蔵書目録

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『東京歌劇舞踊団公演 パンフレット』 常盤座 (1925.4)

2021年03月12日 | 演劇 貞奴、松井須磨子他

東京歌劇舞踊團公演
         パンフレット
                常盤座   


  面白い歌劇

  佐々紅華氏作並に曲
 第一 オペレット  一幕
  ジャコモ・プッチーニ氏作曲
  徳永政太郎氏翻譯
 第二 歌劇 お蝶夫人 マダム・バターフラー 二幕 
  奥山昌平氏編曲 
  ジャツ・ルボーフ振附
 第三 舞踊 サロメ 一幕
  佐々紅華氏作
 第四 オペレット カフェーの夜 一幕
 第五 小品 六種 

  大正十四年四月二十九日初日 
  午前十時開場 
     晝夜通し二回
   御入場料
  特等     ‥‥‥ 金壹圓參拾錢
  一等     ‥‥‥ 金九拾錢
  二等(椅子席) ‥‥‥ 金五拾錢 
  自由席    ‥‥‥ 金三拾錢

 淺草公園 常盤座

東京歌劇舞踊團

  田谷力三
  大津賀八郎
  柳田貞一
  黑木憲三
  澤マセロ
  宇津美淸
  糸井光彌
  福井茂
  川田和夫
  相島誠
   〇
  淸水金太郎
   ー
  淸水靜子
  天野喜久代
  澤モリノ
   〇
  木村時子
  相良愛子
   〇
  園鶴子
  逗子靖子
  松山浪子
  富士野登久子
  三井好子
  小野メリ子
  花園綾子
  吉野八重子
  竹内麗子
  藤本咲子   

  ヘロド王の宮殿

 ヘロド・アンチバス(ユダヤ王)        黑木憲三
 ヨカナアン    (豫言者)        澤マセロ
 若きシリア人   (近衛の大尉)      桐島誠
 ヘロデアス    (王妃)         竹内マリ子
 ヘロデアスの小姓             逗子靖子
 ナアマン     (首斬役人)       河村博
 サロメ      (ヘロデアスと前王との娘) 相良愛子
 その他舞姫奴隷               多勢

    奥山昌平氏編曲
    ジャツ・ルボーフ氏振附
 第三 舞踊 サロメ 一幕

       ヘロド王宮殿の一部

 ベロド王宮殿の一部 衛士等四五人が、猶太 ユダヤ 王ヘロドアンチバスが酒宴を催して居る内殿の見張をしながら、内殿から聞こえる響きを聞いて、何て騒 さわぎ だらう、あんなに吠えているのは一體何處の獸だい‥‥‥とか、あれァ猶太人だよ、彼奴 きやつ 等は何時 いつ でもあれだ、仲間同士で御宗旨の議論をやって居るのだ‥‥‥とか、王樣は陰氣な顔をしてゐらっしゃる‥‥‥等とか話して居ると、ヘロド王のやけ付く樣な淫 みだら な瞳を逃れて、王妃と先王との間に生れた王女サロメが、酒宴の席から露台 バルコン へ出て來て、ほんとうに此處は淸々して氣持がいゝ、やっと息がつけるとほっとして、酒宴の席に居る猶太人が希臘人、埃及人、羅馬人などの無作法に愛想をつかし、月を見て居るのが一番いゝなどと云ふ。 
 そして、空井戸に捕はれて居る豫言者ヨカナアンの聲を聞くと、井戸の鍵を若いシリア人が預って居るのを知り母上の身上に就いて恐しいことを言って居る豫言者を、此へ連れ出して呉れと賴むので、王女を戀して居るシリア人は、蠱惑的なサロメの瞳に魅せられて、ヘロド王からの固い命令を守り得られず、サロメが望みの儘に空井戸の錠を開けると、豫言者ヨカナアンをサロメの前へ連れ出した。
 生きながらの墳墓と云ふべき、井戸の中から姿を現はしたヨカナアンは、アッシリアの隊長に身を任せた女は何處に居る、埃及の若人等に身を任せた女は何處に居る、憎むべき淫亂の床から出て、主の道を準備するために來た人の聲を聞き、身の罪を悔ひあらためよ‥‥‥と、サロメの母ヘロヂアスの惡行を罵ってやまない。
 サロメは、其の言葉を恐 おそろし いと思ひながらも、ヨカナアンの漆黑な髪の毛、大理石のやうに光澤 つや ある肌、そして珊瑚のやうに眞紅な唇に情を動かすまゝに、王女の誇りをも捨てゝ放膽な言葉を發し、三度 みたび ヨカナアンに愛を求めたが、其の愛をこばまれた上、退 さが れバビロンの娘、主に選ばれた者に近づくなサロメ!汝 そち の母は罪の酒で地上を溢らせたのである‥‥‥と罵られるので、サロメの愛は復讐の戀と變る。
 と、兄を殺して嫂 あによめ を妃とし、其の娘サロメの美しさに囚はれたヘロド王が王妃ヘロヂアスと一緒に出て、此 こゝ で客人 まらうど たちと酒宴 さかもり をしやうと云ひ、サロメに種々 いろゝ と優しい言葉を投かけるが、サロメは其の言葉に耳を傾けない。 
 が、おしまひにヘロド王は、サロメが舞ひを舞ふなら何でも望みの物を與えやう、例 たと へ國の半 なかば でもわかたうと約束するので、サロメは漸くに納得して婢 はしため 達に支度を手傳はせ、やがて七面紗 セブンベール の舞を舞ひ終ると、其の褒美に豫言者ヨカナアンの首を望み、それだけは‥‥‥と流石のヘロド王も躊躇 ためら って、他の望みと變へるやうにと賴むけれど、サロメは頑として聞入れない。で、ヘロド王もやむを得ず、首斬人ナアマンに呍 いひ 付けてヨカナアンの首を斬らせる。 
 銀の皿に盛られたヨカナアンの首を手にしたサロメは、最後の勝利を誇った上、汝 おまへ の唇には苦味 にがみ がある、其 それ は血の味か戀の味か、戀は苦味を以て居ると云ふ事だから‥‥‥と云ひながら露 あらは な腕に首を取上げて、貪る如き接吻を與えたが、軈 やが    て武士達の楯に壓殺 おしころ される。

