阪急交通社 確定した労働委員会命令を実質上履行せず
労働委員会命令の形骸化を許さない!
中労委は厳正な対処を行うべきです!
■団体交渉の経過
阪急交通社は昨年12月16日、中央労働委員会(中労委)の申し立てにより東京地方裁判所が12月5日に発した緊急命令に基づき、組合が同12月11日に申し入れた団体交渉を応諾する旨回答してきました。
【経過】
・HTS支部に勝利判決!阪急交通社の団体交渉拒否 裁判所も不当労働行為と認定
http://blog.goo.ne.jp/19681226_001/e/f726874ffe21f82de212bf144e1bb153
・阪急交通社 「団体交渉に応じる」との回答!
http://blog.goo.ne.jp/19681226_001/e/e56d42a074a8b1a27270b3a3a622ba4a
これに基づき、今年1月10日に第1回団体交渉が行われました。
【詳細】http://blog.goo.ne.jp/19681226_001/e/340c3ce2dd0ff6522f1fde19774316da
そして2月24日には第2回団体交渉が行われました。交通社は1月24日の「事業場外みなし労働」の添乗業務への適用を否定する判決・判断をうけ、労働時間の管理を行う旨回答し、現在その準備に入っており、なるべく早く実施したい旨を表明しました。
そして組合は、労働時間管理の具体的方法等について今後も団体交渉で協議することを求めたが、驚くべきことに交通社はそういった議題での団体交渉には今後応じない旨を明言しました。組合はこれに対し強く抗議したが、会社は態度を変えようとはしませんでした。
この日の団体交渉において交通社が「今後、組合との団体交渉には応じない」とした「理由」は以下のようなものでした。
1.労働時間管理をするかしないかが団体交渉のテーマであって、「労働時間管理を行う」と会社が表明した以上、団体交渉は終了する(以下「理由1」)
2.中労委の命令は会社の労働基準法違反を前提に団体交渉応諾義務を認めている。従って、会社における労基法違反が解消されたことにより会社の使用者性も消滅する(以下「理由2」)
3.労働時間管理の具体的方法は会社が決定するものであり、義務的団交事項ではない(以下「理由3」)
■団体交渉後の経過
2月28日、会社は中労委命令の取り消しを求めて提起した行政訴訟につき、訴えの全部を取り下げる旨、東京高等裁判所に訴えの取下書を提出しました。これにより、第一審東京地方裁判所の判決が確定し、労働委員会命令は確定判決によって支持された(=確定した)命令となりました。
組合は4月22日、交通社に対し、議題を詳細に記した団体交渉申し入れ書を送付しましたが、交通社は同28日、団体交渉を拒否する旨回答してしてきました(上画像)。
■交通社は実質上、確定した労働委員会命令を履行していない
そもそも労働委員会命令は、「会社が団体交渉に応じなければならないのは労基法違反が解消するまで」等、団体交渉に応諾すべき期間を限定してはいません。加えて、仮に会社の主張する団交拒否理由2に即したとしても、理由2は団交拒否の理由とはなりません。交通社における労基法違反はいまだ是正されてはいないからです。すなわち、交通社は労働時間の管理をいまだ実施しておらず、HTS支部組合員は現在も最高裁が否定した「事業場外みなし労働」のもとで時間管理をされることなく労働しています。また、時間管理がいまだ行われていないことに起因し、実労働で計算して支払われるべき残業代はいまだに支払われていませんし、長時間労働も改善されていません。よって、仮に交通社の主張する理由2に即したとしても、交通社の団交応諾義務は消滅してはいないことになります。
また、労働時間管理の具体的方法については義務的団交事項です。
そもそも、中労委命令において「事業場外みなし労働時間制によることなく、労基法第32条の法定労働時間ないしは三六協定で定めた時間外労働時間を超えることのないように派遣添乗員の実労働時間を把握し、かつその実労働時間が法定労働時間内に収まらない場合には時間外労働時間を算定するという要求事項(労働時間管理に関する要求事項)」については「労働時間という基本的な労働条件の管理に関する事項であるから、義務的団交事項となるというべきであ」ると明確に判断されていますし、学説においても、義務的団交事項とは「『構成員たる労働者の労働条件その他の待遇や当該団体的労使関係の運営に関する事項であって、使用者に処分可能なもの』と表現することができよう」(菅野和夫「労働法」第5版)、「時間(労働時間)、休息(休憩・休日・休暇)・・・などが労働条件の代表的なものである」(同)とされています。
また、組合が求める「労働時間の管理」とは「長時間労働の抑制」であって、その意味では組合員の健康に直結する問題です。その点、健康被害をどのように防ぐか=長時間労働をどのように抑制するか=労働時間管理の具体的方法、ということであり、これが義務的団交事項に該当するのは明らかです。
以上のとおり、交通社は形式的には団体交渉に応じてはいますが、労働委員会命令をねじ曲げて解釈し、実質上、協議を拒否していることは明らかであって、確定した労働委員会命令を履行していることにならないことは火を見るよりも明らかです。
会社が実質上、労働委員会命令を履行していないことで、HTS支部組合員の長時間労働は解消されていないし、また、長時間労働解消の契機も失われることになります。加えて、労働委員会が発した命令および東京地裁が緊急命令を発し団結権を擁護せしめようとする意図、ないし労働委員会制度および緊急命令制度そのものの意義が没却されることにもなります。
■中労委は命令の実質上不履行に対し厳正な対処を!
確定した労働委員会命令を履行しない(守らない)ことについて、労働組合法は以下の罰則を定めています。
<労働組合法第28条>
救済命令等の全部又は一部が確定判決によつて支持された場合において、その違反があつたときは、その行為をした者は、一年以下の禁錮若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する
そして、上記罰則を適用するにあたり、労働委員会規則は以下のように規定しています。
<労働委員会規則第50条の2>
会長は、前項第五号の規定に該当するときは公益委員会議の決定により使用者の住所地を管轄する地方裁判所に、同項第六号の規定に該当するときは公益委員会議の決定により検察官に、遅滞なく、その旨を通知しなければならない
※ 「第六号の規定」=確定判決により支持された命令に使用者が従わないとき
交通社の対応は、「確定判決により支持された命令に使用者が従わないとき」に実質上該当するのは明らかです。だとすれば中労委は上記労働委員会規則に従い、「公益委員会議の決定により検察官に、遅滞なく、その旨を通知しなければならない」はずです。そして検察は中労委の通知に基づき、ただちに交通社を起訴すべきです。
組合は5月20日、中労委宛に要請書を送るとともに、5月23日には中労委を訪問し交通社の実質上の命令不履行に対し厳正な対応を求める要請を行いました。
阪急交通社は確定した労働委員会命令に従ってHTS支部との団体交渉を再開せよ!
中労委は阪急交通社の実質上の命令不履行に対し、厳正な対応を行うべきです!
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