安倍首相、9条全面改正、今やらずしていつやるのですか?[HRPニュースファイル1862]
http://hrp-newsfile.jp/2017/3275/
幸福実現党・たつの市地区代表 和田みな
◆日本を取り巻く「現実」
2009年以来、幸福実現党が訴えてきた北朝鮮の核ミサイル、中国の軍事力による現状変更が「現実の脅威」として、わが国の平和と安全を脅かしています。
幼い頃から日本史が好きで、過去の時代に想いを馳せることの多かった私ですが、元寇や黒船のような日本の危機は歴史物語ではなく、いま起こっている「現実」でもあるのだと実感することが多くなりました。
2009年に「新・日本国憲法試案」を世に問うたわが党としては、「有事の際、愛する家族や大好きな日本を守ることができるのか」ということを考えた時、事ここに至るまで憲法を改正することが出来なかったということが悔まれてなりません。
特に、「憲法9条では日本やアジアの平和は守れない」という気持ちをお持ちの方は多いのではないでしょうか。
◆9条はどのように解釈されているのか
改めて条文を読んでみましょう。
日本国憲法
第二章 戦争の放棄
第9条
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
9条に関しては、様々な解釈がありますが、政府の立場としては、侵略戦争の放棄、個別的自衛権の保持、集団的自衛権を限定的に保持、戦力不保持、専守防衛というのが基本的なスタンスです。
◆9条の正しい解釈
9条に関して最も大きな問題は、第1項が禁止している戦争とは何を指すのか、第2項でいう戦力不保持とはどのようなことか、です。
第1項の原文は、「不戦条約」と「国連憲章」であると言われています。
この2つの原文が指している「国権の発動たる戦争」の放棄は、明らかに「侵略戦争」のことであり、「自衛権」は全ての独立国に認められた固有の権利であることから、日本国憲法下においても、同じように解されるべきです。
また、憲法前文には、「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」という文言があります。
ゆえに、第1項前段部分は、「積極的に世界平和に貢献する」ということであると解釈すべきです。
つまり、第1項は、積極的平和主義の下で、侵略戦争を放棄したものであり、それを受けて第2項は、侵略戦争のための軍隊や戦力を持つことはできないということを示していると言えます。
◆9条と自衛隊
しかし、長年「一項において自衛戦争も含めてすべての戦争が放棄されていると解すべきであると説く見解(乙説)も有力である」(芦部信喜『憲法』)というのが、日本の憲法学の主流見解となってきました。
このような解釈の下では、第2項は全面的な戦力不保持を意味することとなり、自衛隊は「違憲」という批判を浴びてきたのです。
そのため、政府はこれまで、自衛隊は「実力部隊」であって、憲法9条第2項が保持を禁止している「戦力(軍隊)」ではない、と苦しい「言い訳」をしてきました。
「戦力」ではない「自衛力」を持った自衛隊は、自衛のための必要最小限度の実力しか持つことはできず、専守防衛に徹し、その行動は常に制限されてきたというのが現状なのです。
このままでは、自衛隊が臨機応変に危機に対処することは困難です。
今年5月に安倍首相が示した「9条への自衛隊明記」「加憲」が「保守」のコンセンサスとなりつつありますが、これまで述べてきたように、現行の9条を残したまま「自衛隊を憲法上の存在にする」ということでは、何も変わらないのは明らかです。
やはり、首相の「加憲」は、実現の可能性を最優先した妥協の産物であると言わざるを得ません。
◆9条改正は今やるべき
「保守」の方々の本音も、必ずしも「加憲」にあるとは思えません。
あくまでも9条全面改正への第一段階である、と多くの改憲派は自分の意見を押し殺し、「憲法改正」という悲願達成を目指しているように感じられます。
