういう一瞬の謎の感動がカタルシスを産んだりすることが演劇ではある気がするけど、この作品においては寧ろトラップです。
期待は見事に裏切られ、物語は決してハッピーエンドに向かわない、ここが物語の醍醐味であり魅力である。
感動が大きければ大きいほど、そのあとの展開は残酷なものになっていきます。
いつしか戦友みたいになっていた、帝国主義者の怪しい男達は、敵国との銃撃戦で全滅。
そこに、先程まで犬として存在していたゆっけが突然語り出す。
日本国はすでに消滅し、生き残っている日本人は全て中国とオーストリアの大陸に強制移住させられる。
これまでの争いは全て、移住をスムーズに行うために仕組まれていたと。
日本がなくなる。あまりに信じられない事実を受け入れられず、脱走するタケオ。
そこはすでに敵国の侵略が始まった日本である。
逃げ惑うタケオの前に、またもやショウコが現れる。
しかし、ショウコは「助けて!」と悲鳴を上げる。
一度だけとはいえ、かつて出陣を前に共に踊った相手は、自らの生命のためにタケオの命を犠牲にしたのだ。
ショウコの去った後、タケオを兵隊たちが取り囲む。
銃に撃たれる間際、タケオがそれまで一度も開かなかったナップザックを開くと、そこからは大量の札束が出て来る。
ずっと大事に取っておいたものは、もう何の役にも立たない。
そしてタケオは札束を撒き散らしながら、「デタラメだ!デタラメだ!」と叫ぶ。
札束は舞台上に広がり、観客席にも降ってくる。そして暗転…
どうよ、この救いの無さ!
誰一人助からず、日本は消滅していく。
敢えて言うならショウコは生き残ったけど、ああやって誰を犠牲にしてでも生き残ろうとする人間でなければ、生き残れない残酷な世界。
そんな世界を望む人間はもちろんいないだろうけど、うん、絶対に起こりえないとはきっと誰も言えない。
東日本大震災後、不況、各国との外交、政治不信、などなど、日本に対する不安は少なからず誰もが持っているのではないだろうか。
そんな日本人の心に突き刺さる衝撃の演劇、シアターTRIBE「ヒコクMen!」。
いやー、永高さんは本当ロック野郎ですよ。
そんなロック野郎も楽しみにしてるかもしれない劇団@nDANTE「お勝手の姫」
本番まで、あと17日!
世界の終わりはお勝手の姫!
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ああ、もうすぐ終わるよ…ここまで来たら一気に書くか…
「まつもと演劇祭を振り返る!演劇裁縫室ミシン『ぱっとみて鯖』」に続いて登場するのは、シアターTRIBE『ヒコクMen!』ですよ。
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シアターTRIBE、まつもと演劇連合会のBOSSこと永高さんの劇団です。
2012年の春に公演した「機甲街」に続いて、二回目の公演。
機甲街は、福島の原発事故にインスパイアされて作られた作品で、封印された放射性廃棄物が数百年後の未来に過去の遺物として発見されるっていうSF作品でした。
これを見た時、すごいロックだなあって思ったんですよ。
音楽のジャンルじゃなくて、芸術によって社会問題を世に訴えるっていう、広い意味でのロックね。
で、今回の「ヒコクMen!」もやっぱりメッセージ性の強いロックな作品でした。
物語は、マグニチュード9.5の地震が来て崩壊した世界から始まる。
震災そのものというよりは、震災後に何が起きたのかよく分からなくなってしまう混乱を描いているのが、東日本大震災を思い出させます。
主人公のタケオという男性も、何がよく分からなくて取り敢えず旅に出る。希望も何もない、混乱から生まれる旅です。
そこで一人のショウコという少女と出会うのですが、彼女はタケオの水を奪って去っていく。
状況をイマイチ飲み込めてなくて結果的に損をしてしまうタケオと、何をしてでもしたたかに生き残ろうとするショウコ。
正反対の人間ですが、どちらも震災後の混乱には出て来る人間なんだろうなあって考えると、すごくリアリティがあったし、演技もすごく良かったです。
で、タケオはそのうちデキンボーイズという、謎の組織(?)に捕まってしまう。
彼らによると、震災後の日本は他国から侵略されており、彼らの目的は侵略者から国を守り、新しい帝国を作ることらしいのだが…?
