帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの枕草子〔四十八〕うしは・〔四十九〕ねこは

2011-04-20 00:10:32 | 古典

 



                          帯とけの枕草子〔四十八〕うしは・〔四十九〕ねこは

 

 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。



 清少納言 枕草子〔四十八〕うしは

 
 うしは、ひたいは、いとちひさくしろみたるが、はらのしたあし尾のすぢなどは、やがてしろき(牛は、額はとっても小さく白んでいるのが、腹の下、足、尾の毛筋など、そのまま白くなっているの・趣がある……憂しは、突き出た部分はとっても小さくて、白んでいる腹の下悪し、おの性分は、すぐ白ける)。


 言の戯れと言の心

「うし…牛…憂し…うっとしい…つらい」「ひたい…額…突き出た部分…おでこ…おとこ」「はらのしたあし尾のすぢなど…腹の下、足、尾の毛筋など…腹の下悪しおとこのすじ」「すじ…筋…素性…性分…性質」「やがて…そのまんま…すぐに」「白…おとこの色…ことの果て…白い粉飾」。



 清少納言 枕草子〔四十九〕ねこは


 ねこは、うへのかぎりくろくて、はらいとしろき(猫は上だけが黒くて腹は真っ白いのが・かわいい……ね子は、うわべだけ強そうな色で、はらはとっても白々しい)。


 言の戯れと言の心

「ねこ…猫…根子…寝子…伏しているおとこ」「黒…強い色」「腹…心のうち…本心…本性」「しろき…しらけた…果てた…興ざめな」。

 


 枕草子は、子どもの作文ではない。おとなの女のための文芸として「をかし」と読むには、われわれと「聞き耳」を同じくすればいい。

今では、「うし」や「ねこ」という言葉から、「憂し」や「寝子」などという意味は、変換候補から排除される。それは近代人の合理的な理性の所為だから、過ちと考える人はいないので、残念ながら、改まることは無いでしょう。


              

伝授 清原のおうな

聞書  かき人しらず  (2015・8月、改定しました)


 枕草子の原文は、新 日本古典文学大系 枕草子 (岩波書店)による