しかし、国民の大半が自衛隊の存在を認めている中で、「自衛隊明記」を行うことの労力や時間、また何より、時代認識を考えた時に、やはり9条は全面改正し、最低限「自衛権の保持」と「自衛のための軍隊の保有」を明記すべきであると考えます。
本音を言えば、今から9条改正を行っても間に合わないかもしれない、という危機感はあります。そうであっても、現状にできる限り対応しつつ、早急に取り組まねばなりません。
毎日、北朝鮮の核ミサイルの恐怖の中で暮らさざるを得ない時だからこそ、9条全面改正の必要性を多くの国民に訴えるべきです。
むしろ、改憲を目指す政治家であるのであれば、いま、正々堂々と訴えずしていつやるのか、と思うのです。
「安倍首相、9条全面改正、今やらずしていつやるのですか?」
そう問いたいと思います。
<参考文献>
・長谷川三千子著『九条を読もう!』(2015.9 幻冬舎)
・潮匡人著『誰も知らない憲法9条』(2017.7 新潮新書)
http://the-liberty.com/article.php?item_id=13498 幸福の科学出版
《本記事のポイント》
・独裁国家の価値観が世界を覆うか否かの分岐点にある。
・朝鮮有事のどさくさで、中国が尖閣を奪う危険性がある。
・アメリカが攻撃したら、日本はすぐ「支持」を表明すべき。
(プロフィール)
元陸上自衛隊西部方面総監、日本安全保障戦略研究所上席研究員 用田和仁
(もちだ・かずひと)1952年、福岡県生まれ。防衛大学校を卒業後、陸上幕僚監部教育訓練部長、統合幕僚監部運用部長、第7師団長などを歴任。元陸将。現在、日本安全保障戦略研究所上席研究員。共著に、『日本と中国、もし戦わば』 (SBクリエイティブ)がある。
国連の安全保障理事会はこのほど、核実験を行った北朝鮮に対する制裁決議を採択しました。
これに対し、北朝鮮の朝鮮アジア太平洋委員会は14日に声明を発表。「アメリカを焦土化し、報復手段を総動員して恨みを晴らそう」とし、日本についても「4つの島でできた国は、主体(チュチェ)思想の核爆弾で海に沈めなければならない。日本はもはや、わが国の近くに存在する必要がない」としました。国際社会は警戒が必要です。
ただ、元陸上自衛隊西部方面総監の用田和仁氏は、こう語ります。「日本が忘れてはいけないのは、北朝鮮の脅威の次には、中国の脅威が待っているということです」。同氏の緊急寄稿を2回に分けて掲載します。今回は後編です。
◆ ◆ ◆
◎今は独裁国家の価値観がアジアを覆うか否かの分岐点
秋の中国共産党大会の後、二期目をスタートさせる習近平・国家主席は独裁を強め、対外的に力を背景とした強圧的な行動に出てくることが予想されます。
今年6月に北京で行われた、自衛隊OBと中国の軍人などが40年近く交流している「中国政経懇談会(中政懇)」に筆者が参加した際、中国側の出席者は盛んに、「アメリカはアジアから出て行くべきだ」と繰り返し述べていました。
習近平政権は今後、アメリカに対して、アジアから手を引くことを陰に陽に迫り、日本には、経済的にも安全保障の面からも中国の影響下に入るよう迫るはずです。日米がそれを受け入れなければ、対決姿勢を鮮明にしていくでしょう。
今、日本とアメリカが共に、国際社会で北朝鮮と中国に好き勝手させないという覚悟を決め、行動しなければ、今後、独裁国家である中朝両国の価値観が世界を席巻してしまいます。
そうした歴史的な転換点に立っているという自覚を、日本の国民、マスコミ、政治家は持っているのでしょうか。
残念ながら、日本が主体性を失っている以上、トランプ米大統領の決断と行動に期待するしかありません。世界の覇権国であるトランプ大統領や米国民が、北朝鮮や中国に膝を屈し、屈辱的な状況を受け入れることはない、そう信じたいです。
◎「日本として」存在し続けることが難しくなる
問題は日本です。
