るるの日記

なんでも書きます

古事記・仁徳天皇・黒日売、皇后をうらやむ歌

2021-02-11 17:14:20 | 日記
ここに黒日売(くろひめ)、其の国の山方の地に大坐(おほま)さしめて、大御食(おほみけ)を献(たてまつ)りき。ここに【大御羹(おほみあつもの)】を煮むとして、其の地の【菘菜(あおな)】を採(つ)める時、天皇、其の嬢子(をとめ)を菘(あおな)を採める処に到り坐して歌ひたまはく

「山県に
蒔ける菘菜も
【吉備人】と
共にし採めば
くもあるか」

とうたひたまひき
天皇上りいでます時、黒日売、御歌を献りていはく

「倭方(やまとへ)に
西風(にし)吹き上げて
【雲離れ】
退(そ)き居(を)りとも
我忘れめや」

とうたひき。又歌ひていはく

「倭方に
往(ゆ)くは誰(た)が夫(つま)
【隠水(こもりづ)の】
【下よ延(は)へつつ】
【往くは誰が夫】」

とうたひき

★大御羹(おほみあつもの)
熱い汁物

★菘菜(あおな)
青い菜

★吉備人
黒日売

★雲離れ
雲が自分のいる所から大和の方へ遠く離れる

★隠水(こもりづ)の
下の枕詞

★下よ延(は)へつつ
※隠れ水がものの下をひそかに流れる。男が女にひそかに思いを寄せて通うこと

★往くは誰(た)が夫(つま)
※男が人目をしのんで女の人のもとに通うのを別の女がうらやむ歌
※黒日売が天皇の帰って行く先の皇后をうらやむ歌

■黒日売は自分の国の山畑の所に天皇を御案内して、お食事をさしあげた。そこで黒日売が熱い汁物を煮ようとして、その畑にある青菜を摘んでいる時、天皇はその乙女が青菜を摘んでいる所にいらっしゃって、お歌いになった

「山畑に蒔いておいた青菜も、吉備の女と一緒に摘むと、実に楽しいことであるよ」

天皇が大和の都にお帰りになる時、黒日売は天皇に歌を差し上げた

「大和の方に向かって西風が吹き、雲は遠くに離れていきますが、その雲のようにあなたが遠のいておりましても、私はあなたのことは決して忘れはいたしません」

「大和の方に通っていくのは、どなたの夫でしょうか。ひそかに思いを大和の女に馳せて通っていくのは、どなたの夫でしょうか」

と歌った


古事記・仁徳天皇・嫉妬深い皇后を騙し吉備の黒日売に会いに行く

2021-02-11 15:13:27 | 日記
天皇、其の黒日売を恋ひたまひ、大后を欺きてのりたまはく「淡道島(あはぢしま)を見まく欲りす」とのりたまひて、いでましし時、淡道島に坐して遥(はろぼろ)に望(みさ)けて歌ひたまはく

「【おしてるや】
難波の崎よ
出で立ちて
我が国見れば淡島
淤能碁呂島(おのごろしま)
あぢまさの島も見ゆ
佐気都島(さきつしま)見ゆ

とうたひたまひき
乃ち其の島より伝ひて吉備国にいでましき

★おしてるや
強く照る
難波の海は日のよく照る所とされた

■なおも天皇はその黒日売を恋しがられ、皇后を騙して「淡路島をみたいと思う」と仰せられて、お出かけになり、そしつ淡路島に着いて、遥か遠くを望まれて歌われた

「おしてるや、難波の岬から出で立って、自分の治める国を眺めると、神話に伝えられた淡島や淤能碁呂島(おのごろしま)、あじまさの島も見える。佐気都島(さきつしま)も見える」

と歌いになった。そして淡路島から海上を島伝いに吉備国にいらっしゃった




古事記・仁徳天皇・いとしい黒日売・激怒する皇后💢😠💢

2021-02-11 14:47:40 | 日記
ここに天皇、吉備の【海部直(あまべのあたひ)】の女(むすめ)
名は【黒日売(くろひめ)】
其の容姿(かたち)【端正(きらきら)し】と聞(きこ)しめして、めしあげて使ひたまひき

