ただ一人、「おい」と呼べる君へ~城山三郎 亡き妻への遺稿~
NHK BS プレミアムカフェ2008年放送された番組。
眠い目をこすりながら見てしまった。魅てしまった。
城山三郎という作家が大好きだ。羨ましいね、ご夫妻の生き様は。
60歳で専任を退職した時、何かの本で「60歳を過ぎたら読む作家」として城山三郎さんが挙げられていた。
私がそれ以前に城山さんの本を読んだのは、『粗にして野だが卑ではない―石田禮助の生涯』しかない。
夢中になって読んだ。
ドキュメンタリー番組で「城山三郎特集」を見た。二つの場面をしっかり覚えている。一つは終戦の時の言葉、「空の高さ」。意味が深い言葉だ。もう一つは、個人情報保護法に反対し強く抗議している姿。終戦の時17歳だった。戦争体験がすべて。
「そうか、もう君はいないのか」を涙して読んだのを覚えている。
http://www.shinchosha.co.jp/book/113334/
このような気骨・気概のある人が少なくなった。生きていれば88歳ぐらいだろう。このような時代の人は体験を語らない。辛いことを訳のわからないやつに言ってもどうにもなるものではないと思っているのだろう。俺だって立場変われば絶対口をきかない。
とくに「旗」という誌が好きだ。
「旗」
旗振るな
旗振らすな
旗伏せよ
旗たため
社旗も 校旗も
国々の旗も
国策なる旗も
運動という名の旗も
ひとみなひとり
ひとりには
ひとつの命
走る雲
冴える月
こぼれる星
奏でる虫
みなひとり
ひとつの輝き
花の白さ
杉の青さ
肚の黒さ
愛の軽さ
みなひとり
ひとつの光
狂い
狂え
狂わん
狂わず
みなひとり
ひとつの世界
さまざまに
果てなき世界
山ねぼけ
湖しらけ
森かげり
人は老いゆ
生きるには
旗要らず
旗振るな
旗振らすな
旗伏せよ
旗たため
限りある命のために
(『支店長の曲がり角』 城山三郎氏の詩集です)