繰り返しになりますが、今、北朝鮮に立ち向かえる国はアメリカしかありません。そして、アメリカによる北朝鮮への攻撃はアメリカの防衛であり、同時に日本の防衛でもあります。
もし仮に、今年中にアメリカが北朝鮮に何もしなければ、アメリカに対する世界や地域の信頼は地に落ちるとともに、日本には、北朝鮮と中国の属国になるか、アメリカにも頼らない自主防衛の道を進むか、の2つしか選択肢はなくなります。
確かに、アメリカが北朝鮮を攻撃すれば、日本にも北朝鮮のミサイルが落ちてくる可能性はあります。しかし、この眼前の切迫した脅威に対して、日本が現状以上の有効な対策を講ずる努力を怠り、「脅威を跳ね返す」という国民の一致した覚悟がなければ、中長期的に日本が「日本として」存在し続けることは難しくなるでしょう。
◎朝鮮有事のどさくさで、中国が尖閣を奪う危険性
したがって日本は、ただちに損害を最小限にする手立てを講じると同時に、来るべき、脅威の「本丸」である中国の覇権的な拡張主義を抑止できる防衛力を緊急に構築しなければいけません。合わせて、北朝鮮・中国に打ち勝つ戦略の下、日米同盟の体制も至急、再構築する必要があります。
この時、「当面作戦」として北朝鮮危機の事態対処を第一にするも、「将来作戦」である中国への備えを同一軸線上で考え、備えることが必要です。すなわち、本丸は中国の脅威に対する抑止・対処のための体制を強化することであり、それを軸として、北朝鮮危機の事態にも併せて対応できるように考慮することが肝要です。
今、日本が行うことが、北朝鮮危機の事態に特化した抑止・対処態勢であってはいけません。
例えば、アメリカが北朝鮮に対する軍事攻撃を加えた際、どさくさに紛れて、中国の海上民兵が尖閣諸島に上陸し、占拠する可能性もあります。アメリカは混乱の中で手を出せず、日本も対応できず、実効支配を許してしまう。そうした危険性も考えておく必要があります。
◎アメリカが攻撃したら、すぐに日本は「支持」を表明すべき
以上のような観点を持ちつつ、北朝鮮危機の事態において日本がなすべきことは、主に以下の5つに集約できます。
1.北朝鮮からのミサイル攻撃やゲリラ・特殊部隊の攻撃に対する国民の防護
2.ミサイル防御の緊急構築
3.邦人保護・救出(韓国からの避難、北朝鮮における拉致家族救出作戦の実施)
4.朝鮮半島からの難民対処(国境・離島防衛)
5.米軍の攻撃支援、米軍基地防護
北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長は、過去に何度も日本へのミサイル攻撃を示唆しています。ですから、今回の北朝鮮をめぐる問題で、たとえアメリカが核を含んだ本格的な攻撃を北朝鮮に仕掛けたとしても、日本はすぐに全面的な支持を表明しなければいけません。
そうしなければ、その後に起こり得る、北朝鮮や中国による日本への攻撃から、アメリカは守ってくれなくなります。
◎日本は躊躇せず「有事」と認定し、態勢を整える必要がある
また、朝鮮半島で大きな動きがあった場合は、日本政府は躊躇することなく「有事」と認定し、遅滞なく日本全土に防衛出動を下令し、迅速に対応できる態勢を整える必要があります。
最後に、21世紀の国際社会及びアジア・太平洋地域における安全保障上の最大の脅威は、中国のグローバルな覇権的拡張の動きであることを認識しなければいけません。その抑止・対処を基本として、日本は日米同盟を基軸に、切迫した安全保障環境に適応した実効性のある防衛戦略を構築し、現実的で具体的な防衛政策を強力に推進すべきです。
直近の課題に対処するためには、憲法改正などを実現する余裕はないことから、的確な国民防護と強固な日本防衛のため、自衛隊法をはじめ、領土・領海・領空の保全などに関する未整備な国内法を整備し、緊急の措置を講じることが肝要です。(終わり)
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