  日比谷公園某カフェー

 おてくさん(新しい女) 木村時子
 木佐野  (その夫)  柳田貞一
 伊太見  (舞踊家)  川田和夫
 大工    熊公   石川雍
 女房    おかん  園鶴子
 藝妓    八重吉  竹内マリ子
 半玉    おぼん  花岡鈴子
 女給    お光   富士野登久子
 畠山作左衛門     黑木憲三
 その他 女給、客    多勢

  佐々紅華氏作
 第四 オペレット カフェーの夜 一幕

 日比谷公園の中にある、或るカフェーである。
 夜の事で、華かな灯が輝いて居る。
 話しっぷり、姿なら、天晴れ新しい男の木佐野は、藝妓 げいしゃ 八重吉を連れて食事に來て、テーブルの一つを占領する。
 一方の食卓では、二人が入って來る前から、もう好い陰加減に醉って居た大工の熊公が、チビリゝと飲りながら所詮は酒が云はせる捲舌で、女給を相手にして盛んにメートルを上げて居たが、亭主の身を案じて尋ねて来た女房おかんに、散々油をしぼられてへこまされると、先の気焔は何處へやら、小さくなって女房に引張って行かれる。
 その後では木佐野が、八重吉を相手に気焔萬丈、好い気になって吹いて居ると、先刻 さつき の熊公の事は笑ひごとでなく、當代の新しい女を代表して居るかの如き、木佐野夫人てく子が此のカフェーへ不意に現はれ、木佐野が生意氣にも藝妓八重吉と差向ひ、盃をあげながら気焔を吐いて居るのを見ると、胸に据えかねて赫 かっ となり、先づ一ト言遣り込めたを導火線に、人の見る前をも恥ぢず、此に猛烈する夫婦喧嘩は始まったのである。
 罵る、罵しり返す、矢釜しいと云ったらない。
 が結局は、之れもカフェーの客たる畠山作左衛門が、粹にくだけた取做しで、此新しい男と新しい女とが結婚する迄の、いとも可笑しく熱烈する、恋のいきさつを一同に話すものだから、夫婦喧嘩も笑って納まるのである。

 第五 舞踊 小品 六種

   ハンガリヤン・ダンス
   若きラヂャー
   ベルソース・スラズ
   子守
   夜の精
   支那舞踊

 柔かき線と動きにて、右六種の小品に、感能的なる、また夢幻的なる、また象徴的なる、近代舞踊の面白さを御覽に入れ申し候。



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