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HTS支部 時給制への不利益変更撤廃を求める裁判 控訴審判決を迎えるにあたって

2018年11月13日 16時13分12秒 | 添乗員・旅行業界

(11月4日 東部労組第45回定期大会で訴えるHTS支部)

「偽装みなし労働」をめぐる裁判で出された最高裁の判断をねじ曲げる時給制導入の撤回を求めて東部労組HTS(阪急トラベルサポート)支部が2015年11月に提起した裁判の控訴審の判決が11月15日、東京高裁で言い渡されます。

判決を迎えるにあたって、原告のひとりであるHTS支部大島組合員のメッセージを掲載します

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2018年11月15日、東京高等裁判所において判決が出されます。
この裁判は、2008年から2014年にかけて争った添乗員の残業代を巡る前裁判に続く2度目の訴訟です。

価格競争が激化する中、現地ガイドやアシスタントを雇わずに経費削減を図り、あれも取り入れこれもアピールし付加価値の業務もどんどん増え添乗員の負担は大きくなる一方でした。
長時間労働であることは言うまでもなく、またそれら増えた業務のための事前の準備にも時間を費やさなければならないし、もうへとへとでした。
それなのに定額の日当のみが支払われるだけで、残業代の概念もありませんでした。
添乗員の平均年収は業界団体である社団法人日本添乗サービス協会(TCSA)の調査が示すとおり大変低いものであり、今年4月に事務局長に就任された横尾治彦氏が驚くほどのワーキングプアぶりであるというのが実態なのです。

参考添乗員の「働き方改革」、ツアーに与える影響は?-TCSA事務局長に聞く
http://www.travelvision.jp/interview/detail.php?id=83059
(業界向け情報ネット配信Travel Vision より)

前訴訟は、せめて残業代が支給され生活が向上するよう、また労働時間に応じた残業代が支払われるようになれば今度はその削減に乗り出し業務が軽減されるようになるということを期待して臨んだものでした。
長い時間をかけ裁判を闘った結果、2014年1月の最高裁判断でようやく添乗員の残業代の存在が明らかとなったわけです。

ところが会社(阪急トラベルサポート)はそれを機に、それまでの日当制から時給制に変更し、その時給額は12時間ないしは13時間で割ったものを基準に新たに設定したというのです。
1日の労働時間がそれ以上に及ぶ日もざらにあるので、確かに長時間になればなるほど以前より増収であるはずなのですが、往復にして約24時間もの拘束を受ける飛行機移動が、片道2時間ずつ、計4時間分の時給しか支払われなくなり(直行便の場合)、以前と同額の収入を維持するためには、すでに1日4時間の残業は想定されている上に、さらに20時間の残業で穴埋めする必要があります。そうして日当制の時とほぼ同じ収入になるよう設定したと会社は胸を張って言うのです。

8日間の欧州ツアーでは、休日労働を含め平均40時間の時間外労働が発生するというのは横尾氏の発言の通りであり、月2本のツアーに添乗すると過労死ラインぎりぎりになるのです。もっと欲しければ文字通り、「死に物狂いで」もっと働けということです。

私たち添乗員は、日常から離れ、遠い憧れの地での休暇を安全、円滑に、そして楽しく過ごしていただくための手助けを業務とし、日々一所懸命に取り組んでいるつもりです。
「8時間で業務終了、帰ります!」となるわけがないことは百も承知です。
けれど、それにも限界というものがあります。人間だから。

例えばあるスイスツアーのツェルマットでの1日。
朝5時半の日の出に合わせ、絶景ポイントに希望者を添乗員がご案内。その後朝食のあと、標高3千メートルを超える展望台にご案内。下山して昼食をはさみ、さらに高い展望台へのオプショナルツアーへ。下山後夕食オプションでチーズフォンデュとワイン飲み放題の夕べ。ホテル着は21時頃でした。

例えばある中欧ツアーのブダペストでの1日。
希望者に朝食の前の温泉にご案内。朝食後、通常の夕食までの観光スケジュールをこなし、夜のオプショナルツアー、夜景の美しいドナウ川イルミネーションクルーズへ。夏場の日没は22時過ぎであり、21時半から約1時間のクルーズを終えてホテル着は23時頃。

例えばあるフランスの1日。
朝7時半にパリのホテルを出発し、途中ルーアンでガイド無し観光、昼食。その後長いバス移動を続けモンサンミッシェルに着いて夕食。その後希望者ライトアップにご案内。

長時間労働が連日であることもよくあり、また夜遅くまでスケジュールが設定され、それでいて翌朝早い出発であることも少なくありません。睡眠時間もスケジュールに加えて欲しいです。
このような長時間労働やインターバルの短いものは、頭の回転を鈍らせ大変危険です。うっかり気を抜いてしまった瞬間に荷物や大事なものが盗まれたり、判断力が低下しミスを犯し、厳重注意、あるいはしばらく仕事を干されてしまった同僚もみてきました。
こうした長時間労働を解消する策として、以前はそうだったように、オプショナルツアー等には専任のガイドを付け任せたらよいと思うのです。
冒頭で記述した経費削減の極みが度を超えて、今、危険を呼んでいるのです。
朝日やライトアップ鑑賞などは、かつては個々の添乗員の自主的なサービスで、その時の天候を考慮しながら参加者を誘い合わせ、喜ばれれば添乗員冥利に尽きるというもので、みせどころでもありました。それが旅程補償の対象となると、どんなコンディションでもご案内することが義務となります。
ずっと以前の常識的な状態に戻るだけで、危険に向かわなくて済むのです。

派遣先旅行会社の自主的な対処は期待できません。たとえ認識や意識を持ってもらえても、それは一時的なもので、担当が変わればすぐにまた添乗員が人間であることを忘れられてしまいます。
有期雇用契約の更新が繰りかえされ5年を超えた時、無期契約に転換できるという労働契約法も、正社員への移行を促すための改正であったはずですが、最近は雇い止め等に関する相談が相次いでいると何かの記事で読みました。残念ながら、これが現在の日本の企業の品格なのです。だからこそ、「法」できちんと筋を通すことが求められるのです。

TCSAは、添乗員の低収入を把握しています。TCSAは、添乗員の長時間労働も把握しています。
派遣先に派遣料の値上げや時間外労働の軽減を働きかけることが必要としながらも、労働時間に上限を設けるのは懸念材料だとも言っています。
何が問題なのか、本質を見ていない気がします。
労働時間の把握、管理を放棄して「事業場外みなし制」を主張してきた業界ですから、高度プロフェッショナル制度の職種枠や年収の下限が段階的に広がり引き下げられていけば、きっとそれを採用することを真っ先に名乗りを上げるのでしょう。
長年闘って勝ち取った前裁判の正義の判決を、重く受け止め守っていくべきと私は切に感じます。人間が人間らしく生きながらえていくために大切なこと。
時間外割増賃金は、会社側に課せられたペナルティであるはずだから、そのペナルティを大目にみることは納得できません。時間外労働を減らす手段はあるのだから。

残業代を計算するにあたって、これまで労働基準監督署でも、労働審判においても、前訴訟の1・2審においても、日当は8時間分のものであったという判断は揺るぎのないものでありましたが、今裁判の1審は12~13時間で割ったものを基準として設定した時給額でも「不利益にはあたらない」という驚くべき判決でした。
それでいて飛行機移動の長い拘束時間は日当の補償もしないなど、明らかに私たちにとっては不利益であり、まったくフェアではありません。

11月15日に控訴審判決が言い渡されますが、それ以降も、私たち東部労組HTS支部は添乗員の生活と地位の向上のための働きかけを続けます。

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