斎藤秀俊の眼

科学技術分野と水難救助、あるいは社会全般に関する様々な事象を一個人の眼で吟味していきます。

炭素の新相

2015年12月04日 03時09分36秒 | 斎藤秀俊の着眼
発行されたばかりのJournal of Applied Materials (JAP)の118, 215303 (2015); doi: 10.1063/1.4936595に掲載された論文です。
NC State のJagdish Narayan と Anagh Bhaumikによる、Novel phase of carbon, ferromagnetism, and conversion into diamond
(炭素の新相、強磁性、ダイヤモンドへの変態)です。PDFはここからとれます。

アブストラクトを和訳して、おおよそまとめました。
「炭素の新相(Q-カーボンとする)を発見した。水素を必要とせずに空気中で温度と圧力をパラメータとして炭素からダイヤモンドに直接変態させる。強力なナノ秒パルスレーザーを使って超過冷却状態を作ることにより、Q-カーボンは形成される。このプロセスで、ナノダイヤモンド、マイクロダイヤモンド、極微針が形成され、さらにQ-カーボンも得られた。Q-カーボンは、アモルファス炭素より高い密度をもち、sp3(75%–85%)とsp2からなる。Q-カーボンは、キュリー温度およそ500Kで強いバルク強磁性を示す。」

さて、ここから論文を読んだ感想。ラマンの結果も出されているので、見る人がみれば構造的には四面体配位アモルファス炭素(tetrahedral amorphous carbon) すなわち、DLCのType I(密度は3 g/cm3前後)と何が違うのか?といいたいところだけれども、DLCは薄膜、Q-カーボンはバルクと分けたいのだろうか?また、一部の報道で出ているように、ダイヤモンドを凌駕するだろうという、硬さに関する証明はされていないし、物性の第一歩中の第一歩である、密度測定がされていない。

世界的にDLCの分類作業が行われていて、アモルファスとはいってもQとかいうような謎の物質の分類をしているわけではないので、勝手に専門用語を作られては困る。それに、アモルファス炭素もフレーク状態にして利用しようという動きも出ていて、すでにバルクとしてとらえられている。






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