[東京 7日 ロイター] - 9日に閣議決定する予定の「骨太方針」の素案から2019年10月に消費税率10%へ引き上げるとの文言が消えた。また、20年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化するとの目標に加え、債務残高のGDP(国内総生産)比を安定的に引き下げることも併記され、財政健全化の動きが大幅に後退する懸念が、財政・金融政策の専門家から浮上している。
<消費税上げ、首相判断を忖度か>
「直近の経済財政諮問会議では、2019年10月に予定されている10%への消費税率引き上げは、議論さえなかった」──。ある政府関係者はこう打ち明ける。
その結果、過去の骨太方針では引き上げ時期を明示していた消費税率に関し、今回の骨太方針では、「引き上げ」の文言も消えた。
ある政府関係者は、前回の引き上げ延期の例が多くの政府関係者の頭をよぎり、安倍首相が再び延期する可能性を「忖度」(そんたく)し、リスクを避けるため、言及をやめたのだろうとの見方を示す。
だが、今回の骨太方針では、20年度のプライマリーバランス(PB)黒字化の目標は維持された。目標達成には「10%への消費増税が前提」というのが政府内のコンセンサスだ。
増税延期とPB目標の達成は両立できない。しかし「財政目標をPB黒字化から、債務残高のGDP(国内総生産)比にシフトさせるなら、消費増税という歳入増がなくても、金利が急上昇せず、GDPが成長すれば、目標の達成は可能になる」と、野村総合研究所・シニアエコノミストの桑原真樹氏は分析する。
<格上げされた債務残高GDP比>
今回の骨太方針では、債務残高GDP比がPB黒字化目標と併記され、事実上、格上げされた。その点について「いずれPB目標から債務残高GDP比へ軸足を移す布石」(野村総研の桑原氏)との見方がある。
また、竹中治堅・政策研究大学院大学教授は、PB黒字化より債務残高目標を重視する勢力が、政権内で発言力を強めていると分析する。
実際、ある政府関係者は「日銀の(超低金利政策の)お陰で、利払い費は微増にとどまっている。経済が拡大すれば金利が上昇した後も、債務残高GDP比は数年程度、低下していく。その意味で財政には余裕がある」と主張する。
別の政府関係者は「20年度に瞬間的に黒字化さえ達成すればよいという考え方よりも、財政再建が実現できるような経済環境を作り出すという意味では、残高目標も前面に打ち出すことが適切という安倍首相の考え方が反映されている」と解説する。
成長率を高めGDPを拡大することで、債務残高GDP比も低下し、財政再建につながるとの考え方だ。
だが、SMBC日興証券・チーフマーケットエコノミストの丸山義正氏は「2つの目標の位置付けを現在の並列から、いずれかを達成すればよいという文言に修正すれば、明確な財政規律の後退になる」と指摘する。
<微妙に絡む憲法改正と消費税>
また、消費増税の延期判断は、安倍首相の政権運営のスケジュールとも密接に絡み合うとの指摘も出ている。
安倍首相は20年に憲法改正を実施したいと表明しており、逆算すると19年中に憲法改正の是非を問う国民投票を実施する必要がある。与党内には、国民投票と衆院選を同時に実施する選択肢も水面下で検討されているという報道も一部で出ている。
SMBC日興証券の丸山氏は「衆院選と憲法改正の国民投票を実施するタイミングで、消費税率引き上げの再延期に動く可能性を否定できず、その際に障害となりかねない財政健全化目標を修正する布石を17年時点で打とうとしているとの解釈が可能」と述べている。
だが、再延期は安倍政権の掲げてきた重要公約の修正を意味し、相応の理由付けが必要だとの声が、多くのエコノミストから挙がっている。前回の延期時に安倍首相は景気低迷を理由としたが、その際、首相自ら次の増税に向けて景気条項を削除すると述べ、財政再建に取り組む姿勢を明言した。
教育無償化や安全保障強化の必要性など、歳出拡大につながる重要政策が目白押しとなる中、安倍首相が財政再建とどのようにバランスをとっていくのか、日本の財政運営は大きな節目を迎えようとしている。
(中川泉 編集:田巻一彦)
以上、ロイター焦点
もう、日本は財政健全化は達成できている。1000兆円と言われている政府の借金は実質100兆円になっている。
日銀が所有している債権が400億円になっており、あとは、資産を持っており、財政は健全な状態になっている。
従って、消費税を上げる必要は全くないのである。(上念司氏コメントより)
こういう説明を財務省から握られているマスコミは報道しない。