■ハサミ男■ ちょっとお伺いしますけど、これのどのへんが「映像化不可能」と言われたんでやしょ? 原作読んでないんですいませんが、不可能と言いふらすなら言いふらすで、真相がすべて明らかになった時点で「ああなるほど、よう映像表現しよったなあ……」って感心させてくれる要素が必要かと。それが皆無でしょ。二重人格または背後霊だなってことは、初っ端の一ショットですでに明々白々なうえ、やがてほぼ明言もされる展開になってるのだし、冒頭近くで通行人が女のほうにぶつかるシーンがあったんで「お、これはどっちが本体なのかわからなくする趣向でんな?」と予期させたわりには早々にそれも立ち消え。なんかつまんない平板な二重人格もののまま推移、観客を騙す意図すら感じられず大いに期待外れ。警察関係者に犯人が居るって安易なネタもいい加減やめてほしかったし、なんつうか、前半の期待が膨らみすぎただけに後半のダラダラ感が耐え難かったですよ全く。ほんと、どこが映像化不可能だったのかなあ、誰か教えてくれよ。あと致命的なのはなぜに父親人格がサイコパスにならにゃならんかったかってことと、「美人で清潔で頭がよさそう」な少女ばかり狙われるってぇならほんとにそんな外見した少女をフィーチャーしてほしかったってことと、脇役の演技がどいつも悲惨すぎってことと(被害少女の弟の大根加減なんぞ見てらんねっつの)、間抜けな若い刑事が容疑者の女に鼻下伸ばすの定型を律儀に反復せんでいいですからってことと、まあきりがないからあとは省略。唯一の見どころは、女の嘔吐場面が何度も結構ちゃんと映ってて嬉しかったってことだけかな。JADE、不二企画、アロマ、ハウスギルド、大塚フロッピー、大洋図書、ミリオンクエスト等々各種レーベルの嘔吐専門AVですら案外、喉に指突っ込んで無理やり吐かせてる比率が高いんで(マニアの方のために推薦しますとあれ系の中ではP.SLUMの『ゲロショット』が本物盗撮なのでアングルチト悪くても見応えありかと)、本作のような自然嘔吐正面撮影は、本格フェチ界の水準から見ても貴重映像なんです。
■姑獲鳥の夏■ ありぇ? なんだ妖怪出てこないの。ジャンル勘違いしてたわ。ま、それはそれとして。期待裏切られたからってんじゃなくて、これ、いくら何でも出来悪すぎませんか。憑きもの筋とか多重人格とか呪いとか何でもかんでも次々に言い立てれば厚み増すってもんじゃあないでしょ。巫女の家系だの安倍晴明まで持ち出してきますか。恋文と名前と双子の絡んだありがちな取り違え、想像妊娠、そんなにまで揃えないと不安なのかなあ。妖怪は名のみ登場ってことでそのかわり謎解き度がハイレベルかと期待したらこれがゼロときた。実はこうでしたああでしたの因縁話ばっか延々続けやがって。じゃあってんで「ムード」を楽しみましょうかと、芸術ポイントに期待したんだが、なにョあれ、京極堂とやらのしたり顔のお説教がウザイのなんの。もっと自然にやってよ。スポットライト当てたり舞台のノリの演出もほんっと煩かったね~。マ、因縁話でなんとか乗り切ろうって方針だけはよぅくわかったけど、赤ん坊を殺した殺した言うばっかで殺害現場の映像ひとつも見せてくれゃしねーし、いったい何を観てろと。どこもないじゃん。おじちゃんおばちゃんも叫んだり怒鳴ったりが空回りもいいとこ(いしだあゆみって老けたね~、吠えるの下手だし)、アクションねーんじゃしょーもねーし。ま、原作はまさかもっと内容あるんだろーけど、こんなんいくつ量産されても世の財産増えんわな。ふへ~2時間長かったなぁぁ~~っと。