しかし、彼らの描かれ方は国のことを考えてる割にはあまりに盲目的すぎてコミカルに描かれてるから、ちょっと笑っちゃう。
いや、ぶっちゃけ笑えない状況なんだけど、役者さんたちが面白いから笑っちまう。(山脈の巨体、伊藤くんのぶっ飛んだ演技は最高!)
また、彼らの地主という設定でちんさんが謎の思想家みたいな怪しい女性役で出てきます。
雰囲気は、宗教の勧誘に来たオバサンという感じなんですが、タケオに説教をしては金を巻き上げ、戦えと諭します。
そして、ゆっけが地主の犬という設定で出て来るんですが…これがどう見ても人間で全く意味が分からないんですが…実は伏線でもある。
登場人物はこんな感じです。
ところで、話題をちょっと変えますけど、ボスの描く作品の魅力って、なんとも言えないダサさになると思うんですよ。
登場人物の話し方を見ても、淡々と日常系でも、演劇的なカッコ付けた言葉使い系でもなくて、そのどっちとも付かない。
よく考えると舞台でしかあり得ない言葉と、現実でこういう言葉使ってる人いそうってのの中間の、絶妙なところを攻める。
それがちょっと聞いてるとぱっとしない、ダサくも聞こえるんだけど、妙にリアリティがあって、人間臭い。
衣装に関しても、例えばデキンボーズの衣装はジャージとかで、決して格好よくない。
でも、それが妙に人間臭い、そんな魅力ががシアターTRIBEというかBOSSの作品にはある気がします。
で、話を物語に戻しますが、タケオの前に再びショウコが現れる。
ショウコは「タケオに襲われた」と都合のいいハッタリで、連中を味方に付ける。
かと思えば、気付けば彼女は、奴らから教祖と祭り上げられ、そして決戦の前夜、彼女はノリだけで演説をして、男達を奮い立たせる!
このシーン、完全にハッタリなんですが(まんま「ジークジオン!」とか言っちゃってるし)、うっかり見てると感動しそうになるんですよ。
何だろう、「それでもこの一瞬だけはみんなの心が一つになった」みたいな気がするんですよね。
こういう一瞬の謎の感動がカタルシスを産んだりすることが演劇ではある気がするけど、この作品においては寧ろトラップです。
期待は見事に裏切られ、物語は決してハッピーエンドに向かわない、ここが物語の醍醐味であり魅力である。
感動が大きければ大きいほど、そのあとの展開は残酷なものになっていきます。
いつしか戦友みたいになっていた、帝国主義者の怪しい男達は、敵国との銃撃戦で全滅。
そこに、先程まで犬として存在していたゆっけが突然語り出す。
日本国はすでに消滅し、生き残っている日本人は全て中国とオーストリアの大陸に強制移住させられる。
これまでの争いは全て、移住をスムーズに行うために仕組まれていたと。
日本がなくなる。あまりに信じられない事実を受け入れられず、脱走するタケオ。
そこはすでに敵国の侵略が始まった日本である。
逃げ惑うタケオの前に、またもやショウコが現れる。
しかし、ショウコは「助けて!」と悲鳴を上げる。
一度だけとはいえ、かつて出陣を前に共に踊った相手は、自らの生命のためにタケオの命を犠牲にしたのだ。
ショウコの去った後、タケオを兵隊たちが取り囲む。
銃に撃たれる間際、タケオがそれまで一度も開かなかったナップザックを開くと、そこからは大量の札束が出て来る。
ずっと大事に取っておいたものは、もう何の役にも立たない。
そしてタケオは札束を撒き散らしながら、「デタラメだ!デタラメだ!」と叫ぶ。
札束は舞台上に広がり、観客席にも降ってくる。そして暗転…
どうよ、この救いの無さ!
誰一人助からず、日本は消滅していく。
敢えて言うならショウコは生き残ったけど、ああやって誰を犠牲にしてでも生き残ろうとする人間でなければ、生き残れない残酷な世界。
そんな世界を望む人間はもちろんいないだろうけど、うん、絶対に起こりえないとはきっと誰も言えない。
東日本大震災後、不況、各国との外交、政治不信、などなど、日本に対する不安は少なからず誰もが持っているのではないだろうか。
そんな日本人の心に突き刺さる衝撃の演劇、シアターTRIBE「ヒコクMen!」。
いやー、永高さんは本当ロック野郎ですよ。
そんなロック野郎も楽しみにしてるかもしれない劇団@nDANTE「お勝手の姫」
本番まで、あと17日!
世界の終わりはお勝手の姫!
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