禅語 その4
*夢 夢ははかないものか? (金剛経)
仏教では「いろは歌」の「色は匂えど散りぬるを」(美しく色
香漂う花も、やがて散ってしまう」に表されるように、世の
中全ての現象は、実体のない仮の姿で、夢幻のように何
ひとつとして同じ状態で続くものはないと言う諸行無常の
思想があります。
その実体のない仮の姿、仮の世を、私たちは真実だと思い、
永遠に続くものと思って執着していますが、それははかない
夢幻、泡影のようなものだと論するのが、次の言葉です。
一切有為法 如夢幻泡影
(いっさいのういのほう) (むげんほうようのごとし)
如露亦如電 応作如是観
(つゆのごとしまたかみなりのごとし) (またかくのごとしかんをなすべし)
この世の一切の事象は、夢幻のようで、泡のようで、影のよう
だ。露のようで雷のようでもある。迷いの多い生活から目覚め
るためにも、この世のすべてを夢と知れ。
禅語としては、沢庵和尚(たくわんおしょう)の辞世の「夢」が有名で
す。沢庵は「夢」の字を大書し、横に「是(ぜ)もまた夢、弥勒(みろ
く)もまた夢、観音もまた夢、仏云く(いわく)、正に是(かく)のごとき
観を作(な)すべし」と書いた後、亡くなったといわれます。
つまり沢庵は、一切の事柄は夢であり、すべてに執着から脱却
した状態にあると言ったのです。
沢庵はこの世の一切のものが仮の姿であることを悟った境地で
「夢」と書きました。
悟りの世界に行ったとき、人はもう儚い夢を見ることもなく、現象
の仮の姿に惑わされたり、酔いしれたりすることもないのでしょう。
そんな安らかな心境を、「夢」の一字に表したのかもしれません。
と記されています。
私は、読み進むうちに沢庵和尚のような心境に近づくにはどうすれ
ばなれるか、等と愚かなことを考えたりしましたが、悟りの世界は
死後の世界なのですね。
私たちは日頃から、この仮の状態の中で執着し迷い悩んでいるの
ですね。仮の世界なのにものごとに執着するから問題が起こるの
でしょう。すべての事柄は諸行無常であることを再認識すべきでし
ょう。