然るに其の大后の嫉(ねたみ)を畏(かしこ)みて、本つ国に逃げ下りき。天皇、【高台(たかどの)】に坐して、其の黒日売の船出して海に浮べるをみさけまして歌ひたまはく

「沖方(おきへ)には
小舟連つく
黒ざやの
【まさづ子】
【我妹(わぎも)】
国へ下らす」

とうたひたまひき
故、大后この御歌を聞かして大(いた)く忿(いか)りまして、人を【大浦】に遣はし追ひ下(おろ)して、【歩(かち)より追ひ去(や)り】たまひき

★海部直(あまべのあたひ)
海人の部民の首長
吉備は中国地方の国名で、吉備児島や周辺の島は海人の本拠地

★黒日売(くろひめ)
岡山県総社市郊外の作山古墳群の中に黒姫塚(俗称・こうもり塚)と伝えられる横穴がある

★端正(きらきら)
整って美しい

★高台(たかどの)
高殿
元来、国見のための建物であるが、後に酒宴などにも使われた

★まさづ子
美しい子

★我妹(わぎも)
男がいとしく思う女

★大浦
難波の浦

★歩(かち)より追ひ去(や)り
皇后は意地悪く、黒日売に船を使わせず、歩いて帰らせた

■ところで天皇は、吉備の海部直(あまべのあたい)の娘、名は黒日売(くろひめ)という乙女のその容姿が整って美しいとお聞きになって、宮中に召し上げてお使いになった。しかし黒日売は皇后の嫉妬を恐れて故郷の吉備に逃げ帰って行った

天皇は高殿にいらっしゃって、黒日売が船出して難波の海に船を浮かべているのをはるかに望まれて歌われた

「沖の方には小舟が連なり並んでいる。黒ざやの美しい娘、私のいとしい女が故郷へ下っていかれる」

すると皇后は、天皇の歌をお聞きになって、ひどくお怒りになり、人を難波の大浦に遣わせて、船から黒日売を追いおろさせ、陸路を徒歩で行くようにと追い返された

古事記・仁徳天皇・嫉妬・うなはりねたむ皇后石之日売命

2021-02-11 13:59:56 | 日記
其の大后(おほきさき)・石之日売命(いはのひめのみこと)、甚多(いとまね)く【嫉妬(うはなりねたみ)】したまひき

故、天皇の使はせる妾(みめ)は宮の中(うち)に得臨(えのぞ)まず
【言立てば】、【足もあがか】に嫉(ねた)みたまひき

★嫉妬(うはなりねたみ)
正妻が後妻や妾をねたむこと
うはなり→後からめとった妻

★言立てば
平素と違う特別なことを言ったりする

★足もあがかに
足ずりをして苛立っているさま

■仁徳天皇の皇后石之日売命(いわのひめのみこと)はたびたびひどく嫉妬なされた

そのために天皇がお使いになられる侍女たちは、天皇のおられる宮殿の中に入って行くこともできない

侍女たちが何か平素と異なったそぶりでも見せると、皇后は足ずりをして嫉妬なされた



古事記・仁徳天皇・聖帝の御世・仁政は天皇政治の大本・国家統治の理想

2021-02-11 13:37:16 | 日記
ここに天皇、【高山に登りて四方の国を見たまひて】、のりたまはく
「国中(くぬち)に【けぶり】発(た)たず。国皆貧窮(くにみなまづ)し。故、今より三年(みとせ)に至(な)るまで、ことごとに人民(おほみたから)の【課(みつき)・役(えたち)】を除(や)めよ」
とのりたまひき

これをもちて大殿(おほとの)破(や)れ壊(こぼ)れ、雨漏れどもかつて修理(つくろ)ひたまはず、【ひ】をもちて其の漏る雨を受けて、漏らざる処にうつり避けたまひき

後に国中を見たまへば、国にけぶり満ちたり。故、人民富めりとおもほして、今はと課・役を科(おほ)せたまひき

ここをもちて百姓(おほみたから)栄えて、役使(えたち)に苦しまざりき。故、其の御世を称へて
【聖帝(ひじりみかど)】の世とまをす

★高山に登りて四方の国を見たまひて
※天皇の国見
※国見→天子や国の首長が高所から望見て、民情の視察や農耕儀礼のための国ほめの視察をする。のちには風景を楽しむ遊楽にもなった

★けぶり
かまどの煙、炊煙

★課(みつき)・役(えだち)
※課→郷土の産物を納める
※役→夫役(労働)

★ひ
雨水を受ける器

★聖帝(ひじりのみかど)
※聖→日知り→農耕生活に必要な自然暦を知る指導者が原義
儒教の仁政思想によって高徳の天子聖帝をさすようになった


■仁徳天皇は高い山に登り四方の国をごらんになって「国の中に炊煙が立たない。国の人民はみな貧しいのだ。たがあ今から三年の間、人民の租税と夫役をすべて免除せよ」と仰せられた

この免税の結果、宮殿は破損し、あちこち雨漏りがするけれどまったく修理なさらず、器で漏る水を受けて、雨の漏らない所に移って雨漏りをさけた

そうした後に国の中をごらんになったところ、国中に炊煙が一面に立っていた。そこで天皇は人民が豊かになったと思い、今は課税してもよかろうと租税と夫役を課せられた

こうして人民は繁栄して、夫役に苦しむことはなかった。それゆえ、その御世をほめ称えて聖帝の御世と申すのである