意富多多泥古命(おおたたねこ)をもちて神主(かむぬし)として、【御諸山(みもろやま)】に
【意富美和之大神(おほみわのおおかみ)】の前を拝(いつ)き祭りたまひき
又、【伊迦賀色許男命(いかがしこをのみこと)】に仰(おほ)せて、【天(あめ)の八十(やそ)びらか】を作り、【天神地祇(あまつかみくにつかみ)の社を定】め奉(まつ)りたまひき
又、【宇陀墨坂神(うだのすみさかのかみ)】に赤色の楯矛を祭り
又、【大坂神】に墨色の楯矛を祭り
又、坂の御尾(みお)の神、
及、河の瀬の神に、ことごとに遺し忘るること無く幣帛を(みてぐら)奉りたまひき
これに因(よ)りて疫(えやみ)の気、悉(ことごと)にやみて、国家安く平けくなりき
★御諸山
神の降りこもる山
三輪山
★意富美和之大神(おほみわのおおかみ)
大物主神
おほみわは、「大三輪」「大神」の字を用いる
この神を祀る社は奈良県桜井市三輪の大神神社
★伊迦賀色許男命(いかがしこおのみこと)
物部連の祖
★天の八十びらか
祭具
★天神地祇(あまつかみくにつかみ)の社を定め
天社(あまやしろ)・国社(くにやしろ)を定めた
つまり神祇制度を定めた
★宇陀墨坂神(うだのすみさかのかみ)
奈良県宇陀郡椿原町に墨坂神社がある
★大坂神
奈良県北葛城郡香芝町穴虫に、大坂山口神社がある
墨坂、大坂は東西交通の要所
■ただちに意富多多泥古(おおたたねこ)を神主に命じて、神が天降りこもる三輪山に意富美和之大神(おおみわのおおかみ)を斎(いつ)き祀らせた
また伊迦賀色許男命(いかがしこおのみこと)に命じて、神聖な多くの平たい土器を作り、天上の神と地上の神との社制を定めて祀らせた
また宇陀墨坂神(うだのすみさかかみ)に赤色の楯と矛を献上し
また大坂神に黒色の楯と矛を献上し
また坂の上を司る神や、川の瀬の神に至るまで、すべて漏れ落とすことなく幣帛(みてぐら)を献上し祀らせた
これによって疫病の流行はすっかりやんで、国家は平安になった