るるの日記

なんでも書きます

レヴィ=ストロースとヤコブソンの思想交換による知的火花

2021-06-29 09:20:16 | 日記
レヴィ=ストロースがニューヨークで出会った最重要人物が、ロシア人言語学者ローマン・ヤコブソン

二人は出会ってすぐ意気投合し、思想の交換が始まり、ニューヨークの下町のバーで、ものすごい知的火花が飛び交った。そしてレヴィ=ストロースは、ヤコブソンの秘技伝授によって、構造言語学の革命的方法をたちまち吸収していった

ヤコブソンは言語学に情報理論を取り入れていた。あらゆるコミュニケーションは発信者と受信者がいて、共通の符号を使ってメッセージを伝達する。これがコミュニケーションの基本である

コミュニケーションは言語に限らず、もっと広大な領域を包みこんでいる
植物、動物、宇宙の進化・変容もコミュニケーション。物理学の量子の過程までコミュニケーション
人間の言語はそうしたコミュニケーション全体の中に出現した一つの位相

人間の精神とタンポポの花との連続性の構造

2021-06-29 08:58:48 | 日記
召集されたレヴィ=ストロースは、塹壕に入ってボーッと景色を見ていた。目の前にタンポポの花を見つける。美しい秩序をもったその花を見ているうちに、突然【構造】の考えを思いついた

【自然界の秩序と、人間の思考がつくりあげる秩序には連続性がある】

人間の思考は自然がつくりあげたもの。宇宙の運動から地球が生まれ、地球に生命が発生し、生命の中から脳がつくられ、そこに精神が出現する
この精神には秩序が備わっている。その秩序は、タンポポの花に実現されている自然界のつくりあげた秩序と連続性をもっている
しかし、そこには両者を隔てている非連続性があることも事実

その連続性と非連続性を同時にとらえることはできないだろうか
それが最初の構造主義の着想だった

つまり、自然界の中から生み出された生命。その延長上に生まれる人間の精神。精神の構造と自然界の構造を、一つの全体としてとらえることで、精神の秘密にせまるという思想だ

絵と神話と音楽と植物学と地質学=構造学

2021-06-29 08:38:53 | 日記
■レヴィ=ストロースは
1908年、ユダヤ人の両親が滞在していたベルギー・ブルュッセル生まれ。生後2ヶ月でパリに戻る

■美的感覚の研ぎ澄まされた子供で、父親がコレクションしていた日本の浮世絵に強烈な関心を抱き、とりこになってしまうほどに。青春時代には音楽にも熱中しワーグナーに入れこんで、そのゆかりの都市であるバイロイトにまで行っている

■ワーグナーはゲルマン神話をベースとした楽劇を作っているから、神話の構造と音楽の構造の深い関係に早くから気づいていた

植物学や地質学にも興味を持った。理由はわかる
植物学は、色や形の中に表れている小さな差異を認識して、分類同定していく学問

地質学は目に見えない構造に対する関心につながっている。遠く離れた場所に同じ地層の断面が再び表れてくる。同じ構造が違う場所に出現し、それを発見する喜び
彼はすでに少年から構造主義者でした

■やがてレヴィ=ストロースは、哲学へと向かうが仲間の姿に幻滅。自分が何に向いているかわからなくなる。なげやりになり、簡単だからという理由でパリ大学へ。教授資格試験を経て地方で哲学教師として暮らしていた

■大学時代の教授から、ブラジルのサンパウロ大学に社会学の教授として赴いてみないかとの誘いに「先住民の村に出かけてインディオにも会えよ」という甘い言葉に惹かれて承諾する
【未開社会】という本を読んで以来、レヴィ=ストロースは、啓示を受けたように民俗学に魅了されていたこともあった

政治思想は西欧神話

2021-06-29 07:54:11 | 日記
■フランスの哲学者・文学者サルトルは、民俗学・人類学を否定した

「未開社会には、世界を歴史的に動かしていくような思考方法はない」

「未開社会は同じようなことを習俗として繰り返しているに過ぎない社会であり、それが何万年続こうが、そこに歴史はない」

「前に進んでいく運動が歴史をつくるのであり、同じ習俗の繰り返しに過ぎない未開社会は、発育不全で奇形」であるとまで書いて、民俗学・人類学そのものを認めなかった

■【野生の思考】著者
レヴィ=ストロースは19世紀から20世紀半ばに至るまでの政治思想が、【歴史をめぐる合理的思想】であるように見えながら、実際は自身の内部に閉じこもった【西欧の神話】であることを明らかにしようとした
つまり、西欧世界が自身の中に自閉して、その自閉的意識を表現しているのが歴史・政治思想だと考えた

文化は西欧だけのものではなく【未開社会】にも、人間は文化を形成してきた。そうした文化はサルトルの言う同じ習俗の繰り返しなどでは決してなく、知性によって動いている。ただ彼らは西欧のように歴史に過度な重みを与えて、進歩や発展の概念に突き進むことはなかった。彼らは自らが進んで歴史の外に出ようとした。それは歴史よりも構造を重視したからだ

構造とは何だろうか?



右も左も根底では同じ歴史に動かされている

2021-06-29 07:21:14 | 日記
現代の私たち人間から見れば、未開社会では、野蛮で非合理な考えをしているのだろうか?
実はそうではないらしい

【野生の思考】は、南アメリカの先住民文化を研究する民族学者によって書かれた本。未開人の思考について書かれた本でありながら、今私たちが生きている時代につかながり、未来にも大きな力を持つ本

私たちの中にはいまだに、19世紀以来の古いかさぶたのような、古い思考法が覆っている。それは特に政治の領域にみられ、現代の世界に危機をもたらす原因となっている

野生の思考は、【歴史と進歩】の思想に反旗を翻し、【歴史と構造】という考え方を打ち出した

歴史の思考方法は、現代も大きな影響力を持っている。右の考えを持つ人も、左の考えを持つ人も、根底では同じ歴史の思考によって動かされていて、右も左も同じなのだが、彼らはそのことに